白! 白! 雪だぁぁ⁉︎
「お肉! お肉! 美味しいお肉」
妖刀を適当に振るいながらブーツベアを適当な大きさにぶつ切りにしては魔法のカバンに放り込んでいきます。
妖刀はまたもや不服そうに振動してきましたが刃の付いてないほうをひたすらに岩に叩きつけたあと「このまま文句ばかり言うならへし折りますよ?」と告げると静かになり、今は大人しく肉を捌く刃物として使われています。
上下関係は大事ですね、
『まずはインパクトを与えて自分を上に持ってくる上下関係を作るのじゃ! 脅すのもありじゃ by長老』
まずは屈服から始まる人間関係というやつです。
大量のブロック肉が手に入ったのでしばらくは食料に困ることはないでしょう。
「でも不思議なんですが肉ばかり食べていると今度は別の物を食べたくなるんですよね」
そのときはそのときで考えたらいいんですけどね。
さて、食料は手に入ったことですし、再びドラクマへと向かうとしましょうか。
「で、くーちゃんとカトラスは何処ですかね」
戦ってる間に何処にいったのか。結構なスピードが出ていましたからね。
精霊であるくーちゃんは振り落とされても飛ぶ事ができるので問題はないでしょうが。
「問題はカトラスのほうですね」
死んでいたら馬肉として扱いましょう。
馬刺し、まえから食べてみたかったんですよね。
しかし、現実問題として合流する手段が全くありませんね。
こちらの居場所を伝える手段と言うものが全くありませんし。
「私の魔法に位置が判るようなものはありませんし」
こんなことになるのであればちょっとは魔法を真剣に習っとくべきでしたね。
派手な奴だけでも。
見渡す限り、白、白、白。
カトラスの足跡を探ろうにも上から降り注ぐ雪が徐々にですが確実に痕跡を消していってるわけですし、
探す手段がありません。
「あ、いい方法がありますね」
前提が間違っていたわけですね。
探すではなく探してもらう。しかも確実にわかる方法で。
思いつくや否や私は魔法のカバンに手を入れると城を攻めたときに使い大変役立ったアイテム魔石を数個取り出します。
「魔石で火柱でも上げれば嫌でも私の位置がわかりますからね」
手の中で数個の魔石を弄びながら私は笑います。
選んだものは火の魔石。
ほかの魔石でもいいかもしれませんが今回は攻撃力ではなく派手さ、エフェクトが必要なわけですよ。
「なにより暖かそうですし」
ブロック肉を作っている時からまた寒くなってきたのでそろそろ暖を取りたいんですよ。魔石で火柱を上げてついでに温まりましょう。
魔石の一つを特に何も考えずに魔力を軽く込め、放り投げます。
放り投げられた魔石は宙で閃光を放ちながら地面に音を立てながら落ちるとトグロを巻いた焔の柱を轟音を上げながら立ち昇らせました。
急に顕現した火柱のせいか周囲の空気が振動。ビリビリと体を震わせてきます。
「これだけ大きな火柱ならわかるでしょう」
天高く燃え上がる柱を満足気に私は見上げます。
あ、この炎で肉焼けますかね?
ブロック肉を幾つか取り出し、再び万能道具である妖刀くんの出番です。
鞘から抜こうとしたら凄まじく抵抗をしてきます。なんですか! 私がやろうとすることがわかるんですか!
やたらと抵抗を続ける妖刀でしたが本気を出し、無理やり鞘から抜き、即座にブロック肉を突き刺し、火柱に突っ込みます。
カタカタと抗議の声のごとく刀身が揺れます。
火柱が凄まじい高温なのか一瞬で肉の焼けるいい匂いが周囲一体に漂い始めます。
「いただきまーす」
妖刀に突き刺したいい匂いのする肉を火柱から取り出しかぶりつきます。妖刀はというとすでに諦めたようでした。
うわ、これ、おいしいですね! ブーツベア、実はいい食材だったんですね。
次から次へと肉を頬張りながらお腹を満たしていきます。
お腹が膨れたところでようやく妖刀を鞘に戻そうとすると妖刀はまたもや不服と言わんばかりに振動。
よく見ると刀身が油でテカテカと輝いていますね。
さすがにこのままではかわいそうですかね。
適当な布を魔法のカバンから取り出すとそれで妖刀の刀身を拭います。
その間も妖刀はカタカタと揺れています。いや、揺れてるのは、
「地面?」
振動しているのは妖刀ではなくどうも妖刀を握っている私のようですね。
不意に今まで感じていた熱が消えます。どうやら魔石の魔力が空になり火柱が消えたようですね。
火柱が消えたことにより視界が広がり前方がよく見えますね。
いやー、相変わらずの真っ白ですね。
足のしたから伝わる振動も徐々に大きくなってきてますし、目の前の白色も心なしか大きくなってきているような気が……
「いやな感じですね」
無意識のうちに一歩後ろに下がります。
しかし、視線は目の前の白色から話しません。
不意に視界の隅にあった木が白色に飲み込まれ、一瞬にして消え失せました。
「白! 白! 雪だぁぁ⁉︎」
あの白いの雪ですか⁉︎
あれはやばい!
そう叫び、一瞬にして危機レベルを最大までに引き上げられたその時には恐ろしい位の速度で迫ってきた雪に私は飲み込まれるのでした。
雪山でバカなことをしてはいけない