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フィフス  作者: 北の大地
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二十三話

 転移魔法を使うことに決めたセシルは、まず自らの鞄の中からカサカサに乾いた布のようなものを取り出し、それをゆっくりと広げはじめた。


「それは、このあたりの地図か?随分と古びているようだが……」


「はい、おばあちゃんが持たせてくれました。行ったことのない場所に転移するので、一応、転移先の距離と方角を確認させてください」


 地図にはライールの周辺に広がる地形が描かれてるようだった。そういえば、俺の腰袋の中にも圧縮されたワールドマップが入っていたな。まあ、あれはちょっと特殊な形態をしていて、まだ取り出したことすらないのだが。


「俺達がライールを発ってからまだそんなに経ってない筈だから、今立っているのは……このあたりか?」


 俺はセシルの傍らから地図を覗き込んで、大まかな現在位置を指し示す。


「そうですね。川が流れているのがこっちで……このくらいの距離なら大丈夫かしら?」


「行けそうか?」


「ええ。とにかくやってみます。ゲイルさん、手を」


 セシルは地図を畳むと、俺に向かってすっと手を差し出してきた。俺は自らの手をそこに重ねる。


「では、行きます――目を閉じて」


 俺は転移魔法の成功を祈りながら目を閉じる。





「あいつ、いつまで追ってくる気だ?」


「ボクを捕まえるまで……だろうな。しつこい男だから、そう簡単に諦めたりはしないと思う」


「面倒な……」


 少年とウサギは走りながら会話を交わす。だが、彼らの表情には若干の疲れが滲み出ていた。かなりのハイペースで彼らは走り続けているが、背後から感じられる敵の気配は一向に消えない。


「ラガー、オマエ体力は保ちそうか?」


「まあ、もうしばらくは。でも、相手は大人だ。いつまでもこの速さで走り続ける訳にもいかないし、いずれ追いつかれる」


「だよな……この先のどこかで撒かないと」


 焦りの混ざったウサギの声。高速で飛行し続けるのにも限界があるのだろう。その時、少年が前方を見て声を上げる。


「見えたっ!川だ!」


「……!本当だ」


 ウサギが正面に目を凝らすと、確かにそこには川があった。


「だが、川を渡った先はどうする?どっちの道を進むんだ?」


「森に入ろう」


 ウサギの問いに、少年は即答した。


「森へ……?危険じゃないのか?」


「でも、奴を撒こうと考えるなら森へ行くしかない」


「……もし魔獣と遭遇したら、どうする?」


「見つかったら戦うしかない。でも、魔獣に見つからないように進む自信ならある……ボク一人なら、だけど」


 そう言ってチラリと少年はウサギに目を向ける。その目には、ウサギに対する心配が浮かんでいた。しかし、ウサギはそんな少年の視線をものともせずに胸を張る。


「オイラなら大丈夫だ。こう見えても森暮らしが長いからな。それに、いざとなったら魔法も使える」


「……本当か?」


 少年は疑うようにウサギを見やる。


「本当だって!だから、オイラのことは気にせず進むといい。森に溶け込むくらい、ウサギなんだからできて当然だ」


「……分かった。じゃあ、気をつけながら進もう」


「ん」


 そうして彼らの行く先は決まった。





 目を閉じた俺は、どのくらいそうしていただろうか。しばらくして、セシルの「もういいですよ」と言う声にゆっくりと目を開くと、辺りの景色は一変していた。


「凄いな……これが転移か」


 見渡せば少し離れたところに川があって、遠くには大きな橋が見える。

 

「本当はあの大きな橋に転移したかったのですが……少しズレてしまったようです」


「だがまあ、無事に転移できたようでなによりだ。なあこれ、もしかしてうっかり失敗したら川にドボンとか、そういう可能性はなかったのか?」


「それは大丈夫です。今回は地上転移なので川に落ちる心配はありません。ちなみに、障害物もきちんと避けられるんですよ?」


 それは良かった。転移先が水中や岩の中とか、そういうのは洒落にならないからな。


「まあ正確には避けているというより……いえ、何でもないです。そんなことより、早く橋に向かいましょう。ここは街道からも大分離れてしまっているようですし」


「そうだな。橋が見えるってことは、あっちが街道か」


 俺は街道のある方角に目を向ける。いま俺達の立っている場所は、整備された街道からかなり外れた草地だ。ぼうぼうと伸びた雑草が足元をくすぐる。


「よし、なら街道の方に……ん?」


 その時街道の方角を見つめる俺の目が、うっすらと動くものを捉える。あれは……人、か?


「人影……?いや、まさか……」


「ゲイルさん、どうしました?」 


 どうやらセシルにはまだ見えていないらしい。俺は街道の方を指差した。


「あっちに、人影らしきものが見える。ほら、あの動いているやつ」


「え……?」


 セシルも慌ててそちらに目を凝らす。少しして、彼女の口から「あ!」という声が漏れる。


「本当だわ……でも、遠過ぎてまだよくわかりませんね」


「……行ってみよう。もしかしたらあの娘かも」


 俺は人影をもっとよく見ようと駆け出した。


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