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55.刀探し

さてと――。


フランベルを見送って校舎に引き返すと、そこに少女が待ち受けていた。


「怪我もだけど、精神的にも大丈夫かしら。心配だわ」


暗い廊下の柱の陰に、たたずむように立って、クリスが神妙な顔つきで俺を見つめる。


「今日の所は、帰した方がいいだろう」


「それより、私に頼みたいことっていうのはなにかしら?」


俺はフランベルに嘘をついた。


クリスには外泊許可をとってもらい、王都の自宅に一時帰宅したことにしてもらっている。


プリシラにもクリスが自宅に戻ったと、嘘をついてしまった。


クリスの家の蔵の収蔵品に、魔法武器がいくつかあったのでフランベルに使えるものがないか、探すという名目だ。


「ええと、私の家には蔵なんて無いのだけれど」


「お金持ちじゃないのか?」


クリスの顔がムッとなった。


「べ、別に資産家でもなんでもないわ。もしかして、ありもしない蔵をあてにしていたの?」


「まあ、あればあったで良かったんだがな」


俺はクリスを連れて外に出ると、正門方面ではなく図書館などが集まる資料区画を目指した。


「どこに行くの? 武器用具室はそっちじゃないわよ」


「蔵ならあるからな。うってつけのやつが」


俺がクリスを連れてたどり着いたのは、六角形の柱のような建物の前だった。


堅牢な外壁に魔法的な結界が幾重にも張り巡らされた、学園の宝物庫。


クリスが目をまん丸くさせる。


「まさか、貴方の言う蔵って……」


「せっかくあるんだから、活用しないのはもったいないだろ!」


「は、犯罪よ!」


「クリスはもちろん通報なんてしないよな。俺たちは共犯者なんだから」


うつむくとクリスは困り顔になった。


「こんなのあり得ない。あり得ないわよ。フェアチャイルド家の人間が……犯罪に荷担するだなんて」


「そういえば、クリスはすぐ俺を訴えようとしてたけど、家は司法関係なのか?」


「えっと……もしかして、レオには言ってなかったかしら」


聞き覚えはあるものの、フェアチャイルドなんて、わりと王都じゃありふれた名字だから、あまり気にしなかった。


「悪い。世の中の事には結構疎いんだ」


クリスは大きく息を吐く。


「司法局の検事長。ロア・フェアチャイルドが私の父よ」


「し、司法局? 検事長って……」


「四賢人の一人って言った方がいいかしら」


うおおおう! どうりで聞き覚えがあったわけだ。


「法の番人ってわけか。じゃあ手伝いを無理強いはできないな」


「ええそうよ! 貴方は勇者なのに、見損なったわ!」


「勇者に幻想を抱きすぎだぞ。実際に俺と付き合ってみて、結構適当な人間だってわかっただろ?」


クリスは深く頷いた。


「つ、付き合うという言い方は少し変だけど……型破りというか……けど、今回ばかりはいけないわ」


かたくななクリスに俺は笑って返す。


「まあ、そう怒るなって。だいたい、宝物庫から持ち出された武器をフランベルに持たせるわけないだろ。すぐにバレるんだから」


「じゃあ、どうするっていうの?」


「ちょっと収蔵品を見せてもらうだけだ」


盗むのは情報だ。


「見るってどうやって? この建物の管理権限はレオには無いでしょ? 正当な手順を踏んで中に入らないと、すぐに防犯の魔法が発動するわ!」


俺はうんうんと頷いた。


「そこでクリスには外部から協力してもらおうと思ったんだが……」


「わ、私には無理よ! 犯罪もそうだけど、この結界に干渉するなんて……複雑すぎるもの」


ちゃんとクリスには宝物庫にかけられた結界の類いが、読み取れているみたいだ。


「全部任せてくれ。俺が指示する通りにクリスは動いてくれればいい。それに、宝物庫の魔法武器は、ちゃんと元に戻すと約束する」


クリスは深く考えこむと、何度も深呼吸してから……しぶしぶ頷いた。


「これもフランベルのため……ひいてはチームのためなのよね。今回だけは見なかったことにしてあげる」


「悪の道に手を染めてもらうぜクリス」


「そういう言い方はしないで!」



協力も取り付けたところで、それじゃあ、さっそく宝物庫破りといきますか。

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