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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
92/332

黒の軍勢ですか

「さて、なにから聞きましょうかね」


 完全に気を失っているベシュを宿屋に放り込み、オーランド、ガルムを連れ再び酒場へと顔を出し席に着きます。

 先ほど届かなかった果物がきたのでくーちゃんにわたすとくーちゃんは喜んで食べていました。


「そちらからの質問の前に私から質問しても?」

「ん、いいですよ?」


 なにか疑問でもありましたかね?


「先ほどのベシュとの決闘だが、なぜすぐに負けを認めなかったんだ?」

「というと?」


 質問に質問を返しながらやはりと私は思います。オーランドはベシュと違いバカじゃありませんからね。


「お前がベシュに提示した条件は『あなたが隠してる情報、私の知りたい情報を寄越す』だ。しかもこれは勝利条件には含んでいない。あくまで決闘を受ける条件だ」

「さすがオーランド、バカとは違いますね」


 あの決闘は私が負けてもベシュは対価を払わないといけないものでしたからね。始まってすぐに私が負けを認めてもなんの問題もなかったんですがね。


「ではなぜ、決闘を?」

「それは単純、あのバカの勝ち誇った顔を見るのが凄まじく不愉快だったからですよ」

「……あいかわらず性格が歪んでいるな」


 褒め言葉として受け取りましょう。さて、次はこちらが質問する番なんですが、質問に答えるのがオーランドですからねぇ。ベシュならペラペラと細かい機密事項まて喋ってくれるんですが。


「質問に答えてくれるのはオーランドでいいんですね?」

「ああ、ガルムは寡黙だしな」


 オーランドの言葉に横に座るガルムを見ると小さく頷いていました。

 寡黙じゃなくてコミュニケーション能力が皆無なだけだと思いまずね。


「じゃ、一つ目ですがここ(ドラクマ)にいる理由は?」

「里からの任務だ」

「……」

「……」


 しばらく待ちますがそれ以上の答えが返ってきません。

 はぁ、こいつは昔からそうなんですよね。質問したら答えは返してくれますが細かい答えではなくかなり大雑把な答えしか返してきません。


「……里からの任務とは?」

「森巫女の予言の確認だ」

「森巫女服?」


 私の言葉にオーランドは頷きます。

 森巫女。

 それはエルフの中でごく稀に生まれる未来が見える能力わ持ったエルフのことを指します。この森巫女は不思議なことに同時期に二人存在したりすることはないのでエルフの里では神聖視されている存在でもあります。


「どんな予言なんです?」

「それは……」


 即断即答のオーランドが珍しく言い淀み、横のガルムに視線を向けます。ガルムはまたゆっくりと首を縦に振ります。

 ガルム、お前面倒だから首振ってるだけじゃないでしょうね?


「北に不吉な予兆ありという予言だ。もしかすると黒の軍勢かもしれない」

「黒の軍勢?」


 聞いたことのない言葉ですね。

 くーちゃんにも視線を向けますがこちらは果物を食べるのに一生懸命で視線にすら気付きません。というか関心すらないのでしょうね。


「黒の軍勢とはなんです?」

「お前、旅をしていて聞かないのか?」


 いや、そんな呆れられたような顔をされましてもね。知らないものは知らないですし。


「黒の軍勢というのはよくわからない奴らの名称だそうだ。情報がほとんど残らないらしいが戦争や内乱がある所には必ず奴らの影があると言われるくらいだ」

「それ、おかしくないですか? 情報が残らないならそんなの噂にもならないでしょう?」


 じゃないと噂にすらなりませんよ。


「ああ、確かにそうだ。だがこいつらが関連すると必ずある物が置かれるようになったんだ」


 ほほう、黒幕ぽいですね。


「ある物とは?」

「黒い薔薇だそうだ。そいつらが暗躍した戦場や暗殺された奴の側に必ず落ちてるらしい」

「ふーん」


 黒い薔薇ですか。確かに悪役ぽいですね。


「お前、まさか黒の軍勢に繋がってないだろうな?」


 私が愉快そうに笑っていたのが気になったの女性のような高い声をしたガルムが尋ねてきました。


「ほぅ、私に喋りかけてくるとは。ガルム、私はあなたに嫌われてるかと思いましたけど?」


 里でも大概私のことは無視でしたからね。


「お前を好きなやつの方が少ないだろ。それよりも答えろ。返答次第では……」

「ガルム!」


 オーランドの制止を無視し、ガルムの小柄な体から濃密な殺気が溢れ、私に浴びせかけられます。余波を食らったのかくーちゃんが驚き果物を落としながらも私の背後に隠れました。

 そんなガルムの反応を見ながら私はくすりと笑います。それを見たガルムが眉を潜めました。


「なにがおかしい?」

「いえ、仮に私が黒の軍勢だとしてあなた達はどうするんですか? 証拠もないのに」

「簡単だ、殺すだけだ」

「短絡ですねぇ、私は違いますよ」


 まぁ、接触してきたら話は聞いてもいいかもしれませんね。なにやら企みがありそうですし楽しそうです。


「その言葉、本当だろうな?」

「本当ですよ。わさわざ面倒な殺し合いをやる意味もありませんし」


 目の前の二人を同時に相手をするとさすがに私も死ぬでしょうしね。一人ずつなら殺れるかもしれませんがそんな賭けを今はする必要がありませんし。


「信じよう、リリカ」

「それはどうも」


 別にどうでもいいんですがね。

 そう考えながら答えると二人は席を立ちます。そして酒場の出口に向かい歩き出しました。


「これからあなた達はどうするんです?」


 私に背を向けた二人の背中に向け問いかけます。

 すると二人は振り返ります。


「予言では北に予兆ありと出ていた。ならば北に向かいながら情報を集める予定だ」

「なら会うことはないでしょうね〜」


 去るのを止める気はありません。私は手をひらひらと振りながら嫌そうな顔をする二人を見送るのでした。

ふふふ、ありきたり

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