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妖怪転生  作者: 骸骨紳士
プロローグ
1/13

妖怪側の瞳

まともな作品投稿はこれが初めてですので、稚拙な所が多いと思います。またこの作品は残酷な描写が多くでできますので苦手な方はご注意ください。

またこの作品はフィクションであり、実在する人物団体とは大いに関係ありません。

事実は小説より奇なり。そんな言葉を発した奴に物申したくなるほど淡白で面白みのない日常。それどころか願ってもいない不運は高確率で舞い込むが、切望した希望は己への失望へと叩き落される毎日。


 機械的に決められた業務をこなし、上司は勿論同僚にさえ常にこき使われ手柄は横から奪取される。そして当然の様に面倒事や『他人の失敗』を押し付けられるのが人間社会の常識だと植え付けられた。とどのつまり、そう言う奴は世渡りが上手で、俺の様な奴はどこまでも他人に利用される運命なのだと、何時しか悟ったように考えていた。


いっそのこと死ねればどれだけ楽か、どうせ俺の死で悲しむものは誰一人としていない。そうそれが例え血を分けた家族だったとしても…。

ただ、自殺は正直どの方法も試したいとは思わない。俺にその覚悟があるならとっくの昔に実行し、人生から辞退してるところだ。

「どうせなら不慮の事故とかで死ねればな…」

ぽつりと独り言を落とす。既に夜の帳が垂れ下がり、落ち着いた闇の中を街頭の光と微かに差し込む建物の窓明かりが退勤で疲れ切った社会人や学生達を照らしていた。

すると不意に地面を大きく蹴り付ける足音が近付く。


「う、うわぁーー!?た、助けてくれーー!」


裏路地の方から耳をつんざく男の悲鳴が聞こえてきた。

正直面倒事に関わっている余裕なんてない。ましてや何の取り柄もない俺に助けを求めている人間を助けてやれるだけの力など微塵も持ち合わせていない。

しかし不思議な事に俺の足は悲鳴のした方角へと動き出していた。

向かった先は狭く、余程の理由がない限り通る訳のない場所であった。目を向けた方向から先程の声の主と思われる見た目三十代後半の男性が必至な形相で走ってきた。

俺の眼前まで来たところで靴を地面に擦らせ急ブレーキをかけた。息も絶え絶え、顔面蒼白のその男は呼吸が落ち着くのを待たず言葉を告げようと口を動かす。


「あ、あんた何してんだ!こっちには化け物が居るんだぞ!早くにげ……」


「あら、私の事を化け物呼ばわりなんて失礼しちゃうわ」


一瞬の出来事だった。

男は俺の目の前で、背面から大量の血飛沫の花弁を散らし地に前のめりに堕ちた。

体は須臾しゅゆの合間(せい)の余韻を残した後、暗い地面を紅い血で彩り完全に息絶えた。

落としていた視線を上げる。そこには一人の少女がその右手に血を(すく)っていた。

少女の見た目は16か17才位。夜風にサラサラとなびく紅色の髪はツーサイドアップに纏められている。何よりも印象的なのが深紅のゴスロリスカートだ。ヘッドドレスも併せてつけているため幼さと怪しさが際立っているように見える。

辺りを見渡せば他にも男達の死体が何体も転がっていた。おかげで周囲は鉄の臭いが充満しており、思わず花を覆いたくなる強烈さだ。

そして今その少女の深紅の瞳は確実に俺を捕らえていた。状況から考えて次に殺されるのは俺だ。まして相手は『人ならざる力』で男達を葬ったのだ。逃げようもない。

だというのに俺は、自分でも驚くほどに落ち着いていた。


「…」


俺はその少女を黙って見つめた。


「あら?貴方は私を怖がらないのね。恐怖で声も出ないという風には見えないわ。不思議な人間も居たものね」


クスクス、と不敵に嗤ってこちらへとゆっくり近付いてくる。


「さぁ、どう料理してあげようかしら。」


手についた血をペロッと舐めながら少女はゆったりと間合いを詰める。


「そうだな…出来れば苦しまないように殺してくれないか?」


力無く、俺はそう告げた。助からないのは明白。みっともなく命乞いをして、まかり間違って殺されなかったとしても、そうまでする価値がこの世界に見いだせない。だったら潔く死を受け入れたほうがいい。


「ふーん、貴方は命乞いはしないのね。どうしてかしら?死ぬのが怖くないの?」


「別に・・・。寧ろ嬉しいくらいだ。やっと地獄から解放されるんだ」


痛いのなんて一瞬だろうという安直な希望的観測。とは言ってもやはり恐怖が全くないわけではなく、無意識に目を強く瞑る。だが何枠か置いても体に何の変化も起きない。瞼をゆっくりと開いて確認する。すると少女は俺の想いとは裏腹に吟味するように見つめていた。

物珍しいものを見るかのようなその紅玉ルビーの瞳を一際輝かせ、いっそ満天に浮かぶ星を思わせるような光を放っていた。


「アハハハ、貴方、面白いわ。」


!? 突然何を言い出すんだコイツは?

俺が…面白い?どういう意味だ。


「貴方、気に入ったわ。その、人間よりも妖怪(私達)側の瞳ね」


妖怪側の?余計に意味がわからない。俺が言葉に窮しているうちに話を続ける。


「どう?貴方が望むなら生まれ直させてあげても良いけど、どうする?」

状況の理解が追いつかず思考が瞬間停止する。生まれ変わらせる?どうやって?何のために?

呆けたその顔は大層間抜けだったことだろう。俺は訳も分からず唾棄するように少女に告げる。


「俺は別にこんな世界で生きたい訳じゃない。大体、生まれ変わって俺に何の特がある?」


「あるわよ。貴方の瞳を見れば分かるわ。確かに今は光を失ってしまっているかもしれない。けどそれはまだ完全に無くなっている訳じゃない。きっとこのまま不信感を抱いたまま『本当の自分』を押し殺したままじゃ本当に『本来のあなた』が死んじゃうわよ」


こちらの心を見透かしたように質問してくる。


「生まれ変われば貴方の好きなように生きることができるわよ。それって魅力的じゃない?」


「…」


俺は暫く考えた。その提案はまさしく悪魔の手招きそのものだったからだ。だがこの少女の言っていることは強ち間違っていない。もし、自分の好きなように生きることが出来れば、これ程幸せな事はないだろう。

然し、生まれ変わっても現状が変わらない可能性も十分に含んでいる。俺は今まで両親や周りの人間からも理解されず、一方的に考えを押し付けられていた。間違っている、そう思っている事ですら権力の前では何の効力も持たない。もし転生できれば、この呪縛から解放されるのだろうか。正しいと思った事を突き通すのに力が必要だ。そしてそれをどれだけ望んでいた事か・・・。こいつは、この少女はそんな俺の子供じみた考えすら見透かしていたのだろうか。先程までの不気味な笑みとは違う、どこか憎めないあどけない笑顔浮かべ頭をユラユラと左右に揺らしている。

―――どのみちこのまま過ごしていても、現状は変わらないのならコイツの誘いに乗ってみるのも一興かもしれないな―――。考えを纏めて俺は決心をつけるために大きく一息つけて、自分の意思を言葉にする。


「じゃあ、俺を生まれ変わらせてくれ」


俺はさしのべられた悪魔、いや妖怪の手を取った。


「フフ、そうこなくっちゃね。それじゃあ転生の儀を行おっか」


少女はそう言って満面に笑みを浮かべていた。まるで俺がその選択をすることがわかっていたかのように。


「あ、因みに私はヘルディアって言うの貴方の名前は?」


「風間光一だ」


「カザマコウイチね、これから宜しくね」


さっきまで人を殺していたとは思えないほど人懐っこい雰囲気で話しかけてくるのに少女、もといヘルディアに軽い違和感を覚えたが、彼女いない歴=年齢の俺としては少しドキドキするところもある。


「ち、因みに転生の儀ってやつは具体的に何をするんだ?」


「そうね…簡単に言うとキスをする事で貴方も私達と同じになれるのだけど」


「キ、キス!?そんな方法で生まれ変われるのか?と言うかそうなると心の準備が…」


「顔真っ赤にしちゃって、可愛い❤コウイチってもしかして童貞?」


「うぐっ」


図星を突かれ間の抜けた声が出る。

ど、童貞ちゃうわ!ただこの20年間、女子に縁がなかっただけで。


「ほら、恥ずかしがってないで、目を瞑って…」


「う、わ、解ったよ」


かなり緊張しながら力一杯目を瞑った。


「もう、ちゃんと力抜いて」


ヘルディアのか細い右手が愛撫するように俺の頬を覆う。

少し血生臭いのが気になって少し緊張が解けた気がする。


「ん…」


柔らかい唇が可愛らしい音をたてて俺の唇に引っ付き、離れた。


「はい、これで転生の儀は終わりこれから貴方は妖怪として生きていくことになるわ」


「え!?これで本当に終わり!?特に体に変化が感じられないんだが?」


「えぇ、これで終わりよ。突然力が溢れ出すと言うことが無いから実感が沸かないのも無理ないわね。一

応そこの店の窓ガラスで確認してみたら?」


俺はヘルディアに言われるがまま窓ガラスを見つめた。そこには今まで通りの冴えない黒髪で、脆弱な肉付きの体が写っているだけだった。ただ一つ変化があったのは瞳の色が黒からヘルディアと同じ紅玉ルビーになっていたことだ。


「もしかして、変化はこれだけか?」


「いいえ、通常状態だと確かにそれだけだけど、状況に応じて体はある程度変化させられるのよ。例えば、そうね、さっき私がやっていた斬鉄爪ざんてっそうは自分の爪に力を集中させて、爪を短剣みたく伸ばし相手を切り裂く。そう言ったことが出来るようになるわね」


何故かどこかで聞いたことがあるような内容な技名だな・・・。きっと気にしたら負けだッ!

俺はヘルディアの言葉を思い出しながら、意識を爪に集中させた。最初はなかなか上手くいかなかったが、徐々に馴れてきた。爪に力が集中していると言うのを感じられるようになり、遂に俺の爪は通常よりも鋭く尖った。斬鉄爪の威力を試す為に近くの店の壁に向かって思いっきり右手を振るった。振り終わると同時に、破砕音と共に壁に大きな爪の傷が刻まれた。


「おぉ、す、すげぇ!」


思わず感嘆の声を上げてしまうほどだった。見た目に変化は殆どないが本当に俺は妖怪に転生できたんだな。俺が感動していると、ヘルディアは少し驚いた表情でこちらを見ていた。


「凄いわね、こんな短時間で斬鉄爪を使えるようになるなんて。やっぱり私の見立てに狂いは無かったわ」


「こいつはすげぇな」


硬質なアスファルトの壁をいとも簡単に引き裂いた自分の手をまじまじと見る。


「それだけの才があれば自分で新しい技を編み出せるはずよ」


「俺自身で技を?」


そう言われると少しワクワクするな。自分だけの技か。どんなのが良いかな。


「良い顔になったわね。さっきまでの死んだ顔より、ずっと生き生きしてるわ。ふふ、これからが楽しみねコウイチ」


「あぁ、そうだな」


半ば生返事で一瞥もくれずに返す。俺は人間を辞め、強靭な肉体である妖怪に転生したという実感を身一杯に感じていた。それと同時に心の淵から湧き上がるドス黒い何かを感じた。

それの正体は考えずともわかった。俺はそのまま意識を狂気の化身へと委ねることにした。

それは同時に――――――



――――――風間光一の実質的な死を意味していた――――――

自分でも何度か見直しましたが、おかしな点がたくさんあると思いますので、もしお読みいただけたらご指摘の感想などをしていただけると、とてもうれしい限りです。

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