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エルフさんが通ります  作者: るーるー
突撃、近くの魔王城!編
327/332

納得のいかない勝ちでしたよ

「勝った!」


 完全に崩れ落ち沈黙したベシュを見下すようにしながら私は勝利を宣言します。

 ああ、最後まで面倒でした。

 やはりというかさすがは同族と言うべきか迷いますがエルフは危険な生き物でしたね。


「悪は滅んだんです」

『見解の相違だよね。それに大多数の人が見たら多分リリカが完全に悪だよ』

「人が理解し合えるのは難しいのですよ」

『なんか適当に言ってない?』


 ベシュが沈黙したからか多弁になっているくーちゃんと話をしながら床へと降りていきます。

 完全に沈黙しているのかベシュは私が足音を立て近づいているにも関わらず全く動きません。いや、あれだけの出血量なら生きているだけでもおかしな話です。

 確実に死んでいるでしょう。


 それでも一応は死顔くらい見ておいた方がよいですかね。いや、首を刎ねて長老への土産として持ち帰るのもありかもしれません。発狂するかもしれませんがね。

 色々と考えながらベシュの死体へとスキップをするように近づいていきます。

 ある程度近づくとベシュの体を足で軽く蹴って見ます。

 やはり動きはありませんね。


『死んでるの?』

「これだけの血を流しておいてあれだけ動き回ったんですから死にますよ」


 周りはすでにベシュから流れ出た血で真っ赤かなわけですし、これでいきてたらまさに化け物ですよ。


「うーん、もう食べれない〜」

「『……』」


 ……おかしいですね。

 死んでいるはずのベシュの死体から声が聞こえてきましたよ。

 幻聴でしょうか?


『ねえリリカ、なんか声がきこえたんだけど』

「幻聴です、幻聴に決まってます!」

『でもたしかに……』


「うーん」


 再びきこえてきた声に私とくーちゃんは黙り込みます。そしてどちらもがため息をついたところで私がベシュの体を再び蹴り飛ばし顔が見えるようにします。


「こいつ!」

『すごいね』


 かなり力を入れて蹴飛ばしたので勢いよく転がり顔がみえるようになったベシュですが、その顔はヨダレを垂らしながらおそらくは食べ物の夢を見ているのか見ていて腹ただしいほどに気持ちよさそうに眠っています。


『殺しとくの?』

「いえ、もういいです」


 ここまで無防備に寝られると逆に殺る気がなくなるというものです。

 と言ってもすでにベシュの片腕は貰ったわけですし、ここは痛み分けということにしておきましょう。


「リリカさーん」


 ゼィハの声がきこえてきたので周りを見渡しますがどこにも見当たりません。

 そういえば上に置いてきたままだったことを思い出し上を見上げると大穴をゆっくりとした速度で降りてくるゼィハの姿がありました。

 おそらくは幻想義手(イマジンハンド)を使って降りてきているんでしょう。


「その様子では勝ったようですね」

「まぁ、勝ちは勝ちですがなんとも納得のいかない勝ちでしたよ」


 結局殺していないわけですしね。

 向こう(ゼィハ)も私を殺せてないところを考えると引き分けというのが妥当なんでしょうが立っているのは私ですので私の勝ちです。


「で、では、ついに!」

「ええ、邪魔はいなくなりましたので魔界への道を作りますよ」


 鼻息荒く興奮しているのがよくわかるベシュが近寄ってくるのを制止しつつ、私は道を作るための道具を頭の中にイメージしていきます。

 そして右手を前に出し、何もない空間をつかむような仕草をするとたしかになんらかの感触を感じ取り、それを一気に引き抜きます。

 私の手の中に収まるのはさっき見た柄だけの武器、それに私は自身の魔力を流し込んでいきます。

 すると柄だけの武器に真紅の刃が現れ魔力を周囲へと撒き散らし始めます。


「空間を切り裂け、退屈を塗りつぶす刺激(カーニバル)!」


 刃が現れ、ちゃんとした武器へと変わった退屈を塗りつぶす刺激(カーニバル)を目の前の何もない空間へと一閃。

 確実に何か(・・)を斬った手応えはありましたが、振り切った姿勢でしばらく様子を見ますが何も起こりません。


『リリカ、カッコつけた割にもしかして失敗?』

「そんなわけはないんですが……」


 何かしらは確実に斬った感触があったんですがね。まだ魔力を迸らしている退屈を塗りつぶす刺激(カーニバル)の刃を眺めますがよくわかりません。


「あ……」

「ん?」


 ゼィハのあげた小さな声に反応してか彼女の方を振り向くと、ゼィハは私の背後を指さします。

 それを追うようにして私も再び先ほど斬りつけた空間へと振り返ると空間がゆらゆらと揺れています。


「なんですかこれは?」

『さあ?』


 くーちゃんとともに首を傾げましていると、斬った空間がまるで紙を剥がすかのようにしてめくれはじめます。そしてめくれたその場所にぽっかりと人が通れるだけの大きさの穴が空いたのでした。

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