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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
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引きこもりを引き摺りだす方法(思案)

 ミノタウロスの襲撃? (そう言われているらしい)から三日。私はというと冒険者ギルドが用意してくれた宿、『もうけ亭』で過ごした。

 いや、正確には私とアレスがだけど。

 魔力暴風のせいでティスタニアの門近くまで吹き飛ばされた私達はそのまま意識を失ってたらしい。聞いた話では他の冒険者はミノタウロス襲われたりして死者が出たり魔力暴風に巻き込まれティスタニアの壁に叩きつけられ死にかけた人もいたらしい。そこは運がなかったってことで。

 で、話は戻る。アレスが部屋から出ようとしないのだ。

 外傷は私同様で特になし。ただ、かなり怖い思いをしたらしくガタガタと部屋の隅で震えているのだ。


「ほら、アレス。いい加減ギルドにいきますよ。宿代もただではないのですよ」


 ドンドンとアレスのいる部屋の扉を叩きます。どうせまた部屋にいるのはわかってますし。


『ですよ』


 私の肩に座りながら満面の笑みを浮かべながらくーちゃんは先ほど市場で買ったリンゴを頬張っています。どうやらちゃんと甘かったようです。


「ボクは……ボクはもう冒険者としてやっていく自信がありませんよ」

「まだなりたてでしょ? なら大丈夫だよ」


 正直慰めるのもめんどくさいんですが、夜な夜な横の部屋で、


『いやだぁ、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないぃぃぃぃ!』


 などと言われ続けると流石に寝にくいのでさっさと普通に戻って欲しいんですがね。

 まぁ、今日はこれくらいにしときましょう。私はため息を尽きながら階段を降りるのでした。


「おぅ、今日もだめだったのか?」


 階段を降りた私に声をかけてきたのはこの『もうけ亭』のマスターである。顔中に傷が目立ち右目には眼帯までつけて歴戦の戦士のような見た目だ。


「無理ですね」

「初陣でミノタウロスに出会うとは運がなかったとしか言いようがねぇな」


 グラスを拭きながらマスターが笑う。

 あれから聞いた話だとティスタニア周辺ではミノタウロスが森からでてくることは珍しいらしく、この初心者の街ティスタニアではミノタウロスは恐怖の象徴で恐れられているらしい。


「この街じゃミノタウロスが出てから十日ほどは冒険者がクエスト受けなくなるんだよ」

「ほう、それはなんで?」

「簡単さ、トラウマになるやつもいればミノタウロスを怖がる奴もいる。なにせこの街じゃ死の象徴だからな。だからこそ、ミノタウロスが出たこの時期にランクが上がる奴は冒険者として大成するってジンクスもある」


 大概は怖気ずくがね。とマスターは笑う。

 なるほど、つまり稼ぎ時であり名前の売り時というわけですか。


『ギルド行く?』

「そうだねー ランク上げて次の街も見たいし」

「嬢ちゃん、ランクは?」

「昨日ランク上がったからEなんだ」


 冒険者ギルドに仮の冒険者カードを返しに行った時に説明を受けたが冒険者のランクは一番下がF、一番上がSSらしい。


「ランクEなら無理せず確実に狩るんだな。命あっての物種だぜ」

「善処しますよ」


 私は笑いながら『もうけ亭』を後にするのであった。


 ◇◇


「冒険者ギルドにようこそー ってリリカさんですか」

「その人を見て態度変えるのやめたほうがいいと思う」


 冒険者ギルドの扉(結局修理代を出さされた)を開けるとフランが笑顔で挨拶、そしてげんなりした顔に一瞬で変わった。なかなかに失礼な対応ですね。


「そうは言いますけどね。ミノタウロスが出たのにひたすらにクエストを受けてるのは貴方くらいですよ? エルフは勤勉なんですか?」


 フランに冒険者カードを手渡し、周囲を見渡すと確かに初日に来た時は人で賑わってたギルドも疎らにしか人が見当たらない。


「少なくとも私の知るエルフは勤勉ではないです。その日一日の食料を狩る。それ以外はは特になにもしないですし」


 刺激が少ない生活を送ってるのがエルフ、というのが私の見解ですね。


「そうなんですか、あ、アレス君はどうです?」

「いつも通り部屋に引きこもってガタガタ震えてます」

『ガタガタ』


 ここ二日間繰り返されている問答をしながらフランはクエストの依頼書を私に渡し、私は新しく買った魔法道具(マジックアイテム)、『翻訳メガネ』を魔法のカバン(マジックバック)を取り出し装着する。見た目は普通のメガネですが装着するとあら不思議、今までわけのわからなかった中央大陸文字が私の読めるエルフ文字に変わって見えるじゃありませんか! この効果でお値段なんと銀貨十枚!(買う人がいないらしい)いいお買い物でしたね。

 フランが『メガネをかけた知的なエルフも萌えるわ!』などと意味のわからないことをいいながら悶えてるけど見て見ぬ振りをしておいた。

 討伐系の依頼書を二枚抜きだしフランのほうに渡す。


「今日は何のクエストを受けられるんです?」

「森の中での討伐系」


 私がそう答えるとフランは渋い顔をします。


「うーん、あんまり森の中でのクエストはオススメしたくないんですよね」

「ミノタウロスが出たから?」

「はい、だから危険なことはやろう共に任してリリカさんは安全なクエストを受けていただきたいですね。エルフへ至高の宝なんで!」

やろう共って」


 なにか男で嫌なことがあったんだろうか?

 実際のとこはエルフとしてのスキルを使うなら森の中のほうがありがたいんですよね。なにより精霊が多いですし。


「まぁ、止める権限もないですのでいいですが気をつけてくださいね?」


 冒険者カードを受け取り魔法のカバン(マジックバック)に放り込み扉に向かい歩き出し、不意に足を止めフランに振り返る。


「フラン、引きこもりを部屋から出す方法って知ってる?」

「え、引きこもりを?」

「うん」


 少なくとも私より長生きしてるわけだしなにか知ってるかと思って尋ねてみた。

 フランは腕を組み悩みながら、


「無理やり引き摺り出して引き摺り回せばいいんじゃないかしら?」


 一言そう言った。

 天才だ。

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