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悪意のある普遍的な思想

人間の切り身

作者: レー・NULL

「今日は特別に指1本1割引きだ。食いさしの左手なら更に1割引きしてやるよ。どうだいお客さん、興味なさそうだな、裕福そうだもんな。何人ぐらい食ってきたんだい」


 自らの腕をさばいて切り売りした肉で、他人の肉を買って、それを食らって命をつなぐ。滴る血と、赤黒い肉を、ただ噛みついて、咀嚼して。つないだ命の、肉を切り売りして、流れる命を補強するように、他人を食い尽くす。


 天上の人は、肉の切り売りをさせることで、それだけで、自らの命を繋ぐ。その心音、鼓動の1つに血の一滴を流し、その歩み、その1歩で肉塊を切り崩す。語る言葉、その葉は刃物となって、その言刃は肉を切るものとなる。


 「頑張れ」と言刃を振るって、人を解体する。「諦めるな」と言刃を振るって肉を刺身に。「出来るはずだ」と言刃を振るって臓物をスープにする。「命を繋げ」と言刃を振るって、剥ぎ取られた脳に装飾してデザートが完成。命の糧として、十分すぎるそれは、言葉を発するものだけのもの。


 己の肉を切り身にして食つなぐ、次は己の腸を引きちぎる、汚物だろうと洗えば売れる。肝臓、腎臓、は丁寧に引き抜いて、できるだけ高く売りさばく。流れる血は新鮮なうちに、干からびた肉体だが、指を売っていけば足しにはなる。脳は既に汚染されて、心臓は小さく固まった。己を串刺しにする骨だけがただ刺さる。


 「死にたくない」と己の肉を食い。「満たされたい」と己の肉を売り。捌かれて、奪われて、執着して、居場所が無くて、恨んで、憎んで、苦痛に塗れて染みとなる。だが、それが当たり前で、それしか道が無いといえるだろう


 染みに汚れた、神の見えざる手は、天上を叩き落として、皆に同じものを与えるだろう。それは、もはや、この世界の復讐と救済だろう。


「ならばいっそ、全てを巻き込んで自爆してしまおう」


肉と染みの話は続く

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