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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
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フリーダム大精霊

 炎の花弁が雪を燃やしながら降ってきています。

 その炎を撒き散らしている本人はというと久々の自由をかみ締めているのか無自覚に災害の現況である紅蓮の炎を周囲に撒き散らしています。


「熱い! あいつ下のこと考えてないですね!」

『あついあつい!』

『とけるー』

『べちゃあぁぁ』


 私は避けていますが雪の精霊は直撃しているのもいるらしく一瞬にして溶けるようにして消えていきます。

 この炎をかなりやばいですね。


『あの人はテンションが上がると周りが見えなくなるんだよ!』


 くーちゃんそういうことはもっと早く言って欲しかったですよ。そうしたらあんな迷惑な大精霊、外には出さなかったのに。

 どうにかしてこの迷惑精霊を何とかしなくてはドラクマに向かうこともできません。

 何とかしなければ。


「ん?」


 足元の微妙な振動に気づきます。

 しかもこの感覚はつい先日あざ割ったばかりの非常に嫌なものです。

 嫌な汗が流れ、体に寒さではない震え、悪寒が走り、私の警戒度は最高値まで跳ね上がります。


「コレはまずいです!」


 かなり危ない状況です。

 また生き埋めになりかけるなんてゴメンですよ!


「ちょっと!そこの大精霊! いい加減いバカみたいに笑ってないで自分の尻拭いをしてください!」


 いまだに上空で奇声を上げながらクルクルと踊る大精霊にイライラとしながら叫びます。

 すると私の声が聞こえたのかゆっくりと私の射るところに向かい降下してきました。


『もう、せっかくのいい気分の所に水を刺さないで貰いたいなぁ』


 腰に手を当て真っ赤ん瞳を私に向けながら『私怒ってます』と言わんばかりの表情を浮かべた大精霊イフリュートが私の正面にゆっくりと着地しました。

 背中には四対の炎の羽、体も紅蓮のごとし紅のワンピースです。ですがこの環境で肩まで見えるような服装でありながら彼女を見て寒そうと言う感想は一切湧いてきませんでした。

 っとそんなことはどうでもいいんですよ。


「あなたの気分なんてどうでもいいんですよ。問題は! 私の死活問題なんですよ!」


 大精霊の機嫌なんて知ったこっちゃありません。

 それで私は死ぬなんてゴメンなんですよ。


「さっさと」


 轟音を上げながら私たちを飲み込まんとする白の化身、雪崩を指差します。


あれ(雪崩)なんとかしてください」

『あの、私、一応大精霊なんですけど?』

「やれ」

『はい・』


 若干の怒気を込めながら呟くとあっさりと了承してきました。意外と打たれ弱い大精霊ですね。

 こちらを涙目でみながらトボトボといった様子で私たちの前に出ます。

 なんというかかわいいものですが謝る気は一切ありません。


『舞降れ、ハナ


 静かに呟いたイフリュートは手を頭上に掲げると透き通るような色彩を放ち、刃に見たことのない紋章が刻まれている大剣が彼女の腕に収まりました。

 明らかに彼女の身の丈を超える大きさの大剣をイフリュートは振り上げます。

 瞬間、透き通っていた刃が深紅に染まりあがります。そして同時に彼女の背中の四対の羽が我先にと言わんばかりに彼女の持つ大剣、ハナに向かい流れ込んでいきます。


「あつぅ!」


 既に後方にいる私たちにまで届く熱気と魔力を宿した剣を毅然とした態度で手にしているイフリュートの後姿はまさしく大精霊にふさわしい呼び名であることでしょう。


『全てを溶かしちゅくせ! いだぃ』

「噛んだ!?」


 いや、今一番の決め台詞じゃないの!?

 そこで噛んだらダメでしょう!? 大精霊!

 しかもなんで振り下ろそうとした大剣までさげてるの! なんでうずくまってんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!


『いだい、いだいよぉぉぉ』

「う、打たれ弱すぎる!」


 こんな子はエルフの里では絶対に生きていけませんよ。

 しかし、現状の雪崩の猛攻を防げるのはこのフヌケのような大精霊だけとは!


『リリカ!魔石は!?』

「炎の魔石ばかり使いすぎて炎だけありません!」


 うらむべきは過去の自分でしょう。アア、一時間前の自分に言ってやたいですね! この大精霊を助けるなと!


「イフリュート!あなたはやればできる子です! さぁ、早く全力を出すのです!」

『やだぁ、おうちかえるぅ』

「終ったら帰っていいですからさっさとアレ、消し去ってくださぁぁぁぁぁぁぁい!」

『ぐすぅん』


 泣きながら立ち上がったイフリュートは先程のように毅然とした姿ではなくただただ泣き喚く子供のようでありながらも今の姿に似つかないハナを適当に振るい、


獄炎ゲヘナ


 小さく呟いた。

 刹那、ハナが紅の閃光を解き放ちました。

 光が吼えながら魔力を渦巻きながら私たちに迫り来る雪崩に直撃します。

 紅の閃光と雪崩が接触した瞬間、即座に蒸発。閃光はそれだけで収まらずに更に奥へと破壊の牙を伸ばしていきました。

 凍りついた世界を紅の閃光が奔るたびに大地を砕き、その軌道上に炎が揺らめき、生き物が生息出来ないような死の道を作り上げていきます。


「すごい」


 コレが大精霊の力ですか。

 同じ精霊でもくーちゃんとは桁違いの力ですね。


『ぐす、おうちかえる』


 ハナを地面に突き立て、膝を抱えて座り込むイフリュートを見て「見る人が見たら幻滅するんだろうな~」などと考えるのでした。

残念系大精霊さん、嫌いじゃない

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