二十四話
二十二、二十三話改稿しました。(2/4)
俺は全力で草原を駆けていた。だがしかし影の方も走っているのか、かなりの速さで橋へと近づいている。
――このままじゃ見失って……!
俺は必死で足を動かしながらも、もっとスピードを出せないか考える。この肉体で出せる限界の速度を――ぐっと拳に力が入る。その時、突然体がふわり浮いたような気がした。
「――へっ?」
だが、それは一瞬のことで、思わずそのことに気を取られた俺は、次の瞬間バランスを崩して地面に倒れ込んでしまう。
「!っ!」
――しまった!
「ゲイルさん!?」
後方からセシルの声が聞こえる。すぐに立ち上がろうとして、俺は体を庇った方の腕に軽い痛みを覚えた。
「くっ……!」
なんとか急いで体を起こすと、すぐそばまでセシルが駆け寄ってくる音がする。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ……それより、あの人影は」
橋の方に目をやる。丁度橋へとさしかかっていた黒い影は、そのまま彼方へと遠ざかっていく。
「まずい!橋の向こうに消えるぞ!」
急いで追いかければと、俺はすぐさま立ち上がった。
「セシル、まだ走れるか」
「え、ええ……でも」
セシルが一瞬口ごもったのを不審に思って振り返れば、彼女の顔は橋から離れた、街道の反対側を向いていた。何かあったのかと俺もそちらに顔を向ける。
「あっ……!」
また一人、ライール側から街道を駆けてくる人影があった。よくよく見れば、体格のいい男性のようである。
「またあちらから走ってくる人が……もしかしたら、さっきの人影と何か関係があるのかも」
「……あの人に話を聞いてみるか」
街道にはだいぶ近づいている。このまま真っ直ぐ走って進めば、あの人物にうまく合流できそうだ。
「行こう」
そう言って俺は駆け出す。もしかしたら、彼は何の関係もない人物かもしれない。だが今は藁にも縋る思いだった。それに、先ほどの人影といい、どうしてあんなに走っているのか少し気にかかる。
――何か聞き出せるといいがな
少しでもリック達に繋がる手掛かりが得られればと、俺は走ってくる男へ僅かな期待の視線を向けた。
男――マークは苛立っていた。マークの心の片隅には以前から、少年がいつか組織を裏切るであろう予感が薄々とあった。だがそれでも彼が普段から少年を放っておいたのは、どうせ一人では何もできまいとその可能性を軽視していたからだ。……そしてなにより、少年が他人に心を開くことなど絶対にあり得ないと、自分が確信していたからだった。
――「お嬢ちゃん」の癖に調子乗りやがって……!
人間嫌いな少年は、消して誰にも心を開くことがない。そのことはずっと少年の近くにいたマークが一番よく知っていた。そして少年が、その孤独故に組織に甘んじて飼われていたことも。そんな少年の心を突き動かしたのは、多分――
――あのウサギ……かぁ?
マークは少年と共にいたあの小さな生き物を思い出す。そのウサギに一杯食わされたという事実に、マークの苛立ちは益々募った。
――クソガキがっ!
マークはドンッ!と地面を強く蹴った。ひたすらに足を動かして大地を駆け、少年達を追う。だがそんな彼の行く手に、突然、二つの人影が映った。
「……あ?」
近づくと共に、段々とその姿がはっきりしてくる。一組の男女が、獲物を追うマークの行く手を阻むようにして街道に立っていた。マークは舌打ちをしてその二人を無視しようとしたが――
「おい、待ってくれ」
男の方が物凄い速さで手を伸ばし、マークの腕を掴む。一瞬の出来事だった。走り抜けようとしたマークは腕を引っ張られ、思わず前につんのめる。
「――っ!」
「おっ……と、すまない!ところで、ちょっと尋ねたいことがあるんだが」
「……ああ?」
体勢を立て直したマークは、ありったけの怒気を孕んだ目で男の方を睨みつけた。




