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プロモーション ストーリー


果てしないレンガ色の空を、アニー・レミントンは小型ジェットを使って飛行していた。

身体にフィットする白いボディースーツは、情け容赦なく襲う砂塵から、彼女を守っている。


(あれ、何だろ?)


荒野に降り立ったアニーは、そこで朽ち果てた巨塔を目撃する。

それはかつて、「軌道エレベーター」と呼ばれた建造物の、成れの果てだ。


ヘルメットのバイザーを開け、あたりを見渡す。

すると、砂に埋もれた廃墟が、彼女の視界を捉えた。


(そんな・・・)


かつてここが、人が当たり前に暮らしていた街であることを知り、呆然と立ちすくむアニー。


(・・・・・・)


無意識に彼女は、右手に持つ銃型のカメラ『フォトガン』を、”墓標”となった巨塔に向けた・・・


---------


24世紀初頭。


統一政府『ワールドファスト』は、『O・P・D』と呼ばれるワープ航法を用いて、恒星間航法を可能とし、僅か数百年の間に、人類の版図を全銀河系に拡大させた。

そして、圧倒的権力と高度な科学力を行使し、人類を未曾有の繁栄へ導いた。


しかし、繁栄の裏で行った強引な政策が、反抗勢力『パステル・ハージ』の力を強め、『惑星間戦争』を勃発させることになった。


のちに「WF戦役」と呼ばれる戦争は、百年以上に及び、人類を移住した星々で孤立させ、三千年にも及ぶ『暗黒時代』を到来させた。


---------


「もう、しつこいなぁ! わたし味しくないよ! 本当だよ!!」


黒い光沢のある鱗を持つ『翼竜』に追われるアニーは、大空で怒鳴り声を上げた。

だが、翼竜はその鋭いクチバシで、彼女を容赦なく刺そうとする。


『ポー! 早く来て! 今大変なんだよ!』


アニーはメットの通信機で、別行動をとっている”相棒”に連絡を取った。

すると視界に、赤い帽子を被った女性型アンドロイドの「ポー・マーリン」が映る。


『現在地を確認したいので、GPS機能を作動させてください』


ポーは緊張感のない、冷静な口調で言う。


『作動させたから早くきて!』

『予想通り ”また” トラブルを起こしましたね。だからアニーさんを野放しにしたくないんです』

「ごめん、ポー! でもお互い別行動をした方が、仕事の効率が・・・」

『言い訳は結構です。それより、どうせまた”BEM”を撮影しようとして・・・』


アニーはポーの話を聞かず、『フォトガン』を使って翼竜を撮影していた。


『飛んでいる姿がとても綺麗なんだ! あとでポーにも』


”ブチ!” ・・・通信が切れる。


「・・・そうだ、逃げることに専念しなきぁ」


その直後、クチバシが、アニーに襲い掛かる。


「うわぁ! 来るなぁ!!」


翼竜はアニーの叫びなどお構いなく、一瞬して、彼女を挟んだ。


「いぃ、痛い! 痛いからやめてくれる!?」


クチバシがそのまま、華奢な躰を押し潰そうするが、ボディスーツがまたアニーを守ってくれる。

だが、身動きが取れないまま、彼女は”翼竜の巣”に運ばれて行く・・・


---------


孤立化した人類は徐々に衰退し、いつしか文明は中世ヨーロッパ時代のレベルまで低下する。

しかし、地球から観ると、銀河の中心を通って、丁度反対側(逆回転辺境域)にある星。

レヴィ=トウィン宙域。クォーターフォート星系・第三惑星 『リベラブルグ』


この星の人類が、かつての高度な科学力を復活させ、おびただしい数の宇宙船を建造し、衰退化した星々を復興させ、弱肉強食が支配する世界を終わらせた。


---------


アニーは咥えられながら、翼竜を観察したり、何度もフォトガンで翼竜を撮った。

”生物学者”としての性分?が、彼女にそのような行動を取らせているのだ。


「実に興味深い生き物だなぁ・・・ よし、今度の学会で発表しようかな?」


そう言って、頭の中で翼竜の「生態調査レポート」を作成し続けては、修正を加えた。


やがて、断崖絶壁に作られた巣に到着した翼竜は、アニーを乱暴に放り投げ、何処かに飛び去っていく。


「もう! 客人は丁寧に扱ってくれないかな!」


巣は巨大な皿のような形をしていて、集めた木の枝を、泥で塗り固めたモノだった。


「えーと? この泥は翼竜の唾液で・・・」


泥を観察していたお陰で、すぐ傍で安眠している「翼竜の雛」を見つけたのは、それから5分後のことだった。


驚いて声を上げそうになるアニー!


(しかし可愛い寝顔だなぁ・・・ 撮っちゃおうかな!?)


気持ち良さそうに眠る雛を見て、撮りたいをしたいという衝動が起きる。


(よぉぉし・・・)


フォトガンを、そっと雛に向けたとき、それは、ゆっくりと目を開けた。


「・・・や、やぁ、お目覚めかい? 気分はどう?」


アニーは強張った表情で、雛に話かける。


しばらくの沈黙・・・


突然! 雛が奇声を上げながら首を伸ばし、彼女を丸飲みにしようとする!


慌ててアニーは、雛から離れ、小型ジェットを作動させた!  


だが!!


「壊れてる・・・」(冷汗)


「うわぁ! ポー! 早く来て!! このままじゃ私、餌になっちゃうよ!」


恐らくポーは「なってください」と言うはずだ、と確信しながらアニーは、雛に追い回される!


しかも場の悪いことに、飛び去ったはずの翼竜が戻って来る。


「やぁ、おかえり! どうやらあなた、雛のお母さんですね? お父さんは、今どちらです?」


雛の母親も、アニーに襲いかかる!


「うわぁ!!! 最悪だ!!」


徐々に逃げ場を失い、巣の端まで追い詰められたアニー。


うしろは崖っぷち・・・ 落下すれば一巻の終わりである。


「ほんと、バンジージャンプをやるには、うってつけだね・・・」


また冷汗を流したあと、彼女はフォトガンを二匹の翼竜に向け威嚇する。


「こうなったら、やるしか、ないか・・・」


銃を持ったアニーの手が淡く輝き出し、フォトガンの銃口に光球が灯る。


『 Gungnir standby OK! 』 電子音の声が、彼女の耳に響く。


「よし!」


フォトガンの引鉄を弾こうと、指に力を入れる! が! 彼女は銃をおろした。


(・・・やっぱり フォトガンを、武器に使っちゃいけない・・・)


じっとしているアニーに、雛は頭を彼女に直撃させ、ノックバックした彼女はそのまま谷底に落ちて行く。


「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! パパぁぁぁぁ!!」


その時!! 雲を裂きながら、一機の航空機がアニーの方へ向かって来る。


『スレイプニル』 それが、その航空機の名称である!


アニーとポーは、この赤と紫の色を基調とした小型宇宙艇に乗り込み、銀河中を駆け巡っているのだ!


「待ってたよポー!!」

「キャノピーを開きますので、怪我をしないようにしてください」


『スレイプニル』は、キャノピーを開きながらアニーの真下に潜り込む。

それを観たアニーは、両膝を抱えた姿勢を取ながら、空席になっている前座席に落ちる。


「イタァァァ!!」


落下の衝撃が、アニーの身体に広がる。

しかし彼女は、後部座席で操縦をしているポーに苦笑を向けた。


「ナイスキャッチだよ。ポー!」

「良いから早く気絶してください。邪魔です」

「わかった。あとは頼んだ・・・」


そのまま白目を剥いて気絶するアニー。


「本当に律儀な人ですね」


母親の翼竜が『スレイプニル』の後を追って来る。アニーをまだ餌にしようとしているみたいだ。

それを観たポーは、不敵な笑みを浮かべ「着いてこれるかしら?」と、呟く。


航空機のバー二アが激しく火を噴き、翼竜との距離をドンドン引き離して行く。


「クワァァァァァァ!!」


翼竜が咆哮を上げると『スレイプニル』の前方から別の翼竜が現れる。

それは父親の翼竜で、ポーたちがいるコックピットに向かって突進してくる。


しかし、ポーは冷静に、速度を落とすことなく躱す。


「ポーを、止めることは出来ませんわよ」


父親は母親と合流。今度は二匹で『スレイプニル』を追った。


「クワァァァァ!!!」


逃走する『スレイプニル』と、それを追う翼竜夫婦の、追跡劇が続く。

が、そのうち翼竜たちの速度が急に上がり、航空機の横に並んだ。


翼竜たちは、強い偏西風を利用したのだ。


当然ポーも、偏西風の中に入り、速度を上昇させようとするが、母親の翼竜がそれを邪魔する。


「やってくれるわね・・・」


やがて『スレイプニル』は、翼竜の巧みな動きによって、雪が積もる山脈地帯の中に追いやられた。


「!!」


ポーは、周囲の崖や高山を、無駄のない動きで避けながら飛行する。


「・・・・・・」


翼竜たちの動きを分析しながら、ポーは、ふと気付く。


「スレイプニルを、崖に激突させるのね・・・ ふーん、こんがり焼けた餌にする気かしら?」


徐々に、ポーの視界に大きな崖が広がる。

このまま行けば、間違いなく衝突する。

しかも、『スレイプニル』は翼竜たちが壁になって、コース変更が出来ない!


そう、追い込まている!


「ふふふ・・・」


にも関わらず、ポーは慌てることなく、急ブレーレーキをかけた。


『スレイプニル』壁の手前で突然停止!!!


予期せぬ動きに、二匹の翼竜は呆気に取られたのか? そのまま崖に激突する!


その間ポーは、瞬時に『スレイプニル』を起動させ、機体をUターンさせたあと、急上昇で、空に昇って行く!


「ポー、また無茶な操縦をしたね。お陰で目が醒めたよ・・・」


目を覚ましたアニーが、顔面蒼白の顔で言った。


満身創痍の翼竜たちは、まだ『スレイプニル』を追っていたが、飛ぶだけで精一杯だった。

それを遠くで、コックピットから観ていたアニーは、悲しい瞳を翼竜に向けた。



座席の横にある引き出しから、ポットを取り出し振った。


「カラかぁ・・ 早く”コルドバルーゴ”に行って、リブさんのコーヒーを飲みたいなぁ・・・」

「なら、このまま大気圏に突入しますか? 任務はアニーさんが遊んでいる間に、ポーが済ませました」

「そう・・・ お願い・・・」


『スレイプニル』は成層圏を超え、翼竜の住む星をあとにして、一路「リベラブルグ」へ向かった。



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