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23 大改装と午睡のひととき

 ラヴィーが来てから少し経ったが、星の時代はほとんど進んでいなかった。

 巨鎧種騒動の影響を調べるためだ。

 そのかわり、新たな同居人が増えたことで神の部屋の中ではいろいろと変わったことがある。


「ラヴィーちゃーん、おやつですよ」

「……おいしい……ルナおねえちゃん……好き」

「ラヴィーちゃんはかわいいですねぇ~」


 最近は私もルナも、ラーヴィーではなく親しみを込めてラヴィーとよんでいる。

 あれからルナは、現在の植生で作れるお菓子を研究し始めた。

 何のためかって? 新しくできた妹のラヴィーのためである。

 正確には妹ではないし、食事の必要がない私達にとってはお菓子は嗜好品でしかないのだがとても熱心に研究している。

 あまりに研究に熱中しているので心配になったが、星の管理も同時に行ってるいるので大丈夫とのことだ。

 最初の頃は正確無比な機械のようだったルナも、最近はラヴィーのおかげか、感情豊かになってきたし良い変化ではないだろうか。


 他に大きく変わったのは『神の部屋』と呼んでいるこの白い部屋そのものだろうか。

 三人で過ごすには手狭になり大規模な改装を行った。


 星の発展を見守ってる間にも少しずつ神格は上がっていて、それに応じて部屋も大きくすることも出来た。

 しかし二人では充分な大きさだったこともあり最初のままだったのだ。

 ラヴィーが来たことで能力の説明や確認の必要性を感じ、それらも兼ねて部屋の大規模改装を行うことにしたのだ。

 

 まず部屋の大きさは直径五〇メートルに天井の高さは五メートルの円柱状、今までと同じ場所に星の覗き窓を設置してある。

 直径五〇メートルをそのままひとつの部屋にするのは流石に大きすぎたので、中央にスペースを作り、外周に沿ってバームクーヘンのように部屋を仕切っていった。

 今まで覗き窓は床から天井までだったが、今回のは横八メートル高さ四・五メートルのワイドビジョンモニターだ。

 上下の空いたスペースはいろいろデコっといたので神殿ぽさが増したのではないだろうか。

 

 そして今回の目玉は『庭』があることだ。

 私達の部屋は直径五〇〇メートルほどの巨大な浮島の上にあり、川が流れ木々が森を作り、その向こうには青い空が広がっている。

 といっても実際に星の上空に島が浮かんでいるのではなく、位相の違う空間に存在する神の部屋の形を変えただけだ。

 島はあくまで床材の延長という無茶っぷりだが、今の私の力だとこのくらいは余裕だった。

 ちなみに中心の部屋から一キロメートルほど離れると唐突に壁にぶつかるので注意が必要である。


 いままでは見た目にこだわらなかったので一見、白い部屋が宇宙を漂流しているだけだった。

 今回、ラヴィーの『空が見たい』という要望に応えるためにルナが試行錯誤した結果、高度を落としていつでも青空を見られるようになった。 

 神の部屋が存在する座標をいじっているだけなので、その気になれば地表にも行けるけど大体は見晴らしのいい空に浮かんでいる。

 体感時間を早めると実時間との差で景色が目まぐるしく変わって目がチカチカしていたが、そこはルナが位相境界面を利用してうまくモーフィング……自然に変化するように座標と一緒に調整してくれた。

 ラヴィーのためとあってルナの気合の入りようが半端でなかったのを今でも覚えている。


 この庭をラヴィーは大変気に入ったようで、毎日駆け回ったり昼寝をして堪能している。

 それでもソファに座る私の横から腰に抱きつくのが一番好きなようで、相変わらずの懐きっぷりだ。


 大改装のもう一つの目的だったラヴィーの能力確認だけど、彼女はある程度の知識を共有してるといってもそれは会話に困らない一般常識程度だ。

 地球の文明や技術をきちんと理解しているわけではないので、『星の願いを』で惑星運営を直接補助するのは苦手だった。

 んっー! と一生懸命に温度管理などを手伝ってくれようとする姿は可愛らしかったが思うように成果が出なかった。


 しかしそんなラヴィーにも私達にない特殊能力が二つあった。

 もとが昆虫な彼女は虫と会話することができた。

 これだけでは役に立たないと思うが、『星の願いを』と合わせることでこの部屋から星に生息する虫達の思念を任意で感じることができ、地上の異常にいち早く対応することができるようになった。


 もう一つは長年その身に能力を宿して間接的に使用していたこともあって、自身に対する付与効果に秀でていた。

 具体的には分身体に憑依した後の身体強化とその形態変化だ。

 巨鎧種から人型となり思考が高度になったことでより能力を使いこなせるようになったようで、人型でありながら巨鎧種の時よりも力を発揮することができている。

 分身体に後天的に翅を生やしたり虫のような巨大な触腕を肩から生成するなど、部分的な形態変化は私達には真似できないものだ。

 カブトとしての体と今の人型の体、どちらも自分の体という認識がなせる技ではないだろうか。




 そんなこんなで改装やおやつタイムなどでまったりと過ごしていた私達だが、ただだらけていたわけではない。

 巨鎧種による影響は予想以上に大きく、時代を一気に進めながらの調整ではなく進捗を見ながらの細かい調整が必要だった。

 ここ数日……といっても地上では数万年過ぎているが、地上を観測したルナの指示で私が環境を変化させ、その影響を見ながら調整という具合だ。




 午睡のようなひとときの中でラヴィーとの親睦も深まり環境調整もあらかた終わった頃、私達はいよいよ次の時代へと足を踏み入れるのだった。

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