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フィフス  作者: 北の大地
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十九話

 俺は占い屋の老婆に聞いた情報を元に、街の北西へと足を進めていた。


「まったく……リックの奴、一体どこにいるんだ?誘拐とかじゃなければいいんだが……」


 何者かが側にいると聞いて、俺の心配は募るばかりだった。あんな羽の生えた珍しいウサギが、普通に保護されているとは考え難い。まあ、食用にされないだけいいのかも知れないが。

 リックは魔法も使える。いざとなれば、それでなんとか危険を切り抜けて欲しいと願いながら、俺の足は自然と早まるのであった。





 その頃、行方不明のウサギは倉庫の中で、相も変わらず少年の腕に抱かれていた。


「それで、これからどうする?」


「そうだな……」


 彼らは、この街を抜け出す算段を練っていた。なんとかして少年の雇い主に見つからないよう、この街を二人で抜け出さなくてはならない。


「小さな街といえど、この街の入り口にも番人は立ってる。そいつらの中にもあいつの息のかかった人間が混ざってるんだ」


「お前の姿も知られてるのか?」


「ああ……恐らくな」


「そっちの姿も、か?」


 そう言って、ウサギは鼻先で少年の格好を指し示す。少年は自分の姿を見下ろした。青いドレスを身につけた、いかにも女の子らしい自分の姿を。


「こっちは……どうだろうな。でも、このままの姿じゃどの道目立つだろう。それに、化粧も剥げかけてる」


「なら、とりあえず着替えと化粧道具を用意しないとな」


「どうやって?ボクはこの格好のまま、こんな昼間に出歩く訳には……」


「オイラがとってくるよ」


「えっ!?」


 羽の生えたウサギだって街中では目立ってしまう筈だ。少年がそれを指摘すると、


「高いところを飛べば大丈夫だ。着替えは、宿に行けばあるのか?」


「ああ……ボクの部屋になら、着替えも化粧道具も揃ってる。でも、あそこは……」


「オイラがみんなの所に戻らないか、心配か?」


「……」


 少年は黙り込んでしまう。実際、それは少年にとって不安なことであったからだ。


「大丈夫だ。そりゃ、一言くらいは声をかけてくけど、別にオマエのことを喋ったり、帰って来なかったりするわけじゃない」


「……そうじゃない」


 ポツリとそう呟く少年の言葉に、ウサギは首を傾げる。


「?」


「そうじゃなくて!もうあの宿はあいつらに見張られてるかもしれない。危ないんだ」


「……!」


 リックは驚いた。そして少年の目を見れば、そのまなざしはとても真剣な色を宿していた。


「じゃあ……」


「宿に戻るのは危ない。だけど、恐らく他の拠点もあいつらに目をつけられてるだろう。だから、もし服とかを揃えるなら……」


「わかった」


「盗みにでも……え?」


 盗みにでも入るしかない。少年はそう言いかけて、ウサギの一言に驚く。


「盗みになんか手を染めるなよ、ラガー。少なくとも、オイラは連れにそんなことさせたくない。考えがあるんだ。オイラに任せてくれないか?」


「連れ……ね。ねえリック、ボクは、お前を信じていいのかな?」


「そんなことオイラに訊くなよ」


 ウサギはふいと顔を背けた。少し、照れくさかったのかもしれない。耳先がほんのりと赤く染まっていた。

 ラガーはしばしの間考え込んでから、頷く。少年は普段の警戒心を捨て、ウサギを信じることにしたのだった。


「分かった。お前を信じるよ、リック。……まったく、お前はどうしてウサギなんだろうな」


 そう言ってリックの頭を撫でるラガー。リックは訳が分からず、少年の腕の中でただ目を白黒させた。





「じゃあ、行ってくる」


「うん、任せたからな、リック」


 倉庫の入口を少しだけ開いて、ウサギはその間を通り抜ける。倉庫を出たウサギはぴょんぴょんと何歩か助走をつけると。バサリと大きく羽を広げて上空へ飛び立った。残された少年はそれを見届けると、そっと倉庫の扉を閉める。


「本当に、任せたからな……」


 ラガーは倉庫の壁に寄りかかると、小さな声でそう呟いた。





 リックを探して街の北西まで来ていた俺は、そこで途方に暮れていた。


「そうそう都合よく見つかる筈なかった……!」


 むしろ、前回が都合良く行き過ぎたのだ。俺は高級住宅街の時を思い出して、唇を噛み締めた。ご都合主義だとか、ゲーム脳だとか言われようと、街の北西側まで来ればなんとかなると思っていた俺は、今更ながらにその甘い考えを後悔する。


「迷子の動物探しにまでは、主人公補正は働かないってか」


 そもそも、俺に主人公補正なんてものが働いてるのかも疑問だ。これまでなんとなくゲームの主人公っぽい気分で旅を進めてきたけれど、もしかしたらそんなものは初めからないのかもしれない。


「まあそれならそれで、俺はこの世界を自由に生きるだけだけどな」


 今はとにかく、仲間のウサギを探し出さなければ。俺は浮かんできたどうしようもない考えから目を背けると、リックのいそうな場所を探してまた辺りに目を配り始めた。





 ウサギは、ライールの上空を飛翔する。高い所から見る街並みは、地上とは違った感慨をウサギにもたらす。


「へぇ……ライールって結構白っぽい街なんだな……っと、あれはゲイルか」


 見覚えのある青年の姿を地上に見つける。しかし――


「今はラガーのことが先……だなっ!」


 ウサギは前を向くと、グンと羽を動かして南東へと飛び去った。



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