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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
82/332

氷の中にはなんで?

 ドラゴンの襲撃から逃れ、雪の降る森に入り三日。

 別に遭難しているわけではなく只々気分で歩いている私達の歩みは非常に遅いものでした。

 というのも本来歩くべき道を外れ森の奥へと向かっているからです。

 初めは森に住む精霊達が私を見つけ興味深げに付いてくるだけだったのですがその内に、


『おく、おくきて』

『たすけててきな?』

『ばんばんうるさいの』


 などと言われコートを引っ張るものですから仕方なく奥に向かうことにしたのです。


「くーちゃん、彼らの言ってることわかりますか?」

『言ってるとおりだと思うけど?』


 ふむ、くーちゃんにも判らないみたいですね。

 用事も特にないですし、遠回りしても問題ないですからね。

 キラキラと輝く精霊さん達を置いながら雪の降り積もる森の奥へと歩みを進めていきます。

 私達の周囲を飛び回る精霊さんはどうも雪の精霊のようですね。

 こんな極寒の地で活動できるのは雪の精霊だけでしょうからね。もしくは大精霊くらいでしょうか。


「そういえばなぜくーちゃんは動けるんですか?」

『風で結界作ってるよ』


 え、なにそれ……


『寒くなくなるよ?』

「……それなんで私にかけてくれないんですかね?」

『言われてないから?』


 言わないとらかけてくれないとか酷い契約精霊もいたものですね。というかくーちゃんはそんなすごい事できたんですね、


『低位精霊ですから!』

「うーん、ランク的にすごいのかすごくないのか全くわかりませんね」


 そもそも精霊の位階がよくわからないんですよね。

 トップは大精霊と言うことはわかるんですけれど、そのしたがよくわからないんですよね。


『大精霊の下は中位精霊、その下は低位精霊、一番下は原始精霊っていうんだよ』

「ということはくーちゃん下からニ番目じゃないですか」


 実は大したことないんじゃないんですかね。


『人間だったらあんな長時間魔法使えないんだよ! そこのとこ判ってるの!?』

「わかってますよ」


 必死な顔でこちらに食いかかってくるくーちゃんを手で制しながら私は答えます。

 精霊魔法と人が使う魔法の一番の差、それは先程くーちゃんが言っていたように使える時間の差でしょう。

 一番判りやすく言うのであれば、私たち人、エルフが自身《中》の魔力を使い魔法を顕現さしているのに対して、くーちゃんたち精霊は外、つまりは自然から魔力を取り入れそれを使い魔法を行使しているのです。

 魔法使いならすぐにわかりますがこの差は歴然です。

 人、エルフなどは自身の魔力がなくなれば魔法は使えなくなりますが精霊は違います。周囲に魔力がある限り魔法を使い続けることができるのですから。

 これが皆が精霊と契約したがる理由の一端でもあります。

 しかし、低位精霊であるくーちゃんでこれほどの力を持っているのですから大精霊と言うのは凄い力を持っているんでしょうね。


「大精霊見たことありますか?」

『風の大精霊のセフィリア様なら見たことあるよ?』


 ほほう、いずれ私も見てみたいものですね。


『あの方は気まぐれだからリリカと話が合うかもしれない』

「是非合ってみたいですね。他には大精霊はいないのですか?」


 うーんとくーちゃんは腕を組み悩みながら考え込んでいるようでした。


『もう一人だけ見たことがあるけど、なんていうかこう、頭が残念な人なんだった』

「残念?」


 自分より下の階位の精霊に頭が悪い呼ばわれする大精霊が存在するんですね。


『こっちこっち』

『ちかずいてきた』

『あいつうるさい』

『なんとかしてー』


 雪の精霊がつい儀次に私にぶつかってくるように周囲を旋回し始めます。

 さてさて、目的地が近づいてきたみたいですね。

 すでに足元の雪が踏みしめるたびにガラスが割れるような音が鳴り響いてますし、雪は既に氷と化しているようですし。転んだら怪我しそうですね。

 雪の精霊たちに導かれるまま道なき道を歩いていくとやがて視界が広がり私の眼前には分厚い氷に覆われた湖が泉を現しました。


「おお、きれー」

『ピカピカー』


 眼前に広がる湖は磨き抜かれたような鏡のようキラキラと輝いており覗き込んだ私とくーちゃんの姿をしっかりと映し出していました。

 おお、本当に鏡みたいですね。


「でも、これ鏡みたいなただの凍った泉ですよね」


 周囲を漂う雪の精霊に尋ねると雪の精霊達は困ったようにゆらゆらと揺れています。


『ちがうちがう』

『じゃまなのなか』

『なかのやつうるさくて』

「中?」


 雪の精霊達の言うとおり凍りついた泉の中を覗き込むべく氷に顔を張り付か中をみます。


『だしてぇぇぇぇぇぇ!』

「ひぃ⁉︎」


 突如として覗き込んでいた私と氷を挟み込むようにして恐ろしい形相をした女の子の人の顔がアップで私の瞳に入り込んできました。


「な、なんですこれ……」

『じゃまなの』

『うるさいの』

『でてってほしいの』


 答えになってませんね。ですがこんな極寒の地にいるんですからきっと精霊でしょう。


「くーちゃん、あなた何か……」


 声を掛けべく振り返るとくーちゃんが苦悶の表情を浮かべながら頭を抱えていました。


「くーちゃん?」

『あああああ、なんで大精霊さまがぁぁぁ』


 え、これ大精霊?


『見てないでたすけてぇぇぇ』


 涙で顔をぐしゃぐしゃにした大精霊?を氷を挟んだ状態で見ながら私は怪訝な顔を浮かべるのでした

泉の中の女神も冬には閉じ込められるのです

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