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炎上勇者

作者: 無限の地平はみな底辺

高橋ゆうすけは民度の低い地域の育った所為か良識が欠如した青年だった。

貧困枠で入学したF欄大学では、学業そっちのけでキョロ充行為に専心していた。

趣味はSNSに面白動画をアップロードして注目を集める事。


昨年などは徒党を組んでホームレス老人を襲撃。

逃げ惑う老人に哄笑しながら卵を投げつける動画をSNS上にアップロードした。

ゆうすけは世界的なバッシングの対象になったが、全く反省しなかった。

それどころか、批判とは言え『注目される快感』を覚えてしまった。


大学からも除籍されたが、何とも思わない。

どうせ講義には出席していなかったのだから。


その後も、ゆうすけはSNS上に騒動を積極的に撒き散らして行った。

何度も剥奪されるアカウント、集まる批難、高まる悪名。

いつしかゆうすけは悪い意味でそこそこ世界的な著名人になっていた。




恐ろしい事に、この屑が異世界に飛ばされてしまった。

しかも始末の悪い事に、ネット電波は何故か異世界にも届いていた。

異世界には文明があり、社会があり、ゆうすけ如きを表面的に歓迎する良識まで持ち合わせていた。




ゆうすけは歓喜する。

「これが俺の生まれた意義だったのだ!」

とさえ思った。


・異世界聖地での無断撮影。

・異世界貴人に対する数々の無礼狼藉。

・異世界動植物への醜悪な虐待行為。


ゆうすけは嬉々としてSNSにアップロードし続けた。

本人はちょっとノリの良い国際親善と思い込んでるから始末が悪い。



人類は戦慄した。

この馬鹿を放置している限り、異世界の地球に対するヘイトは高まり続けるだろうからだ。

そして、ゆうすけのアップロードした動画を見る限り、異世界の軍備は中々の物である。

少なくとも彼らは、地球人類にとって未知の光学兵器を多く保有していた。


人類はSNS上からゆうすけを必死に説得するも、前代未聞のアクセス数に舞い上がったゆうすけは更に悪行を加速させた。

遂にはアップロードされる画像に映る異世界人に笑顔を浮かべている者は一人も居なくなった。

人類は絶望した。





終局は突然訪れる。

異世界の第一聖地で巫女に狼藉を働いたゆうすけが自警団に逮捕され斬首されたのである。


最期の台詞は

「えwww ちょっとwww 何マジになってんのwww? こんなの遊びでしょwww? ちょ、待ッ!! 痛゛ッ!!!!!!!」

である。


事態を重視した異世界政府は自警団の責任者に死刑判決を下し即日執行。

更には幹部全員を減刑無しの終身刑に処した上に、地球側に対して地球人殺害に関する謝罪声明を発表した。


驚いたのは地球側である。

ここまで高い倫理性を異世界人が持っていると云う事は、裏返せば悪徳に対する許容値が高くないと云う証明なのである。

しかも極めてクレバーな政治的センスを持ち合わせている。

こんな恐ろしい連中を敵に回して良い筈がない。


地球側もまたSNSを通じて、同胞の非礼を陳謝し、地球人類の総意として「ゆうすけへの斬首刑は極めて正当な社会正義維持行為と捉えている」と云う趣旨の声明を発表した。




ファーストコンタクトがここまでも後味の悪いものだったので、地球・異世界側の事後対応は慎重を極めるものとなった。

双方が高い権限を持つ外交委員会を設立し、いずれ来るであろう本格接触の日に向けて準備交渉を念入りに進めた。

相手側の文化を嘲笑したり攻撃的な言動が双方の自主意思で厳罰化された。



19年後。

双方で発達した科学力は、遂に地球異世界間の直接往来を可能にした。

時間も空間も構成元素さえも異なる二つの世界が遂にコンタクトしたのである。


だが、別世界間の初接触としては奇跡的な事に、そのファーストコンタクトは一切のパニックや戦乱を産まなかった。

双方が双方を敬愛し尊重し、互いの余剰資源・技術を公正に交換した。


両世界は未曾有の繁栄を享受したのである!!





個人としては最悪の屑野郎ではあるが、高橋ゆうすけの両世界に対する貢献度は余りに絶大である。

両世界はその事実を直視せざるを得なかった。

極めて不本意ではあったが、両世界は事実を直視出来る位の成熟度を持ち合わせてしまっていたのである。


両世界でSNSが永久的厳禁対象とされた事は言うまでもない。

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