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フィフス  作者: 北の大地
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二十二話

 街の北門の前では、体格のいい男達が数人、見張りとして通行人の様子に目を配っていた。


「なんかちょっと……こわいですね」


「そうだな……」


 まるで誰かを捜しているようだ。犯罪者でも逃げたのだろうか。どこか物々しいその様子に、俺達はやや緊張を覚える。門を通り抜けようとした丁度その時、近くに立っていた男の一人から声をかけられた。


「おい、お前達」


「?」


 呼び止められた俺は首を傾げる。一体、何の用だろうか。


「この辺りで子どもを見なかったか?背はこの位の、生意気そうな男のガキだ」


 そう言って男は手を低く掲げる。


「生憎と、そんな子供を見た覚えはないな」


「そうか……」


 すると男は俺達に興味をなくしたようで、すぐに目を逸らすとまた通行人の観察に戻っていった。俺達はそんな男の様子を互いに不思議がりながら、門を通り抜けた。


「一体何だったのでしょう……?」


 門を抜けてしばらくしてから、セシルがそう言った。


「誰かを捜している感じだったな」


 それも、背丈の低い男の子を。俺は一瞬とある少年の姿が頭に思い浮かんだが、まさかと思い首を振った。確かに生意気そうな子どもではあるが……。


「とにかく、あんな門を通るのはもう御免だな」


「そうですね」


 セシルが俯きがちに答える。まさかセシルの頭にも、あの少年のことが浮かんでいるのだろうか。しかし、彼のことは考えても仕方がない。俺は改めてリックを見つけ出す為に、これからどこへ向かうべきか考えた。


「ライールの北門から続いてる街道はこの一本だけ……やっぱりこの先にリックはいるのか?」


「多分……そのリックと一緒にいたという女の子も、この先に向かっているのでしょう」


「なら、なるべく急がないとな」


「そうですね。確かこの先には川があって、そこからは道が二つに分かれてしまう筈です。リック達が川へ辿り着く前に、私達が追いつかなくては」


 それから、俺達はやや足をはやめて先を急いだ。





 少年は走っていた。街道をひたすら道に沿って。その隣を、勢いよく翼をはためかせながら並行してウサギが飛ぶ。彼等は逃げていた。彼等を、正確には少年を追う大きな影から。ことはほんの少し前に遡る――





「ほう、随分可愛い格好してるじゃねぇか。こりゃあいつらじゃ気付かないわけだぜ」


「……!」


 背後から突然聞こえたその声に、少年はハッとして振り返る。


「なぁ……ラガーよ」


「マークっ……!」


 少年は憎々しげに声の主を見上げた。そこに立っていたのは、少年の倍ほども背丈のある大男だった。


「他の連中はそれで騙せたかもしれないが、俺は騙されないぜ。逃げようったって、そうはさせるか」


 そう言って男を口角を吊り上げる。


「お前は俺からは逃げられない。なあ……お嬢ちゃん?」


 男は愉悦の笑みを浮かべると、少年に向かって一歩踏み出す。


「くっ……!」


「オイラの仲間に手を出すな!」


 突然、男の視界を眩い光が覆った。男は思わず怯んで一瞬目を閉じる。


「くそっ!なんだってんだ!」


「今のうちに逃げるぞ!ラガー!」


 男の目を眩ませたのはウサギの魔法であった。ウサギの声に反応して、少年はすぐにその場から駆け出す。一方男はなんとか片目を薄く開いて少年の姿を追おうとするが、途端に襲ってきた頭の痛み思わず片膝をついてしまう。


「くっ……そがっ……!」


 その間にも少年は駆けていき、その場にはただ一人男だけが残された。





「で、あいつは誰なんだよっ!」


 少年の真横をハイスピードで飛びながらウサギが問う。


「ライールでの同業者だ。ボクのいた組織の……多分追っ手だと思う」


「ってことは、あいつの狙いはやっぱりオマエなのか」


「おそらくな」


 少年は走りながら淡々と答えるが、その表情は強張っていた。


「あいつの狙いはボクだ。リック、お前だけなら……」


「言っとくけど、オイラだけ逃げたりはしないからなっ!」


「そうか……」


 少年は冷静に考える。この窮地を脱するために、何が最善かを。この先には川がある。川を渡った先には、分かれ道が――


「とにかく、この先の川まで急ごう」


「わかった」


 分かれた道の先に何があるのか。それは少年にさえ分からない。ただひたすら、彼等は走った。





 俺は街道を進むうちに、心の中の不安が大きくなってくるのを感じた。俺はセシルにその不安を打ち明ける。


「なあセシル、このままじゃ俺達……追いつけないんじゃないか?その、なんというか胸騒ぎがするんだ。リックが今、なにか大変なことに巻き込まれていやしないかと……」


「ゲイルさん?」


 セシルが不思議そうな顔をこちらに向けてきた。


「いや、やっぱりなんでもない」


 嫌な予感がする。これはなんだ?だが、もしかしたら杞憂かもしれないと俺は彼女に首をふる。しかしセシルの方も、何か思うところがあったようだ。僅かな沈黙の後、彼女が口を開く。


「……もっと急ぎましょう。私、転移魔法を使ってみますね」


「セシル、転移魔法が使えたのか!?」


 転移の習得はゲームストーリー中盤以降だった筈だが……?


「失敗が多いので、あまり使いたくはありません……でも、何もしないで後悔するよりは、いいと思うんです」


 そう言う彼女の声には、決意が籠もっているようだった。確かに、失敗のリスクはある。だが、成功すれば――?不安がだいぶ心を占めていた俺は、気づけばセシルに向かって頷いていた。


「わかった。頼むぞ、セシル」


「はい!」


 リック……無事でいてくれるだろうか。

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