騎士のパラディアン帝国
騎士のパラディアン帝国
騎士は強い、騎士かっこいい、騎士サイコー! とかわけのわからないことがなぜが街に入るに立てかけてる看板にデカデカと書いてあるらしい。らしいというのは今だに私が文字を全部読めないのでマリーが読んだのを聞いたからだ。
いい加減に覚えないとまずいかもしれません。
「それでは私達は王城に戻ります。後ほどいらしてください。報酬をお渡ししますので」
「はーい」
青い顔で必死に笑顔を浮かべながらメイドさんに返事をします。姫様はというとすでに王族というか女性が見せてはいけないようななかなかにやばい表情を浮かべ、ぐったりして別の馬車に乗っていました。おそらく街中を移動する用の馬車なんでしょうね。何人もの騎士が周囲を威嚇するように守護しています。
「では、マリー様、リリカ様、お礼のほうは後日に必ず。うげぇ……」
「姫様!」
馬車の窓から顔を出し挨拶をしていた途中で顔色悪く嘔吐きメイドさんに馬車の窓を閉められ、なんとも言えない音が馬車から聞こえるのは聞こえないふりをしといて上げましょう。私は空気が読める女ですからね。
やがてゆっくりと動きだした馬車を見送りながら私は横でぐったりしている人に声をかけます。
「いつまでぐったりしてるんですかマリー」
姫様よりは幾分かマシですがそれでもかなり顔色が悪いマリーを呆れたような眼で私は見下ろします。冒険者の癖になんたる様なんでしょうね。
「リリカさん…… わたくしの知る限り、馬車は飛びません」
「新たな発見ですね」
「……もういいです」
うん? なにか諦めましたね。
まぁ、いいですけど。
『リリカ! あっちにとってもいい匂いの果物が!』
なせがテンションの高いくーちゃんは言うなりすごい勢いで飛んで行きます。なんでしょう? あのテンションは。
「王城には後でいいですよね? 姫も後日と言ってましたし。あなたも体調悪そうですし」
「ええ、それでいいですわ……」
馬車で転がりまくって打ち付けたのかのか服が血塗れですしね。ああ、顔色が悪いのは貧血のせいでもあるわけですか。
「では私はくーちゃんを追いかけますが何処で集まりますか?」
なにせ道には人、人、人。
はぐれたら再び集まるまで時間が掛かりそうですからね。
「少ししたら火矢でも上げましょうか?」
「やめてください! 下手したら捕まりますわよ⁉︎」
里では集合する時はそうしていたんですけどね。
人間の里では違うようです。難しい。
「この街は中央通りの真ん中に噴水があったはずです。そこで待ち合わせをしましょう。くれぐれも騒ぎを起こさないようにしてくださいね?」
「ははは、私程常識人はいませんよ?」
「……いい加減自分の言葉に疑問を持っていただきたいものです」
疲れた声を出すマリーに手を振りながら私はくーちゃんを追いかけることにします。
追いかけながら周囲を見ているとやたらと活気がありますね。そこいら中に露店が並んでいますし、見たことのないものが多いです。
「ただ、問題はそれが良い物なのか悪い物なのかがわからないと言うことですね」
商人じゃないですし物の良し悪しは判断できませんからね。値札に書いてある数字が適正かどうか全くわかりません。
『リリカ! 早く早く!』
随分と先にいるくーちゃんがクルクルと回りながら催促してきますので少し急ぐ足で歩きます。
『これこれ!』
「どれです?」
くーちゃんが指を指した物はリンゴではなく緑の塊でした。
「なんですこれ?」
『わからない。でもすごく良い匂いがするの!』
そんなヨダレ流しながら言わなくても。
「これはなんです?」
この露店の主にくーちゃんが欲しそうにしている緑の塊について尋ねます。
「ああ、そいつは南大陸でよく作られているメ•ロンってものさ」
「メ•ロン?」
「ああ、なんでも精霊が好む匂いを発してるらしくて精霊には大人気ということらしいぜ」
「ほほう」
ということは南大陸には精霊がいっぱいいるのかもしれませんね。好きな果物なわけですし。
隣のくーちゃんを見るとヨダレをダラダラと流しながら視線は完全にメ•ロンに向けられています。
「ちなみにいくらです?」
「大量に仕入れたがあんまり売れんのでな。銀貨一枚でどうだ?」
意外と安いですね。
とりあえずくーちゃん用に買うとしましょう。露店商に銀貨を一枚渡し、メ•ロンを受け取ります。そのメ•ロンをそわそわしているくーちゃんに渡すとすごい勢いで食べ始めました。
精霊が見えていないであろう露店商は目の前のメロンがいきなり消え始めたことに目を見開いています。
まぁ、普通はそうなりますよね。見えていなければ。
『美味しかった』
それはよかった。満足そうな顔をしているくーちゃの頭を軽く撫でながら私とくーちゃんは露店を楽しむのでした。
常識人ってどんな人なんでしょうね?
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