闇ギルドと宿屋で
魔宝石を普通の店にただ売っても出所何てものは簡単に気付かれるだろう。それにその店の店主が領主に報告する可能性もある。そんなことされた日には、死んだという事実が、何かしらの手段で生き残った、しかも魔法石を幾つかくすねていると知られ、また奴隷へと逆戻りだろう。そんなことへとならないために、街の奥深くの路地の更なる奥にある闇ギルドへ売ることにした。だが、売るためには闇ギルドに登録しないといけない。登録しておいても損にはならないだろう。冒険者ギルドなんて所に登録した日には奴隷行きだ。奴隷になったかなんて記録されているからな、直ぐに分かるものだ。
暗い路地を歩きながらそんなことを考える。進む事に人の気配は無くなっていき、表通りからの声は今では小さくなっていた。時折、食堂からなのか、それとも家から出たゴミになのか分からないが、ネズミが数匹群がっているのが見れるが、近付くと駆け足で逃げていった。
闇ギルドへと着く。そこは前に来た時と違いは無かった。そのことに少し心を安心させながら扉を開ける。そこには人相の悪い者が少数・・・だが、他の者等は見た目通りでは無いことが確かだろう。何せ此処闇ギルドに居るのだから。
辺りを見渡すのを止め、俺は受付の所へと向かう。冒険者で闇ギルドに所属する者はそれなりに居る。俺はそのそれなりの一人ではない。この世界に転生したばかりの子供の奴隷がこのギルドに所属していたから、ここまでの道中は迷うこと無く、それでいて堂々と来ることが出来ていた。
「登録をしたい」
「・・・おいおい、ここは冒険者ギルドじゃないですぜ?≪魔装のセルド≫さん?」
意地悪げにそう言ってくる。その男の様子から既に俺が奴隷になって働かされていたことが分かっているようだ。
「その二つ名は無くなった。もう冒険者なんて出来る身ではないしな」
「ここに来たのは主の命令ってことですかね?」
「いや違うさ、奴隷紋を運良く無くすことが出来たんでね」
俺はそう言って奴隷紋があった場所を見せる。今ではもう輝きの失い効力も無くなった奴隷紋を目にした受付の男は俺に小声で聞いてくる。
「・・・あいつ、死んだのか?」
「偶々だ」
俺がそう言うと男はそれ以上聞いてくることは無かった。闇ギルドなんてそんな物だ。深く聞くことは厳禁それがルールみたいなものだ。無理に聞けば罰せられるだろう。闇ギルドだけの罰が。
「残念だけど、まあいいですよ。奴隷じゃなければいい、ようこそ闇ギルドへ」
「ああ」
ニヘヘと笑いながら目の前に紙を用意される。そこに記入していく。質の悪い紙だが量産することに成功し、安価に使われるようになった紙に、木炭をただ木の板で挟んだだけの物を使い記入していく。
「終わったぞ」
「これで貴方も、ギルドのメンバーですよ。裏切りは御法度。国に指名手配されることも、仲間の情報を売ることも御法度だ。やったら死があるだけだから気を付けるんですよ?」
「そんなものは知ってる」
「だと思ってら、だから後に言ったんだよ」
ニヘヘと笑いながら、受付の男は登録を終わらせる。終わるとギルドの中を軽く説明する。
「あっちに依頼票があるよ。あれは誰でも受けられるが依頼内容は簡単で依頼料も安い。まあ、あれ以上の依頼を受けるのなら実力を見せてみなよ」
「わかった」
「早速依頼を受けるのかい?」
「いや、その前にこれを売りたい」
そう言って、懐から加工前の魔宝石を出した。磨かれる前の状態の為に光の屈折なんて物も無いし、石が所々に付いている。だが、その宝石特有の色だけで受付の男は分かったようだ。
「これは」
「加工前の魔宝石だ」
「出所は聞かないけど、加工前だから安いよ?」
「それなりの額にはなるだろ?今は防具を買うために少し金が要るんだ」
受付の男は少し考えてから麻の袋に銀貨を数枚入れて目の前に出した。
「それならこれくらいになるな」
「いいのか、思ったよりも多いぞ?」
「それはこれからの活動に期待してだよ」
「わかった、期待に添えるようになんとかする」
「防具を買ったら直ぐに依頼を受けるのかい?」
「ああ」
そういって、闇ギルドから出る。次に向かうのは幼馴染で馴染みにしている鍛冶屋へと向かう。
・・・
「いらっしゃいませ!」
幼い声でそう言われる。どうやらこの店の店主であるチェドは受付の娘を雇ったらしい。そのことに気づくと、店主を呼んでくれと俺は言った。分かりましたと言い奥の方へとトテトテと呼びに行った。少し待つと武器なのか、それともナイフを打っていたのか分からないが、仕事服のまま出てきた。
「久しぶりだな、チェド」
「お前は・・・!?」
俺がそういった途端気付いたように、驚きの声を上げていた。それほどまでに驚きの出来事だったようだ。
「奴隷から解放されたぜ」
「どうやったんだ、あいつの奴隷紋は死なない限り外せないんじゃ・・・」
「死んだんだよ、一時的にだがな」
「死んだって、ゴドはどうしたんだよ。お前が抜けれたんならゴドも出来たんだろ?」
「ゴドは魔物にやられて死んだ。俺は偶々運が良かっただけだ」
「・・・そうか、残念だったな」
「大丈夫だ、冒険者なんてそんなもんだからな」
「だが、アイツと長かっただろ?」
「まあな、少し悲しいがいつまでも泣いてたらアイツに笑われちまう」
悲しいのは本当だ。この身体に入ってるからそう感じているだけだと思うが、また転生したらこの感情なんて直ぐに忘れる。
「いい武器を造らないとな!下手な武器を造ってお前に売ったって知られた日には俺も笑われるからな!ガハハハハ」
チャドも悲しいのだろう。無理して笑うときはいつも少し強気に笑う。今度酒を奢ってやるか、この大きな仕事が終わったら。
「そうだよな!いい武器を造ってくれ!」
そうやって俺も悲しいことを笑いで隠すのだった。その声は少し震えていたかもしれないが気にしない。
その後、自分の魔獣の皮の防具を見せて修理する箇所が無いかを聞き、防具も新しく造ることとなった。
武器の注文が終わった後、宿屋に止まることにした。表通りにある宿屋で、黒い噂など聞かず、美味しいという理由で選んだ宿にした。その他には武器や鎧の手入れがしたいからだ。鎧は心臓の部分に穴が空き血が付いている。剣も道中で出会った魔物を斬ったため返り血が付いている。道中、布で拭いたが未だ微かに残っている。それに一刻も早く汗も拭きたかった。
「宿を頼みたい」
「は、はい!」
店番の子だろうか?血の付いた鎧など見ることが無いのか、緊張した面付きで返事をしている。
俺はそんな姿を見て緊張しなくてもいいと言い、宿は幾らかと聞いてみる。
「はっ、はい、えっと・・・銀貨3枚です!」
「ありがとう」
少女は荒くれ者の冒険者が感謝の言葉を言うので驚いているらしい。だが、直ぐに少女は俺がタオルを使わせてくれと言っていたのを思い出したのか、奥の方へと向かっていった。
少し待ってると少女は母親らしき人を連れてやってきた。
「あんたかいタオルを使いたいってのは」
「すまない、幼い子に血の付いたりした姿を見せたりして・・・」
「いいってよ!今日初めての接客がお前さんなだけで緊張してるだけだから!」
女将さんは元気で明るく笑いながらそう言ってくる。やっぱり宿屋の運営をするには、やはりこんな性格じゃないと運営出来ないのだろうと思った。
「それなら良かった」
「血が付いてる冒険者なんていつものことだよ!さ、裏に井戸があるからそこから水を汲んで流してきな!」
「ありがとう」
簡単に借りれて良かった。さて、血を流しに行くか。
鎧を脱ぐとそこには傷跡があったが昔にあったとしか言いようが無い見た目の傷しかなかった。それを見て、こんな感じになって生き返ってるのかと呟く。他の傷も確認すると前に怪我をしたまま治って無かったところも治っていた。だが、既に無くなっていた、と言うより欠損状態の部分は再生されない事が分かった。
靴の上から蛇に噛みちぎられた小指が再生してなかったからだ。
「こんな部分はやっぱり駄目か」
転生と言っても完全回復するわけではないようだ。毒を食らった状態の者に転生したらどうなるかなど気になるが、まず先にすることは自分を奴隷にした者の殺害だ。そのことを考えるときだけ魂の奥底から殺せと囁く声が聞こえてくる。囁くのは誰だか分かる。自分の為にも、そいつのためにも殺さなければ。
身体を拭きながらそう思うのだった。
「ありがとう」
「いいってことよ!代金は泊まってく分に入れとくからね!」
タダほど安くは無いではなく、タダでは無かった。俺はその分のお金を出し、夕食まで一休みするのだった。
部屋で暫く休んでいると"トントン"と誰かが扉を叩く。直ぐその後に声が聞こえて来る。
「ごはんができました」
子供の声でそう言われる。その声は宿屋の受付にいたこの宿の少女だった。
「わかった、今行く」
扉を開けると直ぐそこに宿屋の少女が立っていた。その少女は俺が出てきたら、こっちですと言って食堂の方まで連れて行ってくれるようだ。俺はそれに付いていった。
「ここが食堂です」
そう言って頭をペコリと下げてパタパタと去っていった。受付に行ったのか、次の客を呼びに行ったのか分からないが、良くできた子だと思った。
食堂では夕食の香りが漂っている。その匂いは美味しいという期待を高める。俺はカウンターに行き夕食を貰う。夕食は株や少しのベーコン、それにキャベツやハーブなどを入れて煮込んだスープに雑穀パンが付いている。俺は豪華だと思った。ベーコンが入っていると言う点にだ。香辛料などを少し使わないと臭くなってしまう。その臭み消しに使ってるのだが、香辛料はも南の方向に行かないと中々手に入らないため高価になっている。それなのに使っているということは、それなりに儲かっているという事なのだろうか?
そんな事を考えるが、料理が冷めてしまうということに気付き慌てて食べることにする。一口目で食材のおいしさが口の中に広がってきた。二口目にパンを食べてみる。雑穀の旨みが口の中に広まって美味しい。三口目にパンとスープを一緒に食べると、どちらも互いを邪魔せずに引き立てていて美味しかった。久しぶりのまともな食事に感動しながら、食べているといつの間にか器は空になっていた。
「ふ~」
「どうだ、美味しかったかい?」
「ああ」
そう聞かれた方向を見ると闇ギルドの受付の男がいた。
「お、お前は」
「しー。黙ってろ。俺は偶々客として来ただけだ」
「そうか」
「ここの宿屋の飯は旨いだろ?」
「ベーコンが入っていたりして美味しかったな」
「そうかそうか」
「気になったんだが、ベーコンが入っていることに驚きだったな」
「そうだろう?最近香辛料になるモンスターが見つかったんだよな」
「初めて知ったな」
「なるってもいっても、調理法が見つかったといった方が正しいな。エントの実ってあるよな」
「ああ、あの甘い実の奴か」
「その種を磨り潰すと香辛料になるって分かったんだよ」
「へー、磨る潰すって考えるとか凄いな」
「そうだろう?でもこの話には裏があって、エントの実に残ってることに気付かずに食べてたら気付いたって話だぜ」
「アホだな」
「そうだろ?ま、それが切っ掛けで見つかるなんておかしな事だよな」
「そうだな」
二人して笑う。なんだこいついい奴じゃないかと思いながら。話をするのだった。じゃ、ここら辺で俺はかえるわ!と元気そうに言って食堂から出てくのだった。俺もカウンターに食器を置いて部屋に戻るのだった。
修正終わった。つってもこの話だけどねw2017/8/26




