21 とある迷い子の回想・意訳
それは彼女の最初の記憶……
だれかが わたしを おうえん してくれた
げんきが わいてくる
でも まわりの でっかい おとなは とてもこわい
そうだ おふとんに もぐちゃおう
おそとと ちがって あんぜんだ
ずっと このまま もぐっていよう
いっぱい たべて おおきく ならなきゃ
おいしい ごはんも もぐもぐ ごっくん
かたい ごはんも どんどん たべちゃう
両親の顔さえ知らない彼女は、大人になるまで日のあたらない薄暗い部屋で過ごした。
何も知らない幼い彼女にとって、狭くて閉じた世界というのは幸せだったのかもしれない。
けれども、身長が伸びて体にも大人の兆候が出てきた頃、心も子供のままではいられなかった。
心地よかった閉じた世界もいつしか彼女を束縛する息苦しいものへと変わっていった。
うたた寝をする彼女の脳裏には、幼き日に見た広くて青い空とその空を一緒に見上げた同じくらいの歳の子ども達が頭の中に浮かんでいた。
それにくらべて今の自分はなんて孤独な存在かと嘆いた彼女は、こんなところを飛び出してあの空をまた誰かと一緒に見たいと強く望んだ。
そんな彼女の願いが天に届いたのか病弱だった体は見違えるほど健康に育ち、彼女はまた外へ行けることに歓喜した。
狭い世界から飛び出した彼女はいろんな経験をした。
その姿は今まで知らなかった新しい世界を、どこまでも探検していくかのようだった。
様々な経験をした彼女も良縁には恵まれなかったが子供には恵まれた。
子供を育てるのは意思が通じない怪獣を相手にしているみたいだったが、それでもやっぱり愛おしいようで、特にご飯を食べてる姿を見る彼女の顔には幸せの色が溢れていた。
しかし運命というものはあまりに残酷だ。
子は彼女より長く生きられなかった。
それでも彼女は次の子を育てて同じように死を看取り、出会いと別れを幾度も繰り返していくうちに、その心は擦り切れていった。
ボロ雑巾のように擦り切れた心でも幸せを感じる瞬間はあった。
ご飯をおいしそうに食べる子供を見つめる間だけは、彼女の心は満たされていた。
だがそんな仮初の幸せにも終わりがやってきた。
食中毒だ。
気づいたときには手遅れで彼女以外は助からなかった。
失意に沈む彼女だったが、ふと気づいてしまった。
単に別れが早くなっただけなんじゃないか? と。
どんなに頑張っても誰も彼もが自分を置いてさきに逝ってしまう世界。
自分はこの世界の中でどうしようもなく孤独な存在なんだと。
私は……これから何のために……生きていけばいいんドシーン!
…………
あぁこんなことならあの暗い部屋ドコーーーン!
……………………
あの暗い部屋から出なければ「ドコドコドコドコドガーーーン!
……うるさい!! 私の家の前で……一体何を騒いでいるというのか……!
外に出てみれば見慣れない顔のやたらでかい2人がドタバタ大騒ぎしていた。
はぁ……流れ者だかなんだかわかんないけど……
人が落ち込んでるときぐらい……静かにしてほしいものだ。
ちょっと脅かして帰ってもらおう。
と思ったら……なんかこっち来る。
……いい度胸だ……私はこんな見た目だけど……
大人になってから喧嘩で負けたことは……一度もないんだから!
そんなこんなで一戦やりあったんだけど……結果は私の惨敗。
今日はほんとに……ツイてない日だ。
でも……喧嘩した相手のひとりに泣きながら謝られた後……
生まれて初めて優しくされたのは……ちょっと嬉しかったな。
……この人はいつまで撫でてるのだろう……
なんだか……気持ちよくて……眠くなってきちゃった……
しばらく寝るから……起こさないで……ね……
「そういえばシア様も酸欠で死にましたね」
……メイドめ……空気……よ……め…………




