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アセンブル!! 一章、未完の青年  作者: 熟睡
第一部、平凡な日常(?)
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3、一年首席《最強のポニーテール様》

「あ、私たち同じAクラスみたいですよ! えーっと、シオンさん? どうして顔が青いんですか?」

「…体調不良」

「そう、ですか? それではこちらの胃薬を」

「…なんであるの?」

「友達がよくお腹壊すので…」


 その友達に心から「どんまい」と言いたい。

 恐らくはこの人の天然ぶりのせいだろう。

 こちらもすでに胃が痛いのも事実だ。

 間接的にこの人のせいで。

 では直接的な理由はというと…


『『『調子にのるなよ、白頭!!』』』


 と雄弁に語りつつ、俺を射抜く野郎どもの視線。

 理由は恐らく隣にいる青澄さんが原因だろう。

 なんたってお姫様のような人々を安心させる雰囲気は男子誰もを魅了させる。

 そのため嫉妬からか何からかめちゃくちゃ多数の眼はまるで妖怪のように俺を取り囲む。

 …これって胃薬でましになるのかな?

 とりあえず気を紛らわすために一錠を口に含む。

 苦々しい味が舌に広がる。

 うん、まずい。

 でも少しだけ平常心に戻ったような気がする。

 そうか、青澄さんと同じクラスなのか。

 庭に立てられているクラス分けの看板を俺は見る。

 そこにはやはり俺と青澄さんの名前が出席番号の一番、二番という順番に基づいて並んでいる。

 恐らくはクラスの席も近いことだろう。

 華があると喜ぶべきか、それとも俺には刺激が強い視線の矛がこれからも続くことに悲しむべきか…

 俺にはどちらの方がいいのかわからなかった。


「静ぁー!! 今日は遅れなかったのー!!」

「あ、沙弥耶(さやか)ちゃん」


 沙弥耶、すごい名前だな。

 その人の名付け親は何を思ってこの名前をつけたのだろうか。

 少なくとも小学生の頃にテストで困ること間違いなしだ。

 紫苑はその女性であろう方を見るために振り返る。

 するとそこには大和撫子(やまとなでしこ)のような美人がいた。

 長い艶のある黒髪は黒ゴムで束ねられ、風にたなびく。

 そして輪郭はほっそりとしており、目はぱっちりとしており透き通っている黒色。

 そしてその双眸が紫苑を見る。


「ん? この人は誰? 静?」

「シオンさんのおかげで今日は遅れずに済んだんだよー!!」

「…自分で努力しなさい」


 紫苑がポケーっとしている間に伊澄さんは沙弥耶さんに説教されていた。

 どちらもモデルとも張り合えるレベルの美人。

 かたやお伽話のお姫様のようなおっとりとした可愛らしい美人。

 かたやカリスマで民衆を震わせた英傑のような凛とした美人。

 正直、凄く絵になる。

 …ですが俺に対する憎悪などがさらに倍増したのはやめてほしいです。はい。


「シオン君? よろしくね。見たことない顔だけど編入生? 上の名前は?」

「はい! 俺の名前は阿道 紫苑です! よろしくお願いします!」

「…敬礼はしなくてもいいわよ、阿道君。一年生でしょ? そうだったら同級生よ」

「嘘だ!!」

「嘘じゃないんだよ。本当にしっかりしてるけどね。私もお姉さんに欲しいよー」

「…アタシはむしろ嫌だけどね。胃痛で死にたくないわ」


 なんだか本当に上級生みたいにしっかりしてるよね。

 こんな人が将来上に立つんだよね。

 …あと胃痛の友達ってこの人のことか。

 ご苦労様です。

 すると周りを見渡し溜め息を吐き、唐突に叫ぶ。


「それにしても…アイツはまだ!? もうアイツ初日から遅刻するつもりなの!!?」

夜黒やぐろくんのこと? そういえば見てないね。あと…黄堂(きどう)くんも来てないと思うよ」

「…誰ですか?」

「…学校で一二番を争う問題児どもよ」


 …個人的には俺を睨む強面こわもての人々の方がヤバく思えるのですが。

 え? これ以上がいるんですか?

 …マジでやばそうだ。

 覚悟していよう。


「はぁ…それじゃあアイツら来たらアタシに知らせて、静。しめるから」

「どこか行くの、沙弥耶ちゃん?」

「アタシはスピーチの練習があるからね」

「…やっぱり生徒会長なんですね」

「違うわよ、阿道君。…そういえば自己紹介をしていなかったわね」


 そう言うとおもむろに胸に右手の指を添える。

 そんな動作一つ一つにも優雅な感じが醸し出ていた。


「アタシの名前は白庭しらにわ 沙弥耶さやか。一年生首席よ。そしてのちにこの世界のトップに立つ女よ。よろしくね」


 自信満々にそう言い放ちくるりと半回転ターン。

 黒髪が弧を描いて揺れる。

 そしてカツン、カツンと校舎へと向かっていく沙弥耶さん。

 なるほど普通の人がああいうことを言うとイラッとくるけどカリスマが言うと普通のように思えるんだな。

 一つ勉強になった。


 …ん?

 ちょっと待って?

 “白庭”?

 その苗字には聞き覚えがあった。

 その名前は確か…


「財閥の令嬢!?」

「そうだよー」


 嘘だろ!

 そんな格の違う人と喋ってたの、俺!?

 そりゃあカリスマがありますがな。

 “白庭財閥”、その名前を聞かない日はない。

 田舎なうちですらもよくその言葉は聞いた。

 都会に出ればもちろん広告の数々が目に入るレベル。

 日本最高レベルの財閥、それが白庭財閥なのだ。

 まさかその娘さんとお話しするとは…人生どうなるなわかったもんじゃないな。


「沙弥耶ちゃんはすごいよー。勉強もスポーツも部活も万能だもん。執事も優秀だしね」

「…そんな人、本当にいるんですね」


 執事も気になるが…それ以上に故郷のお母さん、お父さんに伝えたい。

 俺、すごい人に都会で会ったよ。と。

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