1、起床展開《起きてすぐさま騒がしい有様》
初日二話目!!
ーージジジジジジ!!!
カーテンの合間から抜ける朝日。
うるさい音の音源の目覚まし時計。
どこまでも煩わしいこのコンボ。
とりあえず時計は乱暴に叩くことで黙らせる。
青年はいつのまにか抜け出していた布団の温もりを感じながら思う。
ーー嗚呼、夢か。
俺は未だに霞む記憶を思い返す。
あれはもう五年前、小学五年生頃の話。
色んな意味でも否応に目立つ自分はよくイジメの対象となっていた。
そしてなぜだったかはもう忘れてしまったが、一部の同級生が持っていたカッターナイフ、それが俺を生死の縁へと追い込んだ。
刺された場所は確か男子トイレ。
トイレで複数の同級生に殺されかけた男子小学生。
…なんとも笑えないものだろう。
「…はぁ。嫌なことを思い出したなぁ」
ショートカットの白髪を手で鷲掴みにし、くしゃくしゃと乱暴に撫でる。
この白の髪は生まれつきのもの。
滅多にない色素の抜けた髪はイジメの原因の一つである。
ズカズカと不機嫌に古びたアパートの床を鳴らす。
向かうは洗面所、そこで寝ぼけた思考を洗い流す作戦だ。
歯ブラシや歯磨き粉、洗顔が並ぶ洗面台。
そして自身の全身が浮かぶほどでかい鏡。
また真ん丸と見開かれた目は基本的に日本人らしき黒。
しかし光が差し込むと群青色に打って変わる。
いつもの自分であることを確認し、蛇口をひねって水を出す。
そして両手を水入れのようにし、貯めていく。
やがて手の内からあふれ出した水を顔へぶつける。
ーーパシャッ、パシャ
よし、眠気は取れた。
青年はハンドタオルで顔につく水滴を拭き取る。
そして今度はキッチンに向かう。
腹が減れば戦はできない。
先人の言葉は信じるべきだと改めて思わされる。
しかし神さまというのは案外、薄情なものである。
ふと青年は思い出す。
「…今日って、4月10日?」
4月10日、その日は確か新たな学校生活の始まり。
つまりは始業式である。
そして予定の登校時間は8時。
バスで20分間、揺らされるだけでたどり着ける。
しかし…今の時間は。
それ急げ! 確認確認!!
青年は先程ぶん殴った時計をスライディングと同時にキャッチ!
さあ、今のお時間は!?
7時59分
うん、悠長に飯食ってる場合じゃないね。
青年はその現実に頷くとともに即準備!
まず制服を手早く着る。
中シャツ、ポロシャツ、そしてズボンとブレザーの順番に着ていく。
そして昨日のうちに用意していた春休みの課題や上靴、さらには資料を入れている学校指定のショルダーバッグを電光石火の如く掴み、ドアを蹴飛ばしていく。
そして鍵をキチンと締めてアパートの階段を下る。
バス停はアパートのすぐ近くにある。
だからこそすぐには着けるし、間に合う筈だ。
だがもう一度言う。
神さまというのは案外、薄情なものである。と。
階段を下ろうとした瞬間に青年は発見する。
今にもうバス停を横切ろうとする大きな車体を。
ーー…あれバスだよね?
それに気づくと青年の行動は早い。
「待ってぇえええええええええっ!!!」
階段を何段も飛ばしながらバスに向けて大声で叫ぶ。
もう近所迷惑だとかは考えていられない。
青年は叫ぶ、バスに向かって吠える。
ーーーーーー○ーーーーーー
青年は結果的に間に合った。
しかしその代償に青年、阿道 紫苑はアパートの住人からの不評を得ることになる。
彼の高校生活はマイナスから始まることになるのだった。




