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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
54/332

頭が高い? あなたの座っている椅子のほうが高いでしょ?

「こちらでございます」

「ありがとー」


 フラフラと廊下をうろついていたところをメイドさんに引き止められ、謁見の間に連れて行ってもらいました。

 無駄に豪華な扉の前まで連れてきてもらい、メイドさんは一礼して去っていきまいた。


『なんだか嫌な金持ちの匂いがするよ』

「嫌な金持ちの匂い……」


 いったいどういった匂いなんでしょうか?

 むしろ嗅いでみたいんですぅが。


「……ま、入ってみましょう」


 扉に手をかけとりあえず開けてみましょう。

 豪華な扉の癖に何故か開く音は古めかしい感じがしますね。

 扉が完全に開ききると王の間に居る人全員の視線が私に集まってきます。

 まずは挨拶ですかね?


「こんにちは。エルフのリリカでーす」


 フレンドリーに行きましょう。

 いるのは貴族の皆さんのようですね。お高そうな服と丸々と太った人たちですし。

 ああ、この人たちがくーちゃんの言う嫌な金持ちの匂いの元凶なんでしょう。あんまりお近づきになりたくはないですね。脂っこそうですから。

 何故かみなさん、顔色が色々と変わっていますね。

 顔を紅くしている人もいれば蒼くなっている人もいます。

 蒼い人がこちらにズカズカと向かってなかなかに早いペースで歩いてきますね。


「あ、マリー」

「あ、マリー、じゃない! このバカが!」

「あだぁ! 殴った! グーで! 殴った! 暴力反対!」


 真っ蒼から真っ赤へと顔の色が変わったマリーが振り下ろした拳は私の頭上に寸分たがわず叩きつけられた。


「マリー、暴力ではなにも解決しません。まずは話し合いの席についてこそ交渉というものは始まるんですよ?」

「……あなたとはまだ数日の付き合いですがそれが心からの言葉でないことくらいわかります。というかあなたの行動も言葉より先に手が出るでしょうが!」

「ちがいますー 私は面倒だから先に手が出るだけですー ちゃんと話を聞いたら交渉に応じますー」


 私に有利な条件ならですけど。


「で、なにしてるんです? マリー」

「あなたは何しに来たんですか!」


 いや、気絶さしてきたのはあなたでしょうに……

 おそらくそう言っても聞く耳を持たないような気がしますね。ここは黙っておきましょう。


「何しにって…… 報酬を貰いに着たんですよ」

「そこは覚えているんですね」


 お金の約束はちゃんと覚えておかないと立派な大人になれませんからね。


「で、あのごつい人が王様ですかね?」


 この前助けたお姫様の横には馬車に一緒にいたメイドさんが。反対にはキラキラと輝く悪趣味な王座に腰掛けた男の人がいました。

 顔に幾つもの傷がついていてかなりの厳つさですね。お姫様と血が繋がっているとは思えない強面です。お姫様は母親似なんですかね? 唯一の共通点は緑の髪ですね。

 その厳ついおっさんを指差しながら告げると謁見の間がざわっとしました。


「え、違いましたか?」


 少し不安になって横のマリーを見るとなんだか可愛そうなくらい真っ蒼でした。

 次いでお姫様の方に目を向けると目が合いました。お姫様は軽く微笑むとこちらに向かい手を振ってきたのでこちらも手を振り返しておきましょう。

 それから横の強面さんに視線をうつすと額に青筋が走っていますね。


「たかがエルフが分際で頭が高いぞ」


 おお、顔に合った渋い声ですね。

 結構イラついてるのが判りますね。


「私より高い位置に頭があるのに頭が高いとか…… 眼がおかしいんですか? 人間」


あの人の座っている椅子、明らかに私より高い位置にありますよ?


「リリリリリリカァ!?」


 誰ですかリリリリリリカァって。後、なんでそんな悲鳴みたいな声出してるんですか? マリー。それに周りに控えていたおそらくは守備兵の皆さんも武器を構えて不審者でもいましたか?


「フフ、面白い。エルフ、我が娘を助けたことに関しては感謝はしておる。貴様の望みはなんだ?」


 厳ついおっさんが軽く笑ながら手を軽く上げると私に向けられていた武器が降ろされます。

 ああ、私に対して向けられていたわけですか。全く、こちらは敵意なんてないというのに。


『悪意はあったでしょ?』


 それは否定できませんね。上から目線の人とは友達にはなれそうにありませんね。私、友達は選ぶたちなんで。

 さて褒美を選ばしてくれるということですが、ふむ。


「ちなみにマリーは何をもらったんです?」

「わたくしは金貨ですわ。入り用ですし」


 金貨か、確かに一番無難ではありますけどそんなにはいらないんですよね。なくなったら奪えば言い訳ですし。


『不謹慎なこと考えた?』


 勘がいいですね。

 しかし、そうなると欲しいものなんて……


「王様の横にある剣はなんです?」


 私の瞳が王様の横に立てかけられている漆黒の剣に引き寄せられました。

 不思議な感じがしますね。魔力ですかね?


「これは我がレンブルム王家に伝わる魔剣アルガンだ」


 王様が誇らしげに横の魔剣アルガンを見やります。

 ほほう、魔剣ですか。


「欲しいものが決まりました」

「ほう、なんだ?」


 鷹揚な態度で尋ねてくる王様にもちゃんと見えるように私は魔剣アルガンを指差します。


「その魔剣をください」

「たわけ。何をふざけたことを言っておる」


 いやかなり本気なんですが……

 あの魔剣、かなり興味がそそられるんですが断られては仕方ありません。


「じゃあ、金貨でいいです」

「うむ、大臣」

「は!」


 王様が告げると大臣がトレーの上に重そうな皮袋を乗せて持ってきました。


「こちらが褒賞となります」

「はーい、それとなんですが……」

「なんでしょう?」

「あなたのそのクリン! としたヒゲを触っていいですか?」

「はぁ?」


 いや、気になるんですよヒゲ! クリンとカールしてるヒゲがとても!


「ま、まぁ構いませんが」

「では、」


 ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ


「撫で過ぎです!」

「アダぁ!」


 無心で撫で回していると大臣に殴られました。

 あまりの触り心地のよさに我を忘れかけるところでしたね。


「これにて報償授与を終了とする。冒険者よ、クエストに励むが良い」


 いちいち癇に障る言い方をしながら王様は謁見の間から出て行きました。腹が立ちますね。


「リリカ、私たちも帰りますよ」

「はいはい」

「はいは一回!」

「はーい」


 口うるさい母様のようなマリーの後ろを追い、私も謁見の間を後にするのでした。

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