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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
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痛いのは嫌いです

 振るう振るう。

 ひたすらに剣戟の音が元謁見の間の響き渡ります。剣戟の音が響き渡るたびに小さな火花が華を咲かし、それと同時に私の痛みの悲鳴が上がります。


「いだい、いだい!」


 剣が触れ合うたびに衝撃が体に、主に左腕に伝わりそのたびに激痛が走ります。

 仮面で隠れていますがさっきから痛みで涙が止まりません。

 幸いというか首なしの王様は折れている左腕を狙い攻撃してくることはないので見て捌いていますが、これ以上続けたいものでもありませんね。

 おそらくエルフの服ならば防げたかもしれません。まぁ、斬り飛ばされないだけましでしたが。

 痛みを堪えながら振るう魔剣というのはどういうわけか力が入りにくいので困ります。


「こうなったら本気でやります」

『魔力使う?』

「自前で行きます」


 あまりくーちゃんに頼りすぎるのもダメですし。

 なにより私の腕をへし折った礼は自力でやります。

 元々魔力が少なく魔法が全然使えないわけですが身体強化はちゃんと使えます。

 魔力が体を多い、身体能力が上がる。シンプルな魔法です。

 早速、魔力が身体を覆ったのを確認すると魔剣を構え、今までよりさらに速い最高速で首なしに魔剣を振るいます。

 首なしは見えてないはずなのに剣を魔剣に当て迎撃。予想はしていましたが眼がないのにどうやって感じとっているのでしょうか? 原理がわかりませんね。

 しかし、避けられるのはわかっていたのですぐに魔剣を引き、跳躍。効果があるかわかりませんが身体を捻じり全身のバネを使った蹴りを叩き込みます。

 結果、首なしは一歩後ろに引いただけでダメージらしいものは見られません。


「やっぱり打撃系は効かないんでしょうね」


 打撃は効かない。かといって魔法は使えない。となると、


「斬り刻むしかありませんね」


 身体強化魔法を継続しながら魔剣のほうにも魔力を注ぎ込みます。

 すると私の魔力に喜ぶように小さく震えたような気がしました。

 ふむ、この剣も殺る気ですね。

 魔剣を軽く振るい魔力が放出され強化されているのを確認し、私は足に力を込めいつでも翔びかかれるようにします。


「だっ!」


 掛け声と共に床を踏み砕き間合いを零に。

 反応し切れていない首なしに向かい一閃。紅い刃はさしたる抵抗も受けずに首なしが剣を持つ右手を斬り捨てます。


「まずは一本!」


 振り下ろした魔剣の刃を返し、今度は振り上げるようにして武器を失った首なしの左腕を取りに斬撃を放ちます。しかし、首なしは残った左手で迫り来る刃を横から殴りつけ軌道をそらし、致命傷を回避してきます。まさか刃を殴りつけるなんて!

 追撃に備えすぐに態勢を戻し、剣を構えますが追撃はなく。首なしは今までの攻勢が嘘のように沈黙します。


「なんなんでしょうね?」


 行動がちぐはぐすぎて全く読めませんね。とても面倒です。

 再びこちらから攻めるとしましょう。

 魔力をさらに魔剣に注ぎ込むと魔剣の震えがさらに大きくなります。

 魔剣を握り締め、再び飛び込もうとした瞬間、


「何事だ!」

「賊だ! 賊が魔剣を」


 乱暴に開け放たれ謁見の間に騎士達がなだれ込んで来、喚きはじめました。

 なんとも興が削がれます。

 私は構えを解くと全身を強化していた魔力も切り、押し込み強盗のごとく入ってきた騎士達に視線を向けます。魔剣が不服そうに振動していますがこればかりはしかたありません。


「邪魔しないで欲しいんですがね」

「黙れ! 賊が! そこのデュラハンも貴様の仲間か⁉︎」


 ああ、確かに見方によっては私が呼び出したと思われてもおかしくないですね。その発想はなかったです。

 しかし、デュラハンですか。

 ちらりと元王様の方を見るとこちらも剣を振り回すことをやめ、不気味に沈黙しています。


「貴様、だまってないでなにか言ったらどうだ!」


 私が黙っていることを不服に感じた騎士の一人が怒鳴って来ます。


「ああ、面倒ですね。そうですよ私が『我輩』……我輩があのデュラハン? を使っているんですよ」


 くーちゃんに言われ慌てて我輩に訂正します。

 そして今回は悪役に徹しましょう。


「さて、我輩は目当ての物を手に入れたのでね。帰らしてもらいますよ。人間共!」

『ノリノリだー』


 呆れながらもくーちゃんが魔法を発動。それにより私の周囲に風が渦巻き、瓦礫や砂を巻き上げ私の姿を隠します。

 思いのほか強い魔法が使われたのか当たったらやばそうな塊も宙を待っていますね。時々何かにぶつかる音がしますし、騎士は生きてますかね?


『さ、逃げよ』

「そうですね」


 首なしが瓦礫にぶつかりながらもこちらに手を伸ばしてきていましたがその腕にかなり大きめの瓦礫がぶつかり、人体ならあり得ない方向に折れ曲がります。

 若干不完全燃焼な私は苛立ちをぶつけるかのように魔力を纏った魔剣を一閃。

 なんとなくで放った攻撃でしたが、振るわれた魔剣から紅い魔力が放たれ、さらにはその魔力で首なしは残った左腕で防いでいましたがあっさりと切断。何人かの騎士は視界が悪かったのでしょう。斬りつけられたのか血が舞い上がるのと悲鳴が耳に入りました


「……斬撃って翔ぶんですね」

『普通は翔びません』


 魔剣を見ながら感慨深く言った私の一言をくーちゃんは言葉の剣であっさりと斬り捨てるのでした。

デュラハンってどうやって攻撃感知してるんでしょうかね?

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