猛獣の如く
「第1陣左側を包囲!!」
「了解!!」
ガシャガシャと鎧のぶつかり合う音が広い草原にこだます。
標的を完全に包囲したのを確認すると、指揮官は「右翼突撃!」と司令を出した。
ガシャガシャと鎧を鳴らし、右翼兵が突撃を始める。
すると突如突風が巻き起こり、一斉に兵士が宙を舞った。
「右翼兵。彼方後方へ飛ばされた模様です!!
隊長!!どう致しますか!?」
焦ったように駆け寄ってきた部下を「見たらわかる!」と怒鳴りつけクソっと地面を蹴った。
焦る気持ちを押しとどめ、キッと視線を戻す。
「こうなったら数で勝負だ!!全軍突撃ィ!!!!
死ぬ気で捕獲しろぉおおお!!!!」
オオオオオッという勇ましい雄叫びと共に
数千にも及ぶ軍隊が、一点に向かって走り出す。
ハァハァと肩で息をしながら、勝利を確信したように笑った。
「これだけの数だ。流石に観念するだろう…」
腕を組み勝利の瞬間を目に焼き付けてやろうと軍隊に目を向けると
数百人ほどの騎士達が、はるか後方にまで一気に吹き飛んだ。
「なっ…っっ…」
あんぐりと口を開け、今しがた起こった現実に声も出ないでパクパクする。
そうこうしている間も、ぐわぁ!ぎゃあっと部下達の悲惨な声が途切れることなく不規則的に響き続けている。
段々と晴れてくる視界に足が震え出す。
「三千人の…軍隊だぞ……」
ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返す標的が
チラチラと見え始めると、青白くなってその場にぺたりと膝を折った。
「ば……化け物だ……」
止まらない汗を拭いながら、次々と吹き飛んで行く部下達を呆然と眺めていると
背後からスっと人が乱入して来る。
その姿を認めると、ぎょっと目を剥いた。
「おっ王太子殿下!!?」
「私が行こう。」
ずんずんと標的に突き進む王太子に
おやめ下さいと叫びながら手を伸ばす。
「王太子殿下にもしもの事があったら
私共の首が飛んでしまいます!!!」
必死になって訴えるが、全く泊まる様子がない。
「大丈夫だから。」
そう言って駆け出した王太子の背中を、
騎士団第一部隊隊長イゼルは俺の人生終わった……
と涙に濡れた顔で見送った。
作品をご覧頂きありがとうございます!!
まだまだ未熟者ですが頑張らせて頂いておりまして……
評価等頂けると泣いて喜びます(*^^*)
次回も読んでいただけると嬉しいです!