誇りはどうした!? 誇りは!
とりあえずは酒場を後にした私たちは主に私がフラフラとしながら歩きます。
酒場からはどうやら娯楽が少ないからか何人かが酒瓶などを片手に私たちの決闘を見るためについてきているようです。
「この辺でいいですかね」
私が立ち止まったのは街の丁度中心らしき広場です。なにも物がないので戦うには丁度いいでしょう。
私が振り返りベシュを見ると彼女は好戦的な笑みを浮かべながら先ほどテーブルを叩き切った大剣を振るい構えます。
瞬間、その場にいた観客達が歓声を上げます。
その様子を見ていた私は唖然としてを見ていました。
「あ、戦うんですね」
お酒の酔いで頭が回りませんね。条件的には私は戦わなくてもいいんですが
どうやって戦いましょう?
鳴り止まない歓声で耳を傷めながらも私は思案するのでした。
「たまに思うんですよ」
『何を?』
目の前で大剣を振り回しながら準備運動らしきものをしているベシュを白けた目で見ながら呟きます。
「面倒ですよねぇ、コミュニケーション能力が少ない人はって」
『それ、リリカもじゃないかな?』
私の場合はコミュニケーションを取ろうとしないだけです。取ろうと思えば取れます。面倒ですが。
『リリカ、勝算はあるの?』
「負ける気ならありませんよ」
くーちゃんの質問に私は素早く返事を返します。
この決闘を受けた段階でベシュは私に対価を払わないといけなくなってるんですから。
ですが、たた負けるのはあねはむかつく天然くんが調子に乗るので適度に痛めつけてやる気ですが。
それになんだかんだいっても彼女は認めたくありませんが才能の塊ですからね。バカですが。
どのような攻撃がくるか全くわからないのですからね。
こちらもそれ相応の手立てを考えないといけないわけなんですが……
「やりにくいんですよね」
『そうなの?』
「ええ」
何がかと聞かれるとこの『場』がとしか言いようがないのですが。
普通は闘い、決闘の場といったらもっと厳粛な場でするものですが。今回は非公式のものですから場所も適当ですし。
住民も慣れた感じですし、意外と戦争になれてるような感じがします。
「まぁ、年中どこかの国と戦争しているような国ですからね。住民も感覚が麻痺しているんでしょう」
これだけを見ても戦争大好きの国なんてろくなものじゃありませんね。
「そろそろ始めてもいい?」
素振りを終えて体が温まったのかなにやら湯気のようなものが上がってますし。相変わらず馬鹿みたいな体力の塊ですね。
「そこのオーランドとガルムには手伝って貰わないんですか?」
ベシュのかなり後ろの方で諦めの表情を浮かべている二人を顎でさします。
「あの二人は私の付き人よ。手出しはさせないわ」
ああ、ならあの二人には里で処罰が下るでしょうね。
この破天荒娘を止められなかった事で。
ベシュが大剣を構えたままニタリと悪意をまとった笑みを浮かべました。
ああ、悪い笑顔ですね。
「今日こそ勝つからね」
「その執念を別のものに向けて欲しいですよ」
私も魔法のカバン《マジックバック》から弓と全てを弓矢にを取り出し装着して行きます。次いで矢筒を腰に下げます。遊びでなら妖刀でいいんですが腐ってもベシュはエルフの里で上から二番目の称号大戦士を持っています。馬鹿でも戦闘においては馬鹿みたいに強いのです。
「その忌々しい古代魔導具ごと斬るからね!」
本人的にはウキウキしているんでしょうが私としては凄く粘着質で気持ちの悪い執着をされているので気分は最悪ですね。
「あれだけ大口を叩いたんですからあっさりと射殺されたりしないでくださいね」
「安心してリリカ、今日は腕位切り取るから!」
ベシュが大剣を私がゆみをを構えます。
ざわめいていた観客のざわめきが徐々に小さくなっていきやがて完全な無音になります。
「くーちゃん、全開で」
『りょーかい』
私の指示でくーちゃんの精霊魔法が矢筒に入っている矢に付与。これでこちらの戦闘準備が整いました。
「現エルフ族が長老の孫ベシュ・ホンロード!」
突然叫んだベシュに私はきょとんとして目を丸くします。
……ああ、名乗り挙げですか。相変わらず名乗るのが好きですね。名
まぁ、今回は決闘ですし付き合ってあげましょう。
「エルフ、リリカ・エトロン……」
「シャァァァァァァァァァァ!」
名乗りを上げている途中で切りかかってきた!?
誇りはどうした!? 誇りは!
驚愕しながらもとりあえずは後ろに飛びのき振り下ろされる大剣を回避。しかし、弓は完全に躱しきれずに真っ二つに叩き斬られ、切りつけた大剣は地面に叩きつけられ、地面に降り積もる雪を爆散さし、大地を砕きながら大きな穴を開けました。
『ワァァァァァァァァァァァァァッァァァァ!!』
ベシュの攻撃を見た周囲観客たちが大きな歓声を上げます。
そんな中、私はかなりの不機嫌です。
「なに!? 名乗り挙げの最中に攻撃するのがエルフ族長老の孫ですか!」
もしそれが誇りとか言うなら最悪ですが。
そんな私の怒声に対してベシュはキョトンとした顔をしていました。
「何を言ってるの? リリカだって里にいる時は名乗り上げの最中で蹴り入れて来たじゃない」
「……」
『リリカ』
「……忘れました」
コイツ、なんて自分に都合のいいことを覚えてるんですかね! さっきの斬撃て酔いが一瞬で飛びましたよ。
よし、ぶっ飛ばしましょう
即座にそう決めた私はより腰に下がる妖刀ぽちの柄を軽く撫でるのでした。
世の人間は大半が自分に都合のいいことしか覚えていな