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雨のち晴れ ときどき余命宣告

作者: 鈴凜

 日課として毎朝ラジオを聴く。それは病室のベッドで寝ていても変わらない。

 イヤホンからお天気アナの声が聞こえる。

「今日の天気は雨のち晴れでしょう」

 ―――あなたの余命はあと半年です―――

 不意に昨日きいた余命宣告が頭をよぎった。

 ああもうすぐ死ぬのか。

 未練はない。妻には先に逝かれた。親族も皆、元気にやっている。

 娘は泣いていたが、私は不思議と涙がでなかった。

 死はもっと怖いものだと思ったが、目の前に迫るとそうでもないらしい。いや、ただ視界に入れないように目をそらしているだけかもしれないが。

 逝くものよりも残されるものの方が辛い。

 あと半年、いや自由に動けるのは三ヶ月くらいだろうか。


 Twitterをはじめてみた。何気ない一言を発信するのが流行っているらしい。どうせやるなら私という人間が存在していたことを残しておきたい。

『ツイッターはじめました。今日はいい天気ですね』

 私が余命わずかと言うことは隠しておこう。

『桜が散り始めました。儚き、儚き』

『病院に来ました。お見舞いの品は桑。花言葉は、ともに死のうらしい。いい嫁さんもったなー』

 本当に桑がおいてあった。多分逝ったばあさんからのものだろう。

『トイレに入れ歯落としました。今はツイッターが私の口です』

 などなど。しょうもないことから、自分の思いまでを赤裸々と綴る。


 もう体が動かなくなってきた。

 そろそろ潮時か。最後になにツイートしようか。少し考えて打ち込んだ。

『雨のち晴れ』

 人生の最後をツイッターに捧げてばかばかしい、と言われるかもしれない。でも後悔はしていない。

 一体誰が人生の善し悪しを決めるのだろう。

 それは自分自身だろうと思う。

 もし死ぬ直前、走馬灯が走ったら、まだ人生に未練があるのだろう。

 私は決して幸福とはいえないが、最後に『晴れ』を見ることができた。


余命宣告されたらなにするかなー

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