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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
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手っ取り早い方法を!

「でこの首はマリー担当でいいですか」

「え、あなたが斬ったのにわたくしが持つんですか!?」

「私持ちたくないですし」


 月明かりだけが光を放つ明け方近くの森を私、マリー、くーちゃんが歩きます。いや、くーちゃんは飛んでいますね。


「私、一応乙女ですよ? 乙女。生首なんて持つものじゃないでしょう?」

「あの、私も乙女なんですけど」


 だって血塗れじゃないですか。汚れちゃいますし。


「何より血の匂い苦手なんで……」

『「……どの口が言う?」』

「そんな蔑んだような眼で見るのやめてもらえます?」


 別にゾクゾクもしないですし快感も覚えませんしね。

 それよりも地味に体が痛むんですよね。痛み止めも飲みましたがまだ効いてきませんしね。あんまり無理には動かないほうがよさそうです。


「傷が痛むのですか?」


 嫌そうな顔をしながらもマリーは布でシュバルツの首を包みしぶしぶといった感じで魔法のカバン(マジックバック)に放り込んでいます。


「痛むには痛みますが大丈夫ですよ」


 くーちゃんも心配そうに見てきていたので大丈夫であることをアピールしておきます。まぁ、死ぬほどではありませんし。単純に動きたくないだけですし。

 はぁ、痛んだ体にこの獣道は堪えます。


「野生の馬でもいれば捕まえるんですけどね」

「そんな簡単に捕まえれないでしょう」

「いや、惚れ薬でも使ってやれば」

「……あなたは手段を選びませんね」


 手段? 最善を尽くしていると言ってほしいくらいですよ。

 成功すれば手段なんて何でもいいと思うんですが。

 人間というのは変なとこでプライドが邪魔しますよね。

 私は自分の為なら何でもしますけどね。

 楽しいこと限定ですけど。


「街道までもう少しです。我慢してください」

「はーい」

『zzzz』


 くーちゃんはというとすでに私の頭の上でお休み中でした。今日はかなり魔法を使ってもらいましたからね。無理には起こしませんよ。

 しかし、この森、魔物が全く出ませんね。アジトに行く前にも全く魔物に出会いませんでしたからね。普通は多少の魔物と遭遇するものなんですけどね。不気味ではありますが今の私にはかなりありがたいことです。



 そこからしばらく歩き続けようやく見たことのある街道にたどり着きました。

 すでに空が明るくなりつつあります。

 ああ、しんどいです。寝たい。ふかふかベッドとか。


「マリー、街までどれくらいかかりますか?」

「距離で考えるとざっと十時間というとこでしょうかね」

「そんなに……」


 そんなに歩くのはごめんですね。こうなっては仕方ありません。


「マリー」

「なんです?」


 こちらを向いたマリーに私は決意を込めた瞳を向けます。


「馬車を奪いましょう」

「思いっきり犯罪する気じゃないですか!」

「楽をすることがいけないことですか!」

「楽をする過程がだめだと言っているのです!」

「もっと融通を利かせれないとお嫁にいけませんよ?」

「大きなお世話です!」


 なんて頭の固い! 今度、嫁に行き送れる呪いでも探しておきましょう。街に行けばあるでしょう。


「ではこうしましょう。私が馬車を拾ってきましょう。ええ、それがいいです。たまたま馬車を見付けて、たまたま拾うわけですよ」

「あなた、罪の意識とか感じるんですの?」

「この前くーちゃんが楽しみにしていたリンゴを無断で食べたときは少しばかりの罪悪感はありましたよ? すぐになくなりましたけどね」


 あれ、マリーなんで頭を抱えてるんですか?


『食べたのリリカだったんだね!』


 ぬぁ!? くーちゃんが怒った!? というか起きた!

 普段温厚なだけに精霊が怒るとかなり怖いですね! 威圧感があります。


「わかりました。くーちゃんには街に付いたらリンゴを必ず買うと約束しましょう」

「うそついたらゆるさないからね!」

「そしてマリー私も妥協しましょう」

「ほう、どのように妥協すると?」

「街に向かい歩きつつ馬車がきたら奪います」


 コレなら自分で奪いに行くよりはマシでしょうしね。


「それは妥協といわないから」

「さぁ、歩きますよ」


 何か言いたげなマリーを置き去りに街道を歩いていきます。

 ああ、早く馬車でも通りませんかね〜


 ヒヒ〜ン


「ほほう」


 馬の声が聞こえたため後ろを振り返るとやたらと豪華な馬車がこちらに向かい走って来るのが見えました。

 馬車の一部に獅子を象った紋章が彫ってあります。軍用馬車でしょうか? どちらにしろ好都合ですね。


「こんな時間に馬車?」

「見てくださいマリー。私の日頃の行いが良いから馬車が来ましたよ」

「いや、リリカ、馬車を襲うのはやめましょう!」

「鹵獲ぅぅ!」

『くぅぅ!』


 マリーが静止の声を上げましたがくーちゃんと私が突撃していきます。私は寝ていないためすでにテンションがおかしくなっている気がします。

 腰に吊るした『旋風』を引き抜くと振り回しながら馬車の進路上に立ち、いくてを遮ります。

 馬車の業者台に乗っていた騎士が馬車を急停止し、こ腰の剣を抜き構えます。

 馬車が急停止したことで異変と思ったのか中からさらに二人の騎士が現れこちらも盾と剣を構えてきました。

 これで全部で三人ですね。


「貴様何者だ!」

「通りすがりの者です。で早速相談なんですけど」


 言葉を告げ終える前に私は抜き放っていた刀を構えを取る騎士に突きつけます。


「馬車ください!」

「ふざけるなよ? この馬車をどなたが乗るものか知っているのか!?」

「ふむ、聞こえませんでしたか? 堪えははい、もしくは、いいえとしか答えはないはずなんですけど?」


 言葉が通じてないんですかね?


「ふざけるなよ? と言ったはずだが?」

「いや、まじめなんですけど……」


 騎士達の体からやたらと殺気が溢れてるんですけど。

 おかしいですね。こちらが頭を下げているというのに。

 仕方ありませんね。


「実力行使で奪うとしましょう」


 刀を構え、すぐさま大地を駆け手近の騎士に向かい刀を振るいます。一応殺さない程度には力は抜いておくとしましょう。目覚めが悪いですし。

 とりあえず狙うなら腕にしておきますか。


「シっ!」


 声と共に振るわれた刃は今だ私の動きを捉え切れず構えを取るだけの騎士の腕に吸い込まれるように放たれます。あ、これはまずい。

 一切の抵抗もなく振り切られた刃は鎧をたやすく切り裂き紅い軌跡を描きながら騎士の手首を宙に舞わしました。あ~、やっぱりあっさりと斬っちゃいましたか。


「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 持っていた剣を落とし斬られた手を押さえながら騎士が絶叫を上げます。


「あ、すいません。こんなあっさりと斬れると思いませんでした」


 ホント、鎧を両断するとか。怖いくらいですね。

 刀を軽く一振りし付着していた血を落とします。


「で、次は誰でしょうか? 乗せてくれると助かるんですけど?」

『……ねむい』


 まだくーちゃんも眠いみたいなので手早く済ませましょう。こちらとしては街まで載せてくれるだけで問題ないんですけどね。

 残りの二人もまだやる気みたいですし。仕方ありませんね。

 しかし『旋風』では切れ味がありすぎます。麻痺毒を使うとしましょう。

 刀を鞘に納め魔法のカバン(マジックバック)からこの前買ったナイフを取り出します。これには麻痺毒がたっぷりと塗ってあります。かするだけですぐに動けなくなりますよ。


「てい」


 掛け声と共にナイフを投擲。さすがにナイフ使いではないのでまっすぐに飛ばずにクルクルとバイフは回りながら騎士に向かいます。警戒していた騎士も虚をつかれながらも盾を振り弾きました。しかし、一瞬だけ意識が私から逸れます。

 その隙を逃さずに地を這うように私は疾走し騎士との距離を詰めると盾を振った姿勢で固まる騎士と目が合いました。突き出すように繰り出したナイフは私の目論見通り騎士の頬をかすめます。成功。

 ほくそ笑みながらすぐさま騎士の間合いから離脱。先程まで私の居た場所にはもう一人の騎士が剣を振り下ろしていました。容赦ないですね。


「これで二人目」

「なに?」


 攻撃を受けていないほうの騎士が訝しげな表情を浮かべ、こちらに振り返った時、先程、頬に傷を負わせた騎士が泡を噴きながら倒れこみました。


「ジョー!?」


 突如倒れた仲間に驚き音が鳴り響いたほうに振り返ります。

 そう、私から完全に目を離したのです。


「にやぁ」


 私は笑い仲間を気遣う優しい騎士の背に音も無く忍び寄るとナイフを天高くに振り上げます。


「油断しちゃダメですよ?」

「え?」


 間抜けな声を上げこちらを振り返った騎士の頬を先程の騎士同様に斬りつけ、背中を蹴りつけます。

 騎士は無様に転がり泡を噴き気絶してしまいました。


「ふふーん、馬車拾いましたね」

『拾ったっていうのは絶対違うよ?』


 私は自分で手に入れた戦利品、馬車を見上げながら満足そうな笑みを浮べました。


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