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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
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いざ王都まで!

 ガタガタと揺れる馬車の中、私はご機嫌で外を眺めています。


『あれなに?』

「なんでしょうね?」


 くーちゃんも一緒に外を眺めています。気になるものがあればすぐに私に尋ねてきますが大体私にもわかりません。


「あれはなに?」

「あれは今、王国自慢のトウモロコシ畑になりますリリカ様」


 にっこりと笑いながらメイドさんが答えてくれます。


「我が国の特産物ですの」


 メイドさんの隣ではニコニコと笑いながら緑の髪をした少女が笑っています。この子が王族らしいです。


「エルフとは恐ろしいですね……」


 御者台のマリーがボソリと告げるのが聞こえました。聞こえてますよ?

 なぜ、この二人がここまで好意的なのかと至極簡単。エルフ式記憶操作術を使ったのです。

 あまりにメイドさんが悲鳴を上げるものだったのでイラついた私がすぐさま行ったのです。

 やることは簡単。対象の頭に四十五°の角度で鋭い衝撃を与えるのです。うまく行けば衝撃を受けた前後の記憶がなくなるという優れた記憶操作術なのです。

 久しぶりに使うので昏倒していた騎士達に先に使って見たところ上手くいかなかったのか三人とも長いお休みを取ることになりました。

 これをすることで泣き叫んでいたメイドさんとお姫様はあら、不思議。馬車の扉を開けたところからの記憶がないという素敵な状態になりました。

 そして『馬車が魔物に襲われていた所を助けた。騎士達は魔物に殺されてしまった』という嘘の話をしたところあっさり信じました。

 箱入り娘は容易いですね。これで人質や誘拐などしなくても楽に王都に入れるというものです。


「……誘拐とか話に聞いたことがあるだけですからやってみたかったんですけどね」

『心の声は漏らさないようにね?』


 わかってますよくーちゃん。姫様を助けたから褒賞まで貰えるんだから黙ってます。


「ところでリリカ様」

「ん? なんです?」

「リリカ様はエルフの冒険者という話ですが」


 姫様の大きな瞳をキラキラと、輝かしながら私に詰め寄るように身を乗り出してきます。近い近い!


「そ、それがなにか?」


 姫様の異様な迫力に気圧され私は逃げ場のない場所の無い馬車の中でありながら後ろに下がります。


「是非旅のお話を聞かせていただきたいんです!」

「めんどくさいので嫌です」


 そんな話を聞かせるような旅でもありませんしね。旅の話をするとどうしても人を殺したときの話もしなくちゃいけなくなりそうですし。隠すことでもありませんが面倒ごとに巻き込まれるのはごめんですしね。


「そこを何とか話してあげてはいただけないでしょうか?」


 再び外の景色を眺めようとした私の前にメイドさんの顔が入り込んできます。

 何なんですかね。無駄に威圧感ありますよ。


「姫様はあまり城から出られることが少ないので外のお話は貴重なのですよ」

「ふーん」


 いわゆる箱入り娘とか言うものですかね。


「でも面倒なことをするのは嫌です」


 自由に旅とかしたいから里を出たわけですし。

 人に命令されるのは嫌いですね。

 王族は興味はありますが命令される筋合いはありませんから。


「話していただけるだけで報酬をお渡ししますが……」

「いいでしょう!」

『手のひら返しが早い!?』


 お金に罪はありません。それにくれるというものは貰っておきましょう。

 さてなにから話をしましょうかね。

 瞳を輝かしている姫様を見ながら話す内容を私は思案するのでした。


 ◇◇◇


 馬車を飛ばすこと数時間。

 当初の予定であった街ではシュバルツの首だけを換金するとなんと金貨が百枚ほど手に入った。

 どうやらなかなかに名が売れていた傭兵団だったらしく近々、騎士団が派遣される予定だったとギルドで話を聞きました。その前に狩れて運が良かったですね。

 もともとはこの街で王都息の馬車に乗る予定だったんですが馬車を手に入れていることですし。私たちは特に待つことも無く先に進むことができるわけです。

 そのため、食料と水だけを購入し再び馬車を走らせるのでした。

 馬車の御者をマリーと代わり(姫様の質問攻めに疲れたから逃げた。もちろん報酬分は喋った)私は適当に馬を走らせます。もちろん適当といってもちゃんと道を走らしていますが。


「……飽きてきましたね」

『また?』


 横の席で自分よりも大きなリンゴと格闘していたくーちゃんが体中をリンゴ塗れにしながらも私を呆れたよなジト目で見てきます。


「そうはいいますけどね。どこまで行っても変わり映えのしない草原ですよ」


 眺めていた景色が対して変わり映えがしないことに気づき、姫様の話し相手も飽きたので代わりましたがこの御者というのもすでに退屈になってきました。


「きっとこの馬も退屈でしょうしね」


 手綱をつけられ決まった道を走らされているというのはきっと退屈なものでしょうね。

 たまには思いっきり走ってみたいでしょうに。


「この馬を全速力で走らせるというのはどうでしょう? この馬もストレスが溜まっていると思うんですが……」

『ストレスが溜まってるのはリリカだけだよ』

「そうとも限りませんよ?」


 私は口元を歪めながら御者席に備え付けられている鞭を手に取ります。


『……何する気?』


 なぜか不安そうな表情を浮かべながらくーちゃんが私に問いかけてきます。


「いえ、この鞭で馬を叩こうかと……」

『たたく意味あるの?』

「私は馬の体調を気遣っているのですよ?」

『それはぜったいうそだ!』


 馬もたまには全力を出しておかないといざというときに走れませんからね。

 これは善意。ええ、純粋な善意ですよ。

 決して退屈になったからではありません!


「さぁ、走れ! シルバーはこの前の伯爵のとこの馬につけたからゴルバー!」

『ゴロがわるい!』


 くーちゃんのつっこみは無視。この馬はゴルバーです。

 ゴルバーに対し私は持っていた鞭を勢いよく振り下ろしました。なかなかにいい音が鳴りゴルバーは嘶きを挙げながら走るスピードを上げていきます。


「もっと! もっとですゴルバー! あなたの全力はこんなものではないでしょう!」

『リリカはゴルバーのなにを知ってるの!?』


 突如としてスピード上げた馬車に振り落とされまいとくーちゃんは御者第二しがみつきながら絶叫を上げます。後ろの馬車の中でもなにやらわめき声が聞こえますが無視するとしましょう。

 大事なのは私が楽しいことなんですから。

 悲鳴のような嗎を上げながらゴルバーはさらに速度を上げて行きます。


「ふふふ、これなら王都までもすぐですね」

『自由すぎる!』


 聞く耳持ちませんね〜

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