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17 異質

 あれからしばらく巣の中を観察していたがあまり多くの情報は得られなかった。

 観察しててわかったのは蛹が孵るとそのぶんだけ成虫が巣立っていく事ぐらいだろうか。

 巣立った先で繁殖はしないようだが、大陸中に広がるせいで恐竜が発展しきれなかったのだろう。

 

 調べ物に没頭しているルナには悪いが、一旦ふたりの情報を共有しておこう。

 

「ルナ、ちょっといいかしら」


 ――ルナが持っている情報で補足していった結果、いくつかの新しい情報が出てきた。


 一つ目は巨鎧種の大きさとその割に少ない食事のこと。

 巨鎧種の体の中はほぼ空洞で、その胴体のほとんどが肺と気嚢と呼ばれる呼吸器官で構成されていた。

 発達した呼吸器官によって酸素濃度に似合わない巨大な体を維持することが可能になり、空洞であるがゆえに異常に軽い体は燃費がよくて少ない食事ですんでいたようだ。

 幼虫はかなりの養分を摂取していたが、あの強固な外骨格を構成するのに使用するのだろう。


 二つ目はあの一匹だけ一〇メートルを超える巨大で他よりも凶悪なフォルムの群れの長……『カブト』についてだ。

 ルナに記録庫のデータを確認してもらったところ、やはりこのトンネルはカブトが幼虫時代に掘ったものだった。

 恐るべきことに、この星のペルム紀から三畳紀の中程まで、地球より短い期間とはいえ数十万年前から存在していた。

 その生の大半を環境変化の少ない土の中で過ごし、蛹状態で環境変化に対応した形へと姿を変える。

 完全変態の英訳はコンプリート・メタモルフォーシスだがカブトのそれは次元が違う。

 まさに完全変態、パーフェクトメタモルフォーシスである。


 ルナによればこの星で生まれた生き物とのことだが……

 この星の生き物は、『星の願いを』による能力で人類が誕生できるように進化の道筋が地球とほぼ同じになるように補正がされている。

 そのなかで一匹だけとはいえこれだけ異常な進化をとげたカブトは明らかに異質だ。

 

 私の力に対抗できる存在がこの星に居るとは考えられない……

 ルナに聞いてみたところ他の神など外部からの干渉はないらしい。


 ルナと共に八方手を尽くしてみたが原因までは特定することはできなかった。

 今回のようなイレギュラーを潰すためにも特定しておきたかったけど仕方がない。

 あとはこの事態をどう納めるかか……


「シア様、サンプルが欲しいので巨鎧種を一匹この部屋に生成していただけませんか?」

「またとんでもないことを言うわねぇ……まさかこの部屋に招待する最初の生き物があれだとは思いもしなかったわ……」

 

 ソファから立ちあがり、部屋の空いているところに向かって巨鎧種を生成する。

 淡い光りに包まれて、てんとう虫のような巨鎧種が実体化した。

 と思ったら意識を覚醒させた巨鎧種がこっちに突っ込んできた!


「ひゃっ! ちょっ! ちょっ! あみ! 網出てきて!」


 巨鎧種の周りに能力で生成された網が実体化していく。

 巨鎧種は足に網が絡みついてバランスを崩しひっくり返る。

 多少床を滑って迫ってきたけどなんとか止めることに成功した。


「ふひぃー、いきなり襲ってくるなんて……びっくりしたわねぇ!」

「シア様、檻を作っておいてその中に出せばよかったのでは?」

「……そう思ってるなら先に言ってくれればよかったのに……」

「いえ、あんな凶暴な生き物をそのまま出すとは思いもしませんでしたので……」

「うっ……」

「ですがあのような存在ではシア様に傷ひとつ付けられませんので安心してください」

「怪我しなくても、あんなのにまとわりつかれるのは嫌よ……」


 ルナが網に絡まった巨鎧種に近づき手を向ける。

 手のひらがポワッと光り、ハンディタイプの金属探知機のようにあちらこちらにかざしていく。


「シア様、サンプル調査完了いたしました。この個体の消去をお願いします」


 私が念じると巨鎧種は網とともに淡い光となって消えた。


「うーん 調査に必要とはいえ生き物をポンポン出したり消したりするのは良心が痛むわね……」

「すいません。シア様」

「ルナが謝ることないわよ。ルナのことだからさっきのは必要なことだったんでしょ。私は私の願いのために頑張るって決めたんだから」

「……ありがとうございます。シア様」

「な……何よ。感謝されることなんて何もしてないわよ! それよりこれからどうするの?」

「そうですね……本来なら直接生態系に手を出すのはあまり好ましくないのですが異常事態ですので仕方ありません。駆除しましょう」

「まぁそれしかないんでしょうけどね。でもどうやって? 『女神の鉄槌』じゃ他の生物にもかなり被害が出てしまうわよ?」

「ええ、ですので地球でも伝統的な駆除方法の『毒餌』を使おうかと思います。安心してください。一〇〇%自然由来のオーガニックな毒餌です」

「逆に怖いんだけど……まぁいいわ。ほかの生物に影響は?」

「先程のサンプル調査のおかげで巨鎧種だけに効く成分の調整ができますので、他の生物への影響はありません」

「わかったわ。それじゃ準備の方よろしく頼むわ」

「はい。任されました」


 ルナは頼りにしてるけど、あのカブトだけは毒なんかで倒れるとは思えない。

 私もなにか策を用意しておいたほうが良さそうね……

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