表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/44

18 ルナの作戦とシアの作戦

 ――薄暗い大空洞の中央、そこには数十万年という刻を生きた巨鎧種の長が圧倒的存在感を持って君臨していた。

 今まで何者も傷つける事ができなかった黒く分厚い甲殻に覆われ、見るものに恐怖をもたらす禍々しき巨躯の絶対王者。

 その周りでは死の狂宴が繰り広げられていたが、カブトは興味が無いのかただそこに在り続けた――

  


 

 ルナが巨鎧種の対策のために作り出したのは、まるまるとした多肉植物だ。

 種などの繁殖の仕組みは持っておらず、数日もすれば枯れてしまうようになっている。

 そのは腐った肉のような甘い香りを放ち巨鎧種を惹きつける。

 ルナによって大陸中に生成されたその植物は巨鎧種にだけ効く遅効性の毒を含んでいた。

 香りに引き寄せられてそれを食べた巨鎧種達は半日ほどで毒が効き始め確実に死に至るが、この毒の恐ろしいところはその致死性だけではない。

 毒は巨鎧種の体内物質と反応してより甘い香りを放ちながら、さらには麻薬にも似た依存性のある快楽物質へと変化する。

 それがもたらす結果は……共食いの連鎖である。

 呼吸によって発する甘い香りと快楽物質で次々に仲間に襲われる巨鎧種。

 そして毒に侵された巨鎧種を捕食した個体もまた毒に侵されて匂いに釣られた仲間に襲われる。

 毒が回り死亡すればその骸もまた甘い香りを放つ巨鎧種への毒餌となる。


「……えっぐいわね」


 ルナが仕掛けた毒餌には流石の私でもドン引きしていた。

 害虫ホイホイ的なものなのだが、効能がエグい事この上ない。


「巨鎧種は同じ種類でも蛹から孵る時に様々な形態で生まれてきます。その多様性を駆除するには群れるという習性を利用するのが一番効率がいいんですよ」 

「それにしても……まさに地獄絵図ね」


 虫地獄再来である。

 今回は虫にとっての、ではあるが。


「生命力がかなり高いので、やりすぎくらいでちょうどいいのです。この調子ですと三日ほどで駆除できるかと思われます」





 その言葉通り毒餌作戦を決行してから三日目の朝、ほぼすべての巨鎧種が物言わぬ骸となっていた。

 そしてやはりというか、最後に残ったのはカブトであった。

 致死量に満たなかったのか毒だと見抜いたのかはわからないが、なんとなくこうなる予感はしていた。


 大空洞の様子を見てみれば、我を失った巨鎧種たちが暴れ回ったのだろう。

 卵と幼虫、蛹となっていたものまですべてが食い荒らされていた。

 その巨鎧種たちも毒で力尽きたのだろう。

 大空洞からトンネルに至るまで巨鎧種の死骸が無数に横たわっていた。


 その光景を見てふと疑問に思った。

 なぜカブトは卵や幼虫を守らなかったのか?

 圧倒的な数の暴力に守りきれなかった? カブトも毒に侵され正常な判断ができない?

 なんとなくだけども、どちらも違う気がする。


「やはりカブトは残りましたね」

「ルナもそう思っていたのね」

「はい。シア様、ここは女神の鉄槌で……」

「いえ、あれは環境への影響が大きいわ。ここは私の策で行きましょう」

「……大丈夫ですか?」

「任せなさい!」

「何でしょう……とてつもなく不安なのですが……」

 



 多くの生き物が生まれたことで私の力は前よりだいぶ強くなっていた。

 そのおかげで分身体の大きさを変えたり力を付与したりできるようになったのだ。

 私の案とは『特別な』分身体を生成しカブトと戦うというものだ!


 


 森から少し離れたところに淡い光りに包まれながら分身体がうずくまった姿勢で二体生成されたのを確認し、ルナと共にさっそく降臨する。



「がぉーん」


 私は分身体にその意識を宿し腰を振りながら可愛いく鳴き声を上げてみた。

 しかしその姿は人間のそれではない。

 巨大な顎に二〇センチメートルを超える鋭い牙をいくつも持ち、鋼板をも突き破りそうな太く鋭い脚爪、一五メートルを超える大きな体に大木のような尾、その姿は白亜紀後期に約三〇〇万年ものあいだ陸上の覇者であった太古の暴君竜、ティラノサウルスそのものだ。


「シア様……この体は動きにくいのですが……」

「ルナならすぐ慣れるわよ」

 

 一方でルナが降臨したのは白亜紀の後期においてティラノサウルスと双璧をなすトリケラトプスだ。

 前方に大きく突き出した二本の角を持ち首の周りの堅牢な盾が特徴的だ。

 硬い皮膚に覆われた重量のある体とそれを支える太く強靭な四肢から繰り出される突進は必殺の威力だ。


 神の部屋に生命体を召喚するのと違い、地表に生成する分身体は疑似生命体であるがゆえ、かなり姿形の応用が効くようになっていた。

 シアたちが降臨している二体の恐竜は、『星の願いを』で実体化させた分身体ではあるが、地球に存在していたものを参考に構成され神力による補正がかかっている。

 そのため素体となったものより筋肉の出力と体の耐久が増している。



 飛んだり跳ねたりして体を慣らしているとルナから思念波が届いた。


「シア様どうしてこのようなことまでしてカブトと直接戦うのですか?」

「巨鎧種によって失われた恐竜たちの無念を晴らすべく恐竜たちのあるべき進化の形で討ち倒すのよ!」

「ティラノとトリケラはだいぶ後の時代の恐竜ですよ? ……シア様がやりたかっただけじゃ……」

「そんな事……ちょっとあるかもしれないわね!」

「あーシア様動きにくいです」

「弱音を吐かない! 一緒に頑張るわよ!」


 珍しく弱音を吐いているルナを励まして私達の習熟運動はしばらく続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ