157.禁書7
ステージの中心でフランベルがマルコシアスと対峙した。
「我はマルコシアス。貴様も我らの知識を求めるものか?」
「は、初めまして! ボクはフランベルだよ!」
フランベルはぺこりと頭を下げた。これから戦う相手だというのに……相変わらず、少し変わった性格だ。
「礼儀は心得ているようだな。では……始めよう」
双剣を抜いて二刀流の構えをとるマルコシアス。
シャクスの首を斬り飛ばした技のキレはかなりのものだ。
一方、フランベルは蒼月の柄を握って、相手に背中を向けるように構えた。
「なんだその構えは?」
「ボクにはこれしかないから」
最初の一手に最大の一撃をもってくる。愚直すぎるくらいだが、これがフランベルの戦い方だ。
「いいだろう。試してやる」
マルコシアスの姿がゆらりと消えた。魔法による幻覚ではなく、足裁きによって相手の視界の死角へ回り込む体術だ。
足音さえしない。
拳闘士のフットワークをさらに洗練したような高等技術である。
フランベルが一瞬、俺に視線を向けた。
「ただの体術だ! 惑わされるな!」
マルコシアスが円を描くようにしながら、フランベルとの距離を詰めていく。
緩急をつけたその動きに、踏み込むタイミングをフランベルは逸していた。
「どうした? 何もせずに倒されるのを待つだけか?」
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
自分に活を入れるように声を上げる。
フランベルは刀の柄を握り込むと踏み込み――抜刀と同時に斬る。
俺が教えた一閃だ。魔法力の制御はまだまだ甘いが、それでも最初の頃の“撃てば力を使い切って眠ってしまう”頃と比べれば、格段の進歩を遂げている。
しかし、フランベルの一閃は空を斬った。踏み込みが半歩浅い。
「ほう。悪くはないな。荒削りだが気迫で稚拙さをねじ伏せたか」
一閃を軽々かわして、マルコシアスは突きで反撃に転じた。
「うわああ!」
振り抜いた蒼月を引き戻し、マルコシアスの振るった“右腕の一撃”をフランベルは弾く。
刀身がぶつかり合い火花を散らした。
「まだだフランベル! 次が来る!」
俺の言葉に反応するように、フランベルは飛び退いて間合いをとった。
マルコシアスは寸前で“左腕の追撃”を止める。
「ふう……はぁ……」
最初のやりとりでフランベルの息は上がっていた。
「どうした? まだ始まったばかりだぞ。もっと我を楽しませろ」
「はぁ……はは……すごいや……」
不機嫌そうなマルコシアスに対して、フランベルは含み笑いをしながら頷いた。
「なんだ? 勝てないとわかっておかしくなったか」
「勝てない。ボクは勝てないよ。だけど……今、すごくゾクっとしたんだ。死ぬかもしれないって思ったら……ゾクゾクが止まらないんだ!」
抜刀状態でフランベルは蒼月を構え直した。
「ほう。心地よい高ぶりだ。おもしろい。どこまでできるか試してやる」
マルコシアスの双剣は、両腕がそれぞれの意志をもったように、不規則にフランベルに牙を剥く。
まるで二頭の餓狼に左右から挟み撃ちになったような状態だ。
片方を避け、片方を蒼月の刀身で受けるフランベルは、防戦一方だった。
正面からの斬り合いでは分が悪い。そもそもフランベルが一方的に攻め立てられる。そんな状況が続いた。
「ハァ……ハァ……ッ!?」
わざと休ませるような間をとって、マルコシアスは双剣でフランベルをいたぶる。
俺はマルコシアスに聞いた。
「なあ? なんですんなりフランベルを倒さないんだ?」
フランベルは防ぐので手一杯で、俺の声も耳に入らないほど集中しているようだった。
「殺すのはたやすい。が、それでは楽しめぬ。我らの糧は人間の強い感情だと言ったはずだ。絶望し無抵抗になる瞬間まで、いたぶらねばもったいない。その悲鳴を一滴残らず絞りつくすまで」
フランベルの腕や肩口、足にも裂傷が加えられた。
が、彼女は意にも介さない。傷も痛みも意識の外においやって、マルコシアスの双剣に徐々に対応しつつある。
「いいぞ。貴様からは高まりを感じる! では、これならどうだ!?」
双剣を交差させてマルコシアスが剣檄を放った。
「せいやああああああああああああああああああああっ!」
その交差の中心をフランベルは切り上げる。
ガキンッ! とぶつかり合った金属同士が火花を散らした。
「初見で防いだか。だが、いつまで亀のように閉じこもっている?」
「……ハァ……ハァ……」
間合いを取ってフランベルは呼吸を整える。
反撃しようにもフランベルには手数が足りない。それを補う理論魔法も精霊魔法も、彼女は使うことができない。
フランベルは笑った。
実力差は歴然で、相手が手加減していることも肌で感じ取っているだろう。
それでも不敵に笑うと、鞘に刀を納める。
「なんだ? 降伏したつもりか?」
「違うよ。これがボクの戦い方さ」
もう一度、フランベルは抜刀術の構えをとった。
「同じ技は二度通じぬ」
双剣を胸元で交差させるように構えて、マルコシアスはその場に身構える。
「もう少しあがく姿を楽しみたかったが、仕方あるまい。絶望とは一欠片の希望を握りつぶした時にこそ、深淵に達する。貴様の全力を見せてみろ」
俺がフランベルの立場なら、罠の可能性も考慮した立ち回りになるだろう。
だが、フランベルにはそういった迷いが一切無い。
「それじゃあお言葉に甘えて、ボクの全身全霊を込めた一撃で挑ませてもらうよ。それで通じないならボクの負けだ」
リミッターを解除した蒼月に、フランベルは持てる魔法力のすべてをつぎ込んだ。
後のことなど考えていないのだろう。
いや、後のことなら俺に任せてくれ。
「行くよ……」
しん……と、ステージの上が静まり返った。フランベルの心は今、波一つ立たない湖面のような静けさだ。
まだ必殺の境地には至らないまでも、今の彼女に出来る最大限の力が解き放たれようとしている。
正対するマルコシアスめがけて、フランベルは一歩を踏み出した。
静かに。滑るようになめらかに。全身の筋肉も関節も、その動きに一切の乱れを生じさせず、針の穴を通すようにただ一点にフランベルは力を集約した。
「ふむ……これは良い修練だ。己を信じた者の目をしている。挑む心をもって我にそのすべてを注ぐか」
マルコシアスが目を細めた。交差させた双剣でフランベルを迎撃する。
「――一閃!」
気迫のこもった声とともに、マルコシアスの懐に入りこむとフランベルは抜刀とともに切り払う。
込められた魔法力は刀身の、さらに一点に集約していた。
マルコシアスも双剣で蒼月を受け止める。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
命を燃え上がらせ、フランベルは双剣を押し返すように蒼月を最後まで振り抜いた。
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!
甲高い金属音とともに、マルコシアスの双剣の刀身が二本とも折れる。
いや、切断されたというべきか。
だが、マルコシアス本体は無傷だった。
「はは……もっと……強くなりたいな……」
そのまま前のめりに倒れそうになったフランベルを、なぎ払うようにマルコシアスは蹴りつける。
フランベルの身体は、まっすぐ俺の方へと吹っ飛ばされた。
ステージの場外に出たところで、フランベルに慣性制御魔法で衝撃を殺しつつ俺は彼女の身体を受け止める。
力を使い果たしてもフランベルは蒼月の柄を握りしめたままだ。
「ZZZ……zzz……」
俺の腕の中で彼女は寝息を立て始めた。
ステージから離れた建物の陰にフランベルも寝かせて、俺は向き直るとマルコシアスを見据える。
「いったいどういうつもりだ?」
「意識を失った相手からは、何も感じられぬからな。場外でそちらの負け……異存は無かろう?」
そのままマルコシアスは俺に背を向けた。
「このまま我が戦っても良いのだが、あいにく得物を失ってしまった。それに……こちらの三人目は貴様との戦いを渇望しているようだ」
そのまま自分からステージを降りる。そんなマルコシアスに、首だけになったシャクスが聞いた。
「ケケケ! 悪い癖だぜぇ!! 気に入ったんだろ? 青いままの果実を食うよりも、熟すのを待って逃すのがお前のいつものパターンだもんな」
マルコシアスはシャクスの側頭部を踏みつけた。
「このまま潰してやろうか?」
「じょ、冗談だっての! つうかよ……お前が生かしてやりたくても、あいつがなんていうかな?」
牛の獣人風がステージに上がった。その手には柄の長い巨大な戦斧を構えている。たてがみのように揺らめく炎を身体のあちこちに纏い、息を吐く度にそれに炎が混ざり込む。
「GURUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUAAAAAAAAA!!」
人の言葉ではなく、獣の雄叫びを上げていた。真っ赤な瞳が俺を見据える。
やっと出番か。アルジェナもフランベルも疲れているだろうし、休ませておいてやろう。
俺はステージに上った。
マルコシアスが向き直り、俺に宣告する。
「そいつの名はベリアル。凶暴性では我らの中でも随一だ」
「つうか、ほとんどまともに喋んねーから、話が全然合わないんだぜ! ケケケ! ただ、遊びってもんを知らないっていうかなぁ……こいつにとっちゃ、壊して殺してってのは呼吸するのと一緒なんだよ」
俺は頷いた。
「ご託は良いから……始めて構わないな?」
「GURUUUUUUUUUUAAAAAAAAAA!!」
ベリアルの二度目の叫びが、試合開始の合図だった。
挨拶代わりと言わんばかりに、その口からベリアルは獄炎を吐き出す。
避ければ後ろのアルジェナやフランベルに当たりかねない。防壁魔法に水の精霊魔法を組み合わせて、炎を完全に無効化した。
その瞬間――マルコシアスの表情が愕然としたものになる。
「なん……だ……今のは」
「おいこっちは見えねぇんだから。つうか一発で終わりかよ。ケーッケッケッケ!」
マルコシアスが足下のシャクスの首を持ち上げた。
「防御に長けるらしいな。しかも先ほどから、あの男の心には恐怖が一切無い」
「ハアアア!? ベリアルの前でチビらねぇ人間なんざいるわけないだろ」
俺は魔法騎士団正式採用の魔法剣を抜いた。身体能力を強化しながら魔法式を展開する。
とりあえず四枚もあればいいだろう。
「GURUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」
巨体を振り乱してベリアルが斧を振り上げながら突っ込んできた。
あと一歩でその得物の殺傷圏内に入る……というところで、ベルアルの足下に重力の鎖が巻き付き、その場に縛り付ける。
続けて消滅魔法と破壊魔法と分解魔法を同時に打ち込んだ。
魔法剣が発振して式が乱れる。やや不完全な発動になったか。
「GURUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」
ベリアルは消滅魔法と破壊魔法には抵抗したが、分解魔法によってその右腕が砂のように崩れた。
巨大戦斧が石床に落ちて甲高い金属音を鳴らす。
マルコシアスとシャクスは言葉もないようだ。
「それじゃあ三本も持ってきてるんだし、久しぶりに双剣技でも使ってみるか」
ベリアルにかけた重力の枷がそろそろ解ける頃合いだ。
「GURUAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
鼻息荒く俺に向かってくるベリアル。左腕を伸ばして掴みかかろうとする。
が、剣の間合いはそのまま俺の殺傷圏内だ。
「剣乱舞踏祭!」
独楽のように身体を回転させて相手の頭上を飛び越えると、がら空きの背中に一撃を加えてから、あとは赴くままに剣を振るう。
舞うように。速く、迅く。途切れることのない連続攻撃は、相手に倒れることさえ許さない。
が、終わりはすぐに訪れた。
左右の剣の刀身が共に折れる。二本に力を分散しても、本気を出すと耐えきれないか。
すでにベリアルは物言わぬ肉塊へと変貌していた。
刀身を失った柄も、砂のようにボロっと崩れ去った。
背中に残しておいた最後の一本を抜き払う。
「勝ち抜き戦だから俺たちの勝ちになると思うんだが、殲滅戦に切り替えてもいいか?」
マルコシアスが震えた声で言う。
「ば、化け物か……貴様」
俺は笑顔で返した。
「いや、ただの学園の管理人だ」
マルコシアスも首だけになったシャクスも、完全に戦意を失ったようだった。
◆
ほどなくして、俺たちは禁書庫に戻ってきた。
十分に休息できたらしく、アルジェナはある程度回復したのだが……フランベルは部屋の壁に背を持たれさせて、眠りこけたままだ。
全力を出すと半日くらいはこの調子なんだよな。
異界グリモアのページが開き、マルコシアスが姿を現す。
「約束だ。どのような知識を欲する?」
その言葉はアルジェナに向けられていた。
「……まだいい」
「なんだと?」
「……頼ってすぐに強くなろうとしたけど、違うと思ったから」
「本当に良いのか?」
「……いつか必要な時が来たら、また……」
「いいだろう。その時が来るまで、我らはしばしの眠りに就くとしよう」
気丈に振る舞うマルコシアスだが、一度も俺の方に視線を合わせてくれない。
「なあマルコシアス。俺に知識はくれないのか?」
「貴様には必要ないだろう」
「じゃあ知識はいらないから、一つ質問に答えてくれ。どうして人間をいたぶるのに、王国の繁栄に力を貸すんだ?」
「それは……」
口ごもるマルコシアスに俺は笑顔で聞く。
「言いにくいことなのか?」
「人間がおらねば、我らの力も衰える。人間が増えるほど、その不幸も苦しみも痛みも増える。それが我らの力となるのだ。人間を苦しめるには人間が必要なのだ」
なるほど。だから人間に力を貸すってわけか。
「じゃあ、なんでお前はフランベルを倒さなかったんだ?」
まあ、危ないと思えばいつでも乱入する準備はできていたんだが、フランベルと戦った時のマルコシアスからは、その万が一の危険な匂いを感じなかった。
「その人間からは死や恐怖だけでなく、喜びや楽しさの強い感情が発露していた。それで我はある程度満たされたのだ。恐怖や怒りを好むものは多いが、我にしてみれば人間の歓喜の感情も、同じく心地よいものだからな」
「そうか。答えてくれてありがとうな」
「願わくば、貴様の顔だけは二度と見たくない。さらばだ」
マルコシアスの姿が消えて、禁書は一人でに閉じると結界が張り巡らされた。
すべてが終わり、アルジェナがホッと息を吐く。
俺に向き直って彼女は小さな桜色の唇を開いた。
「……ありがとう」
「俺はいいんだが、今度フランベルにお礼の手紙でも書いてやってくれないか? すごくがんばったから」
「……そうする」
コクリと頷いてから、アルジェナはもう一度俺の顔を見上げる。
「……どうやって三人目を倒したの?」
「いやぁ……見た目ほど強い相手じゃなかったんだ。アルジェナやフランベルが戦った連中の方が強かったよ」
「……そう」
俺は眠りこけているフランベルを背負った。
「ところでアルジェナは、本当に良かったのか? 知識が欲しかったんだろ?」
あの美しい銀髪を犠牲にして、何も得られなかったのはどうなんだろう。
「……いいの。切り札はとっておくもので、今日はその一枚ができたって、思うことにする」
「そうか。まあ、それに頼るような国難が来ないのが一番だけどな」
「……うん」
並んで通路を歩き、禁書庫を出る。
フランベルを背負ったままの俺を、アルジェナはじーっと見つめた。
「どうしたんだ?」
「……いいなぁ」
「はい?」
「……なんでもない。馬車、用意させるね」
このままフランベルを背負って歩いて回るわけにもいかないし、ここはアルジェナのご厚意に甘えるとしよう。
「……あの、ご褒美は?」
「褒美って、フランベルのか?」
「……ううん」
「俺にか……うーん……そうだな。魔法武器を打つ工房を使いたいんだけど……あ、いや忘れてくれ」
「……わかった」
そんな話をしながら、俺はアルジェナに送られて城の城門までやってきた。
外は夕暮れだ。どうやら禁書の世界にいる間は、外の世界と時間の流れが違ったらしい。
あとで懐中時計の時刻を戻しておかないとな。
「そういえば今さらだけど、オーラムとフローディアは元気にしてるか?」
「……うん。二人とも元気」
「そっか。二人によろしく伝えておいてくれ」
「……うん」
すぐに学園の寮まで直通の馬車が用意された。眠ったままのフランベルを先に乗せて、借りた魔法剣をアルジェナに返却する。
「ごめんな。手違いで二本ほど折っちまったんだ」
「……大丈夫だから」
馬車に乗り込もうとした俺の手を、アルジェナはぎゅっと握った。
「どうしたんだ?」
「……ええと……その……なんでもないから」
夕日に照らされていてもわかるくらい、アルジェナは顔を赤くさせながら俺の手を離す。
「……また来て」
「ああ。困った事があったらいつでも相談に乗るぜ」
今度こそアルジェナに見送られて、俺とフランベルを乗せた馬車は走りだした。
貴族街を抜けたあたりでフランベルが大あくびをする。
「ふあああああ! あれ? ここは?」
「案外早く目が覚めたな?」
フランベルは客車内をキョロキョロ見回した。
自分が馬車に揺られていると理解して、ニッコリ笑う。
「よかった。さすが師匠だね。ボクが倒れたあとに、ズババッ! って、無双したんでしょ?」
自分の無事がイコール、今回の任務達成とフランベルは理解している。
「まあ、なんとかなったよ」
「ボクが全力を出せたのも、後に師匠が控えてるからだもんね」
嬉しそうにフランベルはポニーテールを揺らした。
「それで、どうだった? 自分よりも格上の相手ってのは」
「うーん……途中から殺気が無くなって、なんだか向こうはボクで遊び始めたって感じがして……ある意味失礼だよ!」
フランベルにしては珍しく、ほっぺたをぷくっと膨らませる。
「まあそう言うなって」
「……けど、殺されるかもって思ったら変なスイッチが入るっていうか……自分でもよくわからないんだけど……なんだか不思議な感覚があったんだ」
どうやら無理させた甲斐があったみたいだ。
「その感覚を自分で自在に出し入れできるようになれば、もっと強くなれるぞ」
「本当に!? し、師匠はできるんだよね? どうすればいいの!? コツとかあるの!?」
狭い客車内で覆い被さるようにフランベルが迫ってきた。
「こらこら近いから! がっつくなって。今はそういう感覚があるって自覚できれば十分だ。コツを教えてできることなら、とっくに教えてるって」
「そ、そうだよね! じゃあ師匠! お礼にボクの……」
「礼には及ばないから、今後も精進するように」
フランベルはやっと自分の席に戻った。
「はーい! 師匠の言いつけはきちんと守るよ!」
それから馬車が学園の寮に着くまでの間、俺はフランベルの戦い方について具体的なアドバイスをすることにした。
また一歩、前に進んだフランベルのこれからが楽しみだな。