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妖怪転生  作者: 骸骨紳士
狂気の淵
3/13

断罪の刃

相変わらずの表現力のなさで分かり難い部分が多々あると思いますがその際はご指摘いただければ幸いです。

深夜零時、草木も眠り闇が世界を支配するこの時間帯に俺はある場所へと向かって行った。様々な家が立ち並ぶ住宅街だ。その中で記憶を頼りに一つの家を探している。もう二年以上も行っていないので、少し記憶があやふやだったが、何とか見つける事が出来た。元々実家で暮らすのが嫌で、高校を卒業後、すぐに就職をして別の所で一人暮らしをしていたので、この場所に来ること自体あれから無かったわけだが、こうしてまた足を運ぶことになるとは、昔の俺なら考えもしなかっただろう。だがこれでここに来るのも、あいつらの顔を見るのも最後になるかと思うと清清する。俺は湧き上がる狂気じみた興奮を感じながら、黒色に塗装された屋根の家を見た。ここは十八年間俺を虐待し続けてきた俺の両親が住んでいる家だ。鍵なんてとっくに捨ててしまっているが今の俺には関係ないことだ。俺は赤茶色の扉のドアノブを掴み力いっぱい引っ張るように回した。すると鈍い音とともにドアノブが外れ扉が開いた。中に入るとそこには強盗でも侵入したのかというくらい雑然とした光景が広がっていた。家の外観だけは立派なのに相変わらずだなと思い、リビングへと足を踏み入れる。異変に気が付いたのか、誰かが二階から駆け下りてくる音がする。降りてきた人物に目をやると、それは父親だった。向こうは暗闇の中で誰が来訪したのか分からないでいるといった様子だった。


「だ、誰だ!何者だ貴様!」


「やだなお父様、可愛い一人息子の顔を忘れるなんて」


「!?お、お前光一か!?い、いったいどういう了見だ!こんな夜中に押し入るような真似しやがって!」


父親は侵入者が俺だとわかるや否や血相を変え、憤怒の声を上げる。しかし、壊れた家の扉を見て一瞬で顔色を変えた。


「と、扉が、まさか光一、お前がやったというのか!?」


「それ以外誰がいるというのですか?いよいよボケでも始まりましたか?お父様」


俺は皮肉たっぷりに、子供の頃から躾られていた言葉遣いをあえて使い、狂気の笑みを浮かべていた。あの傍若無人だった父親が今、怒りから恐怖の色へと表情を変えているのが、可笑しくて仕方なかった。そして、今この瞬間俺の悲願であった復讐劇が始まると思うと心底ゾクゾクした。俺はゆらゆらと左右に揺れながら、ゆっくりと父親に近づいていく。さあ、まずはコイツから料理してやろう。


「よ、寄るな!これ以上近づいてみろ、今度はお前を殺すぞ」


父親の言っている事が正直理解出来なかった。この状況で俺を殺すとのたまえるとは、いやはや去勢にしても笑えないな。殺されるのがどっちかまだ理解できていないようだ。俺は父親の言葉を無視してさらに近づき父親の目の前まで行った所で歩みを止める。


「くっ、このクソガキが!」


吐き捨てるようにそう言い放ち、右手で殴り掛かってくる。俺はそれを冷静に捉え、逆に父親の右の拳を左手で受け止める。


「なっ!?」


驚愕のあまり目が飛び出さんばかりに見開き自分の右手を見やる父親を見て、そのまま掴んだ右手を握り潰し、軽く右に捻った。その瞬間ゴキッという鈍い音を上げて父親の右手はあっさりと折れた。「ぐあぁぁ!」と言う呻き声を上げて、右手を抑えている所に左足で腹部を蹴り飛ばし床に転がした。


「うぐぁあ!ぐふぅ・・・」


「どうしたんですかお父様。これでもまだ手加減しているというのに、そんなに悶えて。まだまだこれからですよ」


床に転がっている父親にゆっくりと近づき口端を吊り上げる。


「光・・・一・・・ぐっ!お、俺が悪かった。だ、だからゆ、赦してくれ」


勝てないと分かったのか、身悶えしながら命乞いの台詞を力無さ気に吐き出す。だが当然俺は赦す気は毛頭無い。コイツが今までしてきたことを考えていったい誰が赦すと言うのだ。俺はそんなふざけた事を言っている父親の頭を踏みつけもう一度腹部を蹴りボールの様に床の上で転がした。その後父親の髪を左手で掴み持ち上げる。仕事が休みだったのか無精髭を伸ばした、ごつごつした顔を恐怖で滲ませているのが滑稽に見えてきた。そのまま髪を掴み無理やり立たせている父親の顔面に右拳をめり込ませる。それと同時に、左手を放した事で父親の体は宙を舞って壁に激突する。


「ぁう・・・ぃぐぅ・・・」


すでに声にならない音が口から漏れていてまともに喋る事も出来ない様だ。その姿を見ていい気味だと思いつつ少し名残惜しさを残しながら止めを刺す準備を始める。右手に意識を集中させて俺の新しい技を発動させる。


「顕現せよ!断罪の刃(シザークロス)!」


俺がそう叫ぶと、右手の所に巨大なはさみの形をした剣が姿を現す。これはヘルディアに教わった妖力を物質化させるという技術の応用で、自分がイメージした物を無から作り出すというものだ。付け焼刃で成功するか不安があったが、無事に成功し安堵すると同時に笑いが漏れた。これほどまで自分のイメージに忠実に再現できるとは思ってもいなかったからだ。俺は巨大なはさみの剣を父親の目の前に突き出す。


「がはぁ・・・ぐぅ・・・た、たすけてく・・・れ」


父親は最後の力を振り絞って、何とか言葉を発し再度命乞いをする。これが子供の頃畏怖を感じていた相手とは到底思えない程情けない顔をしていた。さて、ここで殺してしまうのは、本当に名残惜しい、もっといたぶってから、殺したいところだがこれ以上騒ぎ立てると母親あいつが目を覚ましてしまう。そうなったらせっかく計画していた手土産で驚かすというサプライズが駄目になってしまう。


「じゃあな、親父」


最後は素に戻って、お別れの言葉を言い放ち断罪の刃(シザークロス)を握り締め、父親の首元めがけて横薙ぎに振るい、首を斬り落とした。斬ると同時に大量の血が噴き出し俺の体に薄汚れたどす黒い血がべったりとついた。

さて、次はいよいよ母親あいつの番だ。俺は久しぶりに会う母親の為に手土産を手にし、下の階でこんな事が起きているというのに悠長に寝ていられる神経の図太い人間の元へ行く為に、階段をゆっくりと上がっていく。

二階の母親の部屋の前に着いたところで、部屋のドアを蹴破り侵入する。


「ふぁ、んー、どうしたのあなた。なにかあったの?」


まさかここまでしておいて、父親だと勘違いしているとは、どんだけ頭ン中お花畑なんだよコイツ。寝ぼけている母親を見つめ、子供の頃は感じなかったが見た目だけは綺麗な母親なんだな。少しウェーブのかかったセミロングの髪に、整った顔立ち、そういえばコイツは外面だけは気にするタイプだから美容には気を使っていたのかと納得しつつ、母親に話しかける。


「お久しぶりですね、お母様。元気にしていましたか?」


「んぅ、ん?もしかして光一なの?いったい今更何の用なのよ」


まだ寝ぼけているらしく、覇気のない感じで俺を睨み付けてくる。そんな母親に一気に目が覚めるお土産を渡してやろう。


「いえ、お母様には幼い頃からお世話になっていたので、お礼がしたくて参った次第です。こちらお土産です。どうぞ受け取ってください」


そう言って俺が投げ渡したのは、先ほど切り落とした父親の首だった。それを見た瞬間一気に血の気が引いていく様子が見て取れた。


「そ、そんな!?あ、あなた!?ど、どうして、なんで!?まさか光一、あんたの仕業なの?どうしてこんな事を!?」


半ば半狂乱になって、父親の首を抱き締め俺に問いただしてくる。


「?先ほど理由は説明したではないですか。昔のお礼だと」


「!?」


ようやく状況を把握したらしく、目を見開き口をわなわなと震えさせ、抱き締めていた父親の首をゴロンと床に落とした。今更後悔してももう遅い。俺の怒りが、恨みがこんなもの程度で収まるわけがない。


「顕現せよ!断罪の刃(シザークロス)


俺は再び断罪の刃(シザークロス)を作り出し。母親に近づく。途中で母親が落とした手土産の首が転がっていたので、右に蹴り飛ばし距離を縮める。


「まって!ごめんなさい!赦してちょうだい!私達が悪かったわ。いつもご近所付き合いとかで、ストレスが溜まってて、ついあなたにあたってしまっただけで!」


「お母様はそうやって許しを乞うた俺を、一度でも許しましたか?そんなことないですよね。なら俺もついストレスが溜まって殺したって事でお母様は許してくれるんですか?」


「ご、ごめんなさい!まさかそこまで光一を追い詰めていたなんて思ってもいなかったの!謝るからお願い!私だけは赦して!」


母親は発狂し、絶叫し、泣き喚いていた。その美しい姿に似つかわしくない、なんとも無様な顔で自分の息子に命乞いをしている。そこまで追い詰めているとは思わなかった?自分だけは助かりたい?なんて都合の良い事言っていやがるんだこのあまは、どこまでもふざけた夫婦だ。こんな奴らと同じ血が流れていると思うと虫唾が走る。だがそれも今日までだ、俺はコイツらに復讐して完全に縁を断ち切る。

必死に弁明している母親を無視して俺は思いっきり床を蹴って、母親との距離を一気に詰め、断罪の刃(シザークロス)を母親の腹に突き刺す。


「がはっ!ぐぅう・・・。おね・・・がい・・・もう・・・ゆるして」


血反吐を吐きながらまだそんな甘い事を言っている馬鹿な母親に、引導を渡してやるベく巨大鋏きょだいはさみの柄(通常のはさみでいう指穴)を両手で掴み、俺は満面の笑みを浮かべて母親に最後の言葉を言う。


「丁重にお断りする」


最後の言葉を発すると同時に、巨大鋏きょだいはさみの柄を思いっきり開き母親の腹部から横に体を両断した。大量の血飛沫を上げ上体が床に落ちる。しかしまだ上半身だけで生きている様で、耳障りな呻き声を上げて俺の右足を掴んでくる。しぶとさだけは誰にも負けないんじゃないかと思うほどの執念を見せているが、もう声も出ないらしい口からは血をゴボゴボと流しているだけだった。俺は掴んでいる母親の右手を振り払い踏みつけた後、大きく開いた断罪の刃(シザークロス)を閉じ、もう一度右手で握り直し。母親の頭頂部に突き刺し完全に止めを刺す。これで文字通り家族の縁は完全に切れた。この場所にもう思い残す事は無い。俺は断罪の刃(シザークロス)を引き抜き物質化の解除を行い、家を出た。

家を出た外には何故かヘルディアの姿があった。そのどこか申し訳なさそうな表情に俺は少し戸惑いつつ話しかける。


「どうしたヘルディア、何でお前がそんな顔をするんだ。と言うかどうして俺の居場所が分かった」


「・・・。心配になって後をつけてきたから、ごめんね、本当は私がやるつもりだったのに、まだ妖怪になって間もない貴方にこんな事させちゃって」


「どういう意味だ?俺は自分から望んであいつ等に復讐しに来たんだ。後悔なんてしてないし、大体お前が謝る事なんて一つもないだろ」


「ううん、悪いのは私、実は私は悪い人間に報復をする為に今まで生きてきた。私も本当は元は人間だったんだけど、わけあって人間を恨むようになって、警察とかもさばけない様な悪人を始末する為妖怪になったの」


物憂げに話し始めるヘルディアに俺は何も言えずただ黙って話を聞くことしかできなかった。


「私は妖怪になってからもう百年くらい経っているんだけど、その間ずっと一人で過ごして来たの。そんな時に私と似たをした貴方を見つけて、この人となら一緒にやっていけるかもと思ったんだけど、予想外のあなたの才能を見て少し調子に乗っちゃって、まだ力も蓄えられていない貴方が、まだこの世界のルールを知らない貴方がこんな事をしたらあいつ等に、妖怪治安維持管理委員の連中に目をつけられる可能性を考えていなかった」


「妖怪治安維持管理委員?なんだそれ」


俺が疑問を投げかけるとヘルディアはより一層申し訳なさそうに話し始めた。先ず妖怪治安維持管理委員と言うのは文字通り、妖怪の世界での治安を維持する為に存在する委員らしく、妖怪が住む場所はこの世界の裏側に位置し、言わば同じ境界線上に存在するらしい。そこには魔界と言われる所謂異世界が存在しそこに妖怪や悪魔が住んでいると言う。その魔界では、人間を食料にしている者も存在するという理由と、大昔に人魔大戦というのが勃発しその戦いで妖魔族が人間に負けた際に、一つの盟約を誓わされたという。それが、罪人以外の人間を襲ってはいけないと言う盟約であった。その盟約もあり妖魔族は無闇に人間を襲う事が出来なくなったのだという。だがそれに対して不満を覚える者も多くいて、それを押さえつけるために存在しているのが、その妖怪治安維持管理委員だという。そしてその餌食になりやすいのは妖怪になりたてで、そのルールを知らずに力にモノを言わせて無差別に人間を襲う奴等だと言う。だからヘルディアは妖怪としてはまだ未熟な俺にではなくヘルディアが俺の両親に粛清を下そうとしていたらしい。妖怪治安維持管理委員の中には、魔界最強とまで言われる手練れがいると言う事をヘルディアは風の噂で聞いていたらしく、そいつを警戒して俺にはしばらく動かず力を蓄えてから悪い人間を始末すると言うヘルディアの仕事を手伝って欲しかったらしい。


「だがヘルディア、それっておかしくないか。だって罪人は襲ってもいい盟約になっているんだろう?なら何故俺がそいつらに目をつけられる可能性があるんだ?」


「さっき教えた、魔界最強クラスの管理委員がどうやら人間に情があるって噂なの。実際の所は謎に隠されている部分が多いんだけど、それに人間を食料にしている奴もいるって言ったでしょ?下手に罪人を殺されると困る妖怪もいるから管理委員が動くっていう事もあるのよ。私は教えてなかったけど吸血族だから、襲ってもある程度は正当な理由が付くのよ」


「吸血族か・・・。ある意味吸血鬼みたいな者か、じゃあ俺は何に属するんだ?」


「貴方の場合は、心食族しんしょくぞくね。人間を襲って食べるのではなく、人間の恐怖心を糧に妖力を蓄えていくタイプの種族ね」


なるほどその話を聞いて合点がいった、最初に父親を襲った時に、相手の恐怖心で妖力を増幅させていたおかげで、妖力の物質化がすんなりと行えたのか。


「兎に角一度私の部屋に戻りましょう。これ以上ここでの立ち話もなんだし」


俺はその言葉に小さく頷き、ヘルディアの後をつけこの場を後にした。その際に誰かの気配を感じたような気がするが、恐らく気のせいだろう。俺とヘルディアは妖力で宙に浮き、空に留まりそのまま少しの間を空けて、ヘルディアが魔界へ続く道を作り出し、俺達は魔界にあるヘルディアの家へと帰っていった。

今回出てきた単語の妖魔族は妖怪と魔族(悪魔)を総称したものです。

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