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大剣の魔導士  作者: えな
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1話 捕らわれた王子

 俺は幼い頃から雷神の大剣士ルドヴィックよりも、

 時の魔導士アルフォスに憧れるクチだった。


 そのことを両親に伝えると、

 両親は腰を抜かしてふた晩寝込んだ。


 さすがに大袈裟過ぎやしないかって?


 そんな事は無い。何せ俺は、雷帝国第二王子で

 雷神の大剣士ルドヴィックの子孫だ。

 次期国王となる兄の下、雷神の大剣を継承する義務がある。


 その義務を放棄して魔導士になる!と豪語した訳でもないのに、

 俺は半月ほど独房に入れられ、その後二年、監禁された。


 初等部の頃から剣術の成績がかなり良かったからか、両親は俺に大層期待していたらしい。


 14歳になる頃、魔導学を勉強したいと告白すると

 怒り狂った父に、独房に押し込まれたのだった。


 監禁されていた時も、ひたすら剣を振らされ

 魔法のまの字も触れさせては貰えなかった。


 そんな生活をしていたのが二年前の事。


 俺は二年前、監視員7名をぶっ倒し、監禁部屋もとい王宮からおん出てやった。


 だか、王子が家出したとなっては大事だ。

 初めのうちは穏便に進められていた王子捕獲の計画も、4ヶ月を過ぎると過激的になりだし

 近頃では賞金もかけられ、賞金首となってしまった。


 俺は遅い来る金に目が眩んだ人々と、度々応戦しては逃げ延びてきた。


 国を挙げての王子捕獲計画に敗北したのは、

 今日が初めてだった。


 襲いくる隊士を殺す訳にも行かず、

 その数数千ともなれば致し方あるまい。


 二年間の追撃に終結のピリオドが打たれた瞬間

 軍隊から壮絶な歓声が上がったのは言うまでも無かった。


 その歓声の渦の中心で、俺は二年間の楽しくも大変だった度の余韻を、ため息と共に吐き出した。



「遂に捕まえたよ、レオ。散々僕の掌をすり抜けて…

 手の焼ける弟だよ。本当にね。」


 ふふふっと笑いながら、

 俺の鼻先をちょんちょんとつつくヴィルドを

 げんなりしながら見る。


「……兄さん…背後から抱きついてくるのは反則じゃないか…?」


 まさか王太子自らが何も持たずに応戦の真っ只中に突進してくるとは夢にも思わず

 殴る訳にも投げる訳にも行かないまま、あたふたしているうちに捕まってしまった。


挿絵(By みてみん)


 人目が無ければ投げてやったものを。と、悔しげに唇を噛んだ。


 第一王子に怪我をさせたとなっては、身内とあれど反逆罪に問われかねない。


 おそらく俺がそんなことをしないと踏んで、ヴィルドが企んだのだろう。


 全く食えないやつだ。

 にこにこと笑いながら俺の傍にずっと引っ付いて回っている兄にチッと舌打ちする。


 策士な兄を心底恨めしく思うと同時に、

 今の今まで捕まえずにいてくれたことに少しばかり感謝する。


「今回は何ヶ月独房行きなんだか。」


 兄と同じ馬車に詰められ、不貞腐れた顔でつぶやくと、ヴィルドはくすりと笑った。


「大丈夫。少なくとも

 帰って直ぐに送られることは無いよ。」


「すぐには……ね…。」


 思わず苦笑いしながら耳を触った。


「……逃げてぇな……」


 ぼそりと呟いた声はヴィルドにもしっかり聞こえたらしく、にこりと笑いながら右手首に着いた腕輪を掲げて見せた。


「…わ、…分かってるよ……」


 一見オシャレに見えるこの腕輪は、高魔術が練り込まれた拘束具だ。


 別名「主従の腕輪」と呼ばれていて、ヴィルドがはめている青い石が着いた物が主で、俺の左腕にはめている赤い石の腕輪が従。

 一定距離離れると従の方に電流が流れるしくみだ。

 他にも、主の方が念じるだけで従を金縛り状態にさせたりなど、高機能満載でコンパクトな優れものだ。


 こんなもの書物でしか見た事も無い伝説級アイテムだと言うのに、どこで見つけてきたのやら……


 世界に2つと無い代物にウンザリする。


 今年は死んでも捕まらないようにしていたのに、

 まさかこんな形で捕まってしまうとは…

 流石に落ち込まずにはいられ無い。


 おそらく明日、執り行われるであろう儀式の事を考えると、身体が鉛のように重く感じた。


 どうにかしてこの腕輪を外せないものかと奮闘したが、ピクリとも緩まない堅固な腕輪にため息が零れた。


(ここまでか……)


 通り過ぎる景色を眺めながら、俺は

 城への帰路を鬱屈な気分で馬車に揺らされた。


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