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誰が見ても小久保を蔑んでいるとわかる態度と口調で言った。
「ははん、みんないなくなったてか」
「うん。何人かいたはずなんだけど、みんないなくなってしまって……」
俺は気付いた。
小久保はこの世になんだかの未練があって、ここに居残っているわけではないことに。
こいつはただ、自分が死んでいることにまるで気がついていないだけなのだ。
「ふーん」
千石も気付いたのだろう。
小久保が死んで二ヶ月経っても、キャンプ場にいる理由に。
声があからさまに、もう小久保には興味がなくなったと言っている。
「でも、たまに来る人もいるけど」と小久保。
「誰だ?」
「知らない人が多いけど。でも磯野君と小野田君が来たよ」
やはり磯野と小野田は小久保を見たのだ。
千石が言った。
先ほどよりは少しばかり関心が戻ったような口調で。