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ハーフ・ゴブリンの少女

 私は罪を犯した。

その罪は人からしたら微々たる物かもしれないが、ゴブリンと人間とのハーフとして生まれてきた私にとっては、償うことの出来ない程の罪。


 私は今でもこの閉じ込められる檻の中で嘆く。

決して意味の無いだろう事だというのに。


 私が犯した罪。

それはーーー




ーーー私が生まれたのはゴブリンのとある集落の一つで生まれた。

その集落ではゴブリンが生活をしていた。

盗みを働き、人を殺し、獣を殺し、蛮族と罵られながらも、ゴブリン達は生きている。

畑に盗みを働いてもゴブリンにはただ食べれる植物が沢山生えてるという認識でしかない。

ゴブリンが人を殺しても、襲われたから殺す、いい物を持っていたから殺すという、野蛮な認識しか持っていない。


 そんなゴブリン達の中に、私は生まれた。

冒険者の一人だった母は私が生まれた頃には腕が、足が折れていた。

それは逃げようとしたから逃げないようにしたという理由だけだった。

何故私が幼い頃の記憶を持っているのか分からないが、幼い身体ながら怖いと思った。

その後、母の骨が歪に治癒し掛けたところで、病気になって死んだ。

母はその時まで私を見ては死ねと、いなくなれと、こんな筈じゃなかったと言いながら死んでいった。

死体は他のゴブリンが山の中に捨てた。

直ぐにウルフが喰いに来て骨だけとなった。

やがてその骨はウルフたちの趣向品になったようで毎日囓っていた。

私が大きくなった頃には骨は骨でなく塵と化していた。

それを知ったとき私は何も感じなかった。


 私はゴブリンの中で生きている。

ゴブリンとは違い魔法の適正も弱く、魔力も弱い、更には成長までも遅いため他のゴブリンからは自然と嫌われる事になった。

だけど、私が成長していく段階で美しくなっていく。

でも、それはゴブリンの中での話し。

普通の人から比べたら小人族のように小さく、頭にオーガのような角、顔は普通の人よりも恐い物だ。

でも、私はそれで生きている。

美しかったから集落の長に見初められてなんとか生きていられた。

それでも、何か出来ることがないと食べられない。

私は手先の器用さを用いて様々な道具を作る事にした。

ついでに私は畑を作ることにも専念した。

その御陰でゴブリン達は順調に増えていった。

増えていくほどに活動範囲は増える物で、昔は行かなかった奥の方まで進むことになる。

そこでゴブリンは出会ってしまった。

人という種族に。


 私は生きるために必死だった。

私が狩れないから私は食べれない、そんな事にならないように道具を作って交換した。

成長力の強い植物を見つけては畑に植えて育てる。

育てた物は皆に分けて私が働いていることを示す。

長に嫌われないように嫌なこともやった。

そして、私のお腹には赤ん坊が出来ていた。

母とは違い、私にはそれが嬉しかった。


 お腹がまだ目立たない頃、私は森の奥の方へと進んだ。

今日も新しい植物を見つけて育てるんだ。

その思いを胸に秘めながら。

そこで私は出会う。

母以外の人間と。

 長と他のゴブリン達は獲物だ!と思い襲いかかる。


 ゴブリンが襲いかかると目の前の人間は剣を抜いた。

その抜いた姿をみて、私は逃げた。

長に逃げてもいいと言われていたが初めて私が逃げた。

逃げた理由は、道具が通用しないと本能が訴えたからだ。


 逃げて、逃げて村に着くと他のゴブリン達は私を見て逃げ出した。

わけが分からず辺りを見渡すと、先程あった人間が後ろに立っていた。

 人間がニヤリと笑ったのを見て、腰が抜けてしまった。

それを人間が見ると更に笑い、首に何かを巻き付ける。

その何かが首に巻き付くと、男が何か言った。

言葉の意味は分からなかったが、身体が勝手に動いた。

命令された事が分かった頃には男の後を付いていた。


 それから人間は悠然と歩く。

ゴブリンを殺し、首輪を付けて歩く。

人間が一人来ただけでこの集落は潰れた。

誰もが頼りにしていた長も今は居ない。


ーーーこれが私の犯した罪。

知識を与えたが為に破滅に追い込んだ。

生きるためにやったことが全ての元凶。

私がやらなければ、私が出ていれば後悔ばかり私の胸を締め付けるが、私にはどうすることも出来ない。

私に転機が訪れたのは檻から出たときだった。




 私の前には歪に変形したゴブリンの死体が転がっていた。

人間は私に命令すると身体が勝手に動く。

私の身体は犬のように這いつくばり、口をゴブリンの身体を喰うようにさせられる。

激しい拒絶が身体を襲うが、抵抗など虚しいようで喰わされる。


「ぎぃ」


 必死の抵抗も声が僅かに漏れただけだった。

私は肉を喰らう。

同族の肉を喰らう。

肉を喰らうと声が聞こえる。

その言語はどこか遠い昔で聞いたことのある物。

声はこういった。


『魔力の高まりを確認。これにより条件を解放しました。

 条件の解放; 転生

          魔力の増加

          同族喰らい

          ドラゴン喰らい

 これにより進化が可能となりました。

 介入を確認。進化先はドラゴン・オーガとなります。

 スキル『威圧』を獲得

 スキル『粘土細工師(クレイワーカー)』を獲得

 スキル『竜鱗』を獲得

 スキル『精神汚染耐性』を獲得

 スキル『身体強化』を獲得

 スキル『竜闘』を獲得

 以上のスキルを獲得しました。』


 脳の中に言葉が注がれるように言われる。

聞き終えると身体が思う通りに動くことが分かった。

私はスキルを発動させる。


「『粘土細工師』」


 そう言った後、手に魔力が行き渡るのを確認する。

魔力が行き渡ると地面に触れる。

触れた途端、その地面が柔らかくなる。

土を、石を整形し剣の形にする。


 スキルを使った後、そこに人間がやってくる。

どうやら新しいゴブリンを引き連れてるようだ。

私を見た途端、剣を抜くが、首輪が付いてるのを確認したのか直ぐにしまった。


 私はその隙を剣で突き刺す。

地面にあった中にはガラスも含まれていたため、そのガラスを刃の部分に使い鋭さを上げていた。

私の剣は胸に抵抗なく入っていく。

胸の奥深くまで入ったのを確認すると、私は直ぐに剣を抜いた。

人間の胸から血がどんどんと流れるのを確認すると、またスキルを発動させる。


「『粘土細工師』」


 血液に対して行うと、血は流動体から固体へと変化する。

その血液を遠くへ飛ばすと衣服を剥ぐ。

身体に合わない大きさだが、スキルを使い大きさを整える。


「私はクレイ。粘土細工師のクレイ」


 なんと単調な名前だろう。

私は少し笑いながらそう思う。

でも、名前ができた途端、私の魔力は私を覆い始める。

スキルの能力なのか私の思うように弄れるみたいだ。

近くにあった人間の身体を混ぜる。

陶芸家が幾つもの土を混ぜて良質な陶器を作るように、私は混ぜた。

身体は大きくなっていく。

それと同時に人らしから部分は削ぎ落としていく。

完全な姿になったとき、私の身体は人間と変わらない姿になっていた。

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