スキルの獲得、そして陰謀
「な、なんで・・・」
「ふふふ、ふはははは」
その笑い声は先程まで胸を貫かれた男とは思えないほどの笑い声だった。
セルドは反撃することも出来ずにその命の灯しみが消えた。燃え尽きる灯火の中、何故という言葉が駆け巡る。だがゴドただ笑いながらその姿を見ているだけだった。
「奴隷の死骸なんていらなかったなあ」
新しく手に入れた肉体を実感しながらそう呟く。その顔に表れる表情はとても嬉しそうだ。
「コイツの能力は『闘装』か、元々あった俺の『悪食』と加えると二つ目のスキルになるのか」
身体が変わったのなら性格も変わる。だが、今回もすることは変わらない。何故ならこの肉体の人物もまた、自身を奴隷にした人物を殺したいと思っていたからだ。
「セルドが死んだか」
そう呟く。
自身を殺して乗り換える事でセルドの『魔装』を手に入れたいと思ったが、死ぬ前のセルドが同じ考え方をしながら死んだとは思えない。もしかしたら、俺を恨んで死んでいったかもしれない。
そんな考えが浮かぶが、『魔装』という魅力には抗えなかった。これはこれで珍しい能力だからだ。自身の持つ『闘装』と合わされば、また子供の姿に転生したとしても大人と難なく渡り合えることが出来るからだ。
「おし」
そう言って自身の首をその手に持つ剣で切り裂くのだった。その行為は狂気じみている。いくら肉体の性格に似ると言っても異常だった。何故そうなったかは、自身を奴隷にした者への復讐という二人の意思が混ざっているのが原因だが、そのことに気付いてすら居なかった。
「転生したのか・・・」
再び得た肉体を自分の物として呟いた事がそれだった。
「どうやら俺も奴隷とした主に恨みを持っていたみたいだな」
ニヤリと笑って歩き出す。傍にはかつての親友だった人物の死体を遺したまま。
「奴隷紋も無くなったからな・・・このまま主を殺しに行くか?」
一度止まって考え始める。
より主が苦しむような未来を望んで。
「取り敢えず、魔宝石を全て貰っていくか」
魔宝石は加工する前の状態では安い。
そのため加工して売っている。
加工具合の度合いによっては鉄屑同然の価格となったり、驚くほどの高値となることもある。
そのため加工する者は逃がさないために屋敷に住まわせている。
加工者も一種の奴隷と言ってもいいだろう。
だが、不満が募れば加工技術が疎かとなるため、待遇はかなりいい物となっている。
「倉庫は」
記憶の中から魔宝石を保管している倉庫を探し出す。
そして見つけ出す。
「こっちだな」
そう口にすると真っ直ぐ歩み始める。
その時間は夜だというのに、虫の鳴き声など一つもなかった。
・・・
「なんだと!」
見事な調度品で彩られた一室で声を荒げる一人の男がいた。
その男は身体が脂肪で包まれており、見事な出来の服はその脂肪により残念な物と化している。
だが、声を荒げられた人物は気にすることなく話を続ける。
「先程仰った通り、セルドとゴドの奴隷紋が消失しました。どうやら魔物に殺されたようです」
「それは本当なのかゼネス!」
「本当です。ですが不審な点が幾つかありました」
「私の魔宝石は大丈夫なのか!それだけ大丈夫だったら他の事なんてどうでもいい!奴隷なんてまた買えるんだからな!」
「分かりました。どうやら今週分の採掘分が盗まれたようです」
「なんだと!今週のが盗まれただと!誰にだ!魔物如きが盗むわけ無いだろう!まさか使いの者が盗んだんじゃないんだろうな!」
「使いの者として使ったのは奴隷です。もし強力な魔物が現れていた場合、多きな出費となってしまいますからね」
「誰が盗んだんだ!まさか、お前じゃないだろうな、ゼネス!」
「まさか、加工前の魔宝石を盗むより、加工後の魔宝石の方が高く売れましょう。ま、盗んで手に入れた物を売ろうとすれば、直ぐに貴方に気付かれて私は処刑されてしまうでしょうね」
「じゃあ誰が、誰が盗んだというんだ」
ガネルは頭を抱えながら盗みそうな相手をその頭で考える。
その中で不審な点が幾つかあったとゼネスが言っていたのを思い出し、それを苛立たしげに聞く。
「おい!不審な点があったと言ったな、何があったか言ってみろ!」
「はい、今回現れたであろう魔物はゾンビでしょう。ですがゴドの首が自身の剣で切り裂かれ、セルドの死体はどこにもありませんでした」
「では、セルドが盗んだんじゃないのか!」
「それはありません。奴隷紋によって縛られていたので出来ないでしょう。それにセルドの奴隷紋は死なないと解除できないようになっていましたので、もう一体の魔物を追っている最中に殺されたというのが今回の顛末となりそうです」
「わからぬ、誰が盗んだいうんだ。まさか賊が現れたのか」
「セルドも殺す事の出来る・・・いえ、ゾンビとの戦闘途中に殺されたのではないでしょう?」
「それなら納得もいくが、どうしてゴドの首は自身の剣で斬られていたのだ?」
「自害は奴隷紋によって不可能ですので・・・」
そう言って考え始める。
不可解な点が多すぎるため、そうならざるしかなかった。
「胸に見慣れぬ傷がありましたので、念の為に殺したのでは無いのでしょうか?」
「胸を刺されていた?すると敵は真正面から来たというのか!」
「いえ、その胸に出来た傷はゾンビの持っていたツルハシによって出来た物でした」
「では、首が斬られていたのは念の為というのか」
「そうなるでしょうね。今回の件はゾンビと交戦中に襲撃されゴドはそれに気が行きゾンビに胸を刺され、セルドはゴドを殺した者を殺そうとし死んだということになりますね」
「襲撃者はかなりの手練れか?」
「セルドを殺す者となるとしたらそうでしょうね。何せ彼は『魔装』が使えますし」
「魔装使いと闘装使い、今度買うとしたら高くなるな・・・」
やっと落ち着いてきたのかガネルはそのことに気付く。
金にがめついが、金のこととなると人一倍頭が回るようになっているため、直ぐに気付くことが出来ていた。
「ええ、前回はたまたま騙すことにとってタダ同然で手に入りましたからね」
「運が良かった、たまたま冒険者ランクの高い者に金を貸すことが出来ると聞いて行ってみたら、『魔装」使いと「闘装」使いだったんだからな」
「今は高ランクの冒険者の金貸しなどの話など入っていないため、次は何時になるか分かりません」
「"グギギィ"糞が、賊などこの世から居なくなってしまえばこんな事にならなかったというのに!」
歯ぎしりしながらそう言う。
その音の大きさから怒りの度合いが直ぐに分かる。
セルドはそんな主に対して閃いたとばかりに、今思いついたことを伝えてみる。
「ガネル様、次に賊が来ても必ず賊を殺す事を思いつきました」
その表情には主の役に立てることへの喜びで表されていた。
その言葉を聞いたガネルはゼネスが言った言葉を邪険にせず聞き返す。
「本当かゼネス?余りに金の掛かるようなら・・・無いぞ?」
「大丈夫ですとも、お金が掛かるのは最初だけですから」
「最初が多かったら意味が無いぞ!」
「安心してください、私がやろうとしているのは魔物の奴隷化です」
「魔物の奴隷化か、それなら安く済むが直ぐに買い換えなければならないぞ!」
「いえいえ、魔物に共食いをさせ、強制進化させればよいのです。魔物は生命の危機に瀕すると繁殖能力が上がると言われています。飢えさせては子供を産み、その子供を喰わせてを繰り返せば簡単に進化するでしょう」
「途中で飢えて死んでしまったら元も子も無いぞ?」
「その時は洞窟から湧き出た魔物を喰わせればいいのです。殺すのは魔物にやらせれば食費など要りませんしね」
「途中で今回みたいに死んでしまったらどうするんだ?また買うのか?」
興味を感じつつも、利益が見込めない場合の可能性を念の為聞き出す。
自分で考えるのは聞いてからだ。
「番を二つ程用意させておけば問題は無いでしょう。レッサーゴブリンを例にすれば3ヶ月で子供を産み、二年で大人となります」
「それでは遅すぎる!短画的に進化できないのか!」
「では、お金が多少掛かりますが魔石か上位の魔物の肉を食べさせるかなどすれば進化致します。そちらの方がよろしいでしょうか?」
「ふん、そっちの方がいいではないか!」
「ですが、リスクもあります。最初に述べた方ではリスクは無いのですが、後者の方では身体の成長に追いつかずにそのまま死んでしまいます」
「その死体を再び喰わせてみたらどうだ?多少は馴染んでるかもしれないぞ?それに、最初に掛かった金も取り戻せるのではないのか?」
疑問に思ったことをゼネスに問いかけてみる。
するとゼネスは素晴らしいと言わずとも分かるような顔をしていた。
「さすがガネル様、私の思いつかないことを簡単に思いつくお方だ」
「どこがだ?」
「死んだ肉体を再び喰わせると言うことで、馴染みつつあった肉体と、新しい死骸による最初の案も兼ね合わせている。なんと素晴らしいことを思いつくのでしょう!」
「分かった、分かった。では魔物の肉か魔石の価格を提示しろ。考えるのはそれからだ」
「有り難うございます。では、早速費用の算出を致しますね」
「さっさとしろ」
「イエス」
そういってお辞儀をして部屋から出て行くのだ。
世界から禁忌とされた蠱毒の法を行うことができる嬉しみを、その胸に期待しながら。
この話の大幅な部分が消えてることに気付いてなかった
(´;ω;`)
今更だけど追加した。2017/08/25




