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13 みかんがない!

「寒いと思ったらこんなことに……地表温度は管理していたけどこれだけ気温が下がると私も冷え込むわね」


 こたつに潜り込みながら窓の景色を眺める。

 もちろんこたつは『星の願いを』で出した。

 この部屋の中なら私は全能……なのだが本体から伝わる寒さだけはどうしようもない。


「星からの感応度はだいぶ抑えているけどまだ寒いわね。ルナもなにか温まりそうなもの出してよ」

「では私はこれを」


 ルナがそう言うと私の後ろに七〇センチメートルほどの寸胴で黒い鉄の塊が現れた。

 脇にはカゴに入った黒い石と、ゴミ拾いに使う大きなトングがあった。


「なにこれ?」

「これは石炭ストーブです」

「初めて見たわ。じゃぁこっちの黒いのが石炭ね。それでこの『ゴミ拾いの』で中に入れるのね?」


 よっこらせっと立ち上がりストーブの前面の扉を開ける。


「シア様、それは『ゴミ拾いの』ではなく『火ばさみ』といいます。たしかにゴミ拾いでも広く使われますが……たき火などでよく使用されますよ」

「ん~~たき火とかしなかったしな~」


 片手間に返事をしながら石炭をぽいぽい入れていく。

 わかりやすく『ここまで』と書いてある線まで入れたので、指を鳴らして『星の願いを』で着火する。

 ふちがぽやっと赤くなった石炭が少しずつ光だし、温度が上がって黄色みを帯びた頃に小さな炎が上った。

 蓋を締めてガラスの覗き窓から中を見れば、さきほどの炎をきっかけに他の石炭も赤く染まっていく。

 

 こたつに戻った私は定番のみかんを出そうとしたが能力が発動しなかった。


「ルナ、ちょっと」

「どうしました?」

「みかんを出そうとしたんだけど『星の願いを』が発動しないのよ」

「食べ物や生命体カテゴリーに属するものはシア様の星に存在するものでないと、この部屋に呼び出せないようですね」

「こたつとストーブまで出せるのに、なんでまたそんな微妙なとこだけ制限が……」

「シア様のやる気を奮起させて、星の発展を促すためと思われます」

「そんな制限なくてもきちんと発展させるのになー」


 いままでまったく空腹感を感じていなかったが、手に入らないとなると途端に欲しくなってくる。

 とりあえず『星の願いを』の長期目標に『美味しい果物がなりますように』ってお願いを入れとこう。


《農業発展と複数の発展項目を阻害し、第一目標の達成が困難になります。よろしいですか?》


 いままで聞いたことのない警告が流れる。

 どういうことかしら……あぁそういうことか……与え過ぎは良くないってことね。


 何もしなくても美味しい物が実れば品種改良とそれに伴う遺伝の研究もされないだろう。

 『人とともに歩む』ためには何でもかんでも与えればいいというわけじゃないらしい。

 文明の健全なる発展に影響が出るからこそ、『星の願いを』は警告を与えてくれたのだろう。

 ルナに何度も言われているのにまだまだ私の行動には思慮が足りないようだ。



 しばらく俯いて悩んでいたけど、さっきの願いを取り消して顔を上げる。

 相変わらず体は冷えてはいたが、私は気合を入れ直して地上の発展を見守ることにした。

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