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フィフス  作者: 北の大地
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二十七話

 目の前の男は、確実に何か下心があって俺に協力を持ちかけている。はっきり言ってあまり乗りたくない誘いだ。だが手詰まりと言っていい現状で俺にできることは、この男から情報を引き出すことくらいだ。となればこの誘い、簡単に切って捨てる訳にもいかない。男が嘘をついているという可能性も考えられるが、それにしては、やけに自信のある物言いだったのが気になるが……。


「あんたにあの子の居場所が分かる、その根拠は何だ」


「ただの勘……と言いたいところだが、それじゃてめぇは納得しねぇだろうな」


「勿論だ」


 それだけであったなら、俺がこの男を相手にする必要はない。こいつは、真面目に答える気があるのだろうか? 俺が睨みつけると、男は仕方がないという風に肩をすくめた。


「あんま言いたくなかったが……まぁいい。これを見ろ」


 言いながら、男はガサゴソと懐を漁る。その動作に思わず警戒する俺達だったが、しかしそれは杞憂に終わった。やがて男が取り出したのは、小さな茶色い瓶であった。


「砂の詰まったただの小瓶に見えるが」


「そうじゃねぇよく見ろ。中の砂だ」


「?」


 言われて目を凝らす。よくよく見てみると、瓶の中の砂が微かに蠢いていた。もしや砂の中に何かいるのか?そう思って聞けば、男は無言で首を振った。


「やっぱ実際に見せなきゃ分かんねぇか……チッ」


 俺が理解に苦しんでいると、舌打ちした男がパッと小瓶の栓を抜いた。途端、中の砂が勢いよく溢れ出す。流れ出した砂はやがてそのすべてが男の手のひらに収まると、その場でむくりと砂山の如く盛り上がっ。というか、砂が勝手に動いている。茶色いそれらが手のひらの上でもぞもぞと蠢くその光景は……はっきり言って、かなり気持ち悪かった。

 見れば、セシルも口に手を当てて不快そうな表情をしている。俺は思ったことを正直に口に出した。


「気持ち悪いな……なんだこれは?」


「あ゛?見てわかんねぇのかよ。砂魔物だよ」


「砂魔物!?……嘘だろ、これがか?」


砂魔物といえば、普通人間くらいのサイズがある大きな魔物だ。こんな小瓶に入るような小さいのが存在するなんて、聞いたこともない。それに


「砂魔物には幼体なんていない筈だ。あれは大量の砂があってはじめて生まれる魔物だと聞いている」


 砂が魔力を帯びて意思を持った姿、それこそが砂魔物だ。だがその発生には避けれない条件がある。それが砂の量だ。魔力の受け皿の関係上、ある程度まとまった量の砂がなければ、そもそも砂魔物は発生しない。やつらが砂漠にばかり生息しているのもそのだめだ。


「……ああ、その通りだ。だから造った」

「「造った!?」」


 俺とセシルの声が被る。それほどに驚くべき事実だった。魔物を人工的に造る――それ自体は別に珍しくはあっても不可能ではない。だがそれにしても、いくら土魔法の遣い手とはいえこの男が、それにどうやって……?

 だが男はこれ以上は話す気がないとでもいうように再び舌打ちをすると、「話が逸れたな」と言って、俺達によく見えるよう砂魔物の乗った手のひらを掲げた。


「こいつには本体と分離した砂が戻る性質がある。原理とかは訊くんじゃねぇぞ。そんで、あのガキの髪には前に俺が仕込んだ砂粒がまだ残ってる……あとは分かるな?要はこいつが居りゃ砂を仕込んだ人間の居場所が分かんだよ」


 なんというかそれは随分と便利な、それでいて空恐ろしい代物だ。この砂魔物の存在は、この男にとっては貴重な情報でもあるだろうに、それを惜しげもなく俺達に披露するとは……だがいくら考えたところで男の目的は見えないし、この男もそう易々と尻尾は出さないだろう。そんなことよりも

 

「……つまり、あの子の居場所が分かるんだな?」


「だからそう言ってんだろ。これで納得したか?」


 俺は男の目をしっかりと見つめて返事をする。


「根拠は分かった。あんたと行こう」


 こいつの目的がなんであれ、今はその企みごと利用すべきだ。あの子を……ラガーを、なんとしても追うために。俺は決意の代わりにそっと拳を握りしめた。


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