表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
90/332

服に助けられるとは

「この卑怯者!」


 私が叫ぶと同時にベシュが先程と同じように一瞬で間合いを詰め、斬りかかってきます。しかも無駄にいい笑顔を浮かべて。完全に殺る気漲ってますが、はいそうですかと殺されるわけにはいきません。


 横に振り抜かれた大剣を屈んで躱します。剣圧?というのでしょうか? それに私の髪が数本切り裂かれます。


「長老みたいになったらどうする!」


 長老の頭のハゲは剣を躱し損ねて頭皮を削られ毛根が死んだからああなったと聞きます。

 あんな間抜けな姿には死んでもなりたくありません!

 叫びながら手にしている妖刀を即座に抜き放ち、ベシュの首を狙い刃を突き上げます。もちろん殺る気です。

 ベシュ、驚愕。

 しかし、冷静です。

 当たれば喉を切り裂き致命傷になる攻撃であるものを首を振ることでかろうじて躱します。いや、刃は薄く喉元を斬ったようですが致命傷には程遠いです。

 それどころか私に向かい蹴りが放たれていました。咄嗟に気づいたので床を蹴り、ベシュの間合いから急速離脱。放たれた蹴りは空を切りました。危ない危ない。

 あんなやばそうな蹴りを何気なく放つあたりやはり戦闘狂ですね。


「ちっ、今ので死ねばよかったものを……」

「弓がないから倒せると思ったのに」

「私も弓だけでは生き残れないことはよくわかりましたからね」


 売り言葉に買い言葉。ええ、わかってますよ。バカだってことぐらい。ですがね、


「「あなた本当にムカつく!」」


 向こうも同じ気持ちだったようで同じような言葉を紡ぎます。

 うわー、あいつと同じとか気分最悪です。さっさと斬り捨てましょう。

 今度はこちらから攻めるべく一気に踏み込みます。大地が割れ、破片が飛び散りますがその破片が再度床に落ちる前にはすでに私はベシュの懐に潜り込み、首を落とすべく横薙ぎに刀を振るいます。が、流石に読まれていたのかベシュは一歩後ろに下がるだけで意図もたやすく避けやがりました。

 相変わらず目がいいですね。

 振り抜き、完全に無防備になった私に向かいベシュが大剣を振り上げ押しつぶすかのごとくの勢いで私の頭上に振り下ろして来ます。

 あー、これは避けれませんね。

 こちらに迫る狂刃を冷静に見ながらもとりあえず頭を振り頭部に当たるのだけは回避、しかし、刃は私の体に叩きつけられました。

 骨の砕ける音が私にも聞こえてきます。ああ、なんと不愉快な音なんでしょうか。

 痛みで身動きが取れない私をあざ笑いながらベシュは振り下ろした剣を蹴り上げ、宙に浮かすと横薙ぎに振るいますが、今度は刀で受け止めますが、妖刀からがなんだか悲鳴を上げるような音がします。

 その違和感を調べる間も無く、振り抜かれた勢いを殺しきれなかった私は放たれた弓矢のごとく飛び、近くにある民家の壁に叩きつけられました。


『リリカ!?』

『ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』


 くーちゃんの声と観客のやたらとうるさい声が耳に入ります。

 頭も打ったせいか視界がグルグルと回りますね。あとどこか切りましたか? 生温かいのが額から流れてる気がします。


「めちゃくちゃ痛いんですけど? ベシュぅぅぅぅぅ!」

「やっぱりエルフの服は両断できなかったかなぁ〜」


 自分の振るった大剣と私を交互に見ながらベシュは不満気な顔をしています。


「骨は砕いた。それは感触から判るから私の勝ちかな? リリカ」


 大剣を幾度もふり、再び切っ先を私に向けてきました。

 ベシュの握る剣は私にも見える位置に掲げられます。そしてその掲げられた刃には一滴の血も付いていないです。

 さすがに斬られたら死んでしまいますからね。


「今回は完全に服に助けられましたね」


 このエルフの里の服は特別性。剣や槍では貫けないという凄い代物なんですから。

 でも斬られた衝撃だけは完全には殺しきれずに私の骨を砕いてくれましたが……

 武術を扱う人ならば後ろに飛んだりして衝撃を逃がしたりするらしいんですけどそんなの私にできるわけないでしょう?


「どうする? 降参する?」

「冗談」


 軽口を叩きながら魔法のカバン(マジックバック)から目当ての物を取り出しベシュに見えるようにします。

 私の手元にあるものを見た瞬間、ベシュの表情が不機嫌なものに変わります。


「お得意の薬ね」

「ええ、あなた方の実験のおかげで作り上げた薬ですよ」


 私の言葉にオーランドとガルムが苦い表情を浮かべます。一番実験に付き合わされた二人ですからね。


「安心してください。超回復薬はありません」


 火柱で腕焼いた時ので無くなりましたしまた作らないといけませんね。

 今取り出したのはただの痛み止めです。

 痛み止めを一気に飲み干し、試験管を投げ捨てます。

 しばらくすると胸に広がっていた熱を持っていた痛みが止まります。

 私は妖刀を杖のように支えに使い立ち上がり、口元を歪めます。


「次はベシュ、あなたを泣かします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ