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エルフさんが通ります  作者: るーるー
突撃、近くの魔王城!編
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やですよ

「先手必勝!」

神の祝福(ゴッドブレス)!」


 カズヤの声とともに彼の背後に控えていたククが杖を振り上げ補助魔法を発動。駆け出していたカズヤの全身に黄金の輝きが加わると姿を焼失。一瞬にして聖剣の攻撃範囲に私が入るほどの距離まで接近してきていました。

 そんなカズヤを特に危機感もなく眺めている私でした。


「せんてひっしょうというのがよくわかりませんがそう簡単には取らせません。動け眷属」

『ハイヨロコンデ!』


 今までの会話に一切反応せずに頭を垂れていた、シャチク、シャチョウ、ブチョウ、カカリチョウの四体の騎士が各々の武器を手に取りカズヤへと向かい、一瞬にして突撃していきます。

 シャチョウの振り回す鎖付きトゲトゲ鉄球が唸りを上げながらカズヤの顔へと迫りますがそれをカズヤはトゲトゲ鉄球ではなく鎖に聖剣を叩きつけることで軌道を変えわなんなくかわします。鎖を叩かれたシャチョウはというとその威力に負けてか振り回されるかのようにしてよくわからない方角に飛ばされていきます。しかし、その隙を狙うかのようにして大剣を振るい攻撃を繰り出してきたブチョウ、カカリチョウを返す刃で瞬く間に切り捨て、上半身は空に、下半身は床を疾走していくという奇妙な光景を作り上げます。

 一瞬にして二体の眷属を行動不能へと陥れた天敵(ゆうしゃ)は駆ける速度を緩めることなく直進。そんなカズヤを止めるかのようにシャチクが間に乱入。呪われた大剣二振りを構え対時します。


「有休消化はゆるさなぁぁぉぁぁぁい!」


 なぜか怒り狂ったような咆哮を上げたシャチクが私が見ている中では一番といえるほどの速度で左右の大剣を操りカズヤを切り裂こうとします。しかし、カズヤは疾走する速度を緩めるどころか加速。自殺願望でもあるかのようにシャチクによって繰り出される凶刃へと自ら突き進んでいきます。そしてシャチクの振るう刃がカズヤへ当たる瞬間に不自然なほどの勢いで静止。


「影縫い」


 見るとヴァンがなにやら放り投げておりその放り投げたものがシャチクの影に突き刺さっているみたいです。あんな方法で動きを止めることができるとは驚きです。

 ヴァンの思わぬ攻撃で身動きが取れなくなり、振りかぶられたまま静止している刃を首を振るだけで躱したカズヤはシャチクの横を駆け抜けると聖剣を幾度か閃かせ、シャチクに斬撃を叩き込んでいきます。それを防ぐことすらできない状態のシャチクはバラ売りされている肉のごとく解体されていきました。


「リリカ、覚悟!」

「やですよ」


 そんな必死にならなくてもいいと思うんですがね? そう考えながらも仕方なしに腰の退屈を塗りつぶす刺激(カーニバル)へと手を伸ばしまながら軽く後ろに下がります。

 再び閃いた聖剣による斬撃は先ほどまで私がいた場所で空を切り、カズヤは再び私との距離を詰めようと試みます。


「残業手当? ソンナモノハデナァァァァァイ!」


 しかし、私とカズヤの間に白い鎧のシャチョウが飛び込んできました。どうやら吹き飛ばされただけで大した傷も負わずにカズヤに追いすがったようですね。今度はトゲトゲ鉄球を掴んでおり鎖を叩かれ吹き飛ばされるという要素を潰したようです。考えましたね。


「残業確定ぃぃぃぃ!」

「魔族死すべし!」

「『えぇ⁉︎』」


 掴んだトゲトゲ鉄球でカズヤをなぐりつけようとしていたシャチョウを背後から何者かが強襲。完璧にかずしか視界に入れていなかったシャチョウに容赦なく攻撃が突き刺さり、そのまま床に縫い付けるかのように落下。勢いよく叩きつけられたシャチョウは何度も弾み、転がっていきます。


「魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし魔族死すべし!」


 それを執拗に追い、拳打を叩き込むのは白い修道服を自身の血で赤く染めつつあるククでした。ですが今まで見ていたようなおっとりとした様子のククではありません。目は血走り、拳打を放つたびにククの腕から鈍い音が響いており、さらには血が流れていっています。しかし、血が流れているククの体を緑の光がわずかに覆うたびに少しばかり収まりかけていたククの攻撃の手が苛烈さを増してくためその間ククはひたすらにシャチョウに向かい拳を放ち続けています。


「…… あれなんです?」

「狂信者状態のククだ。クク曰く神の力を使って魔族をぶち殺すための力だそうだ」


 私に攻撃しようとしていた手を止め、カズヤも奇声を上げながらシャチョウをひたすらに殴り続けるククを見て少しばかり引いているようです。

 そうこう話している間にもククは獣のように雄叫びを上げ、血霧を上げながら腕を振るう。まさしく豪腕。その豪腕がぶつかるたびにシャチョウの体は宙に浮き上がり、その鎧が歪み、凹み、元の形がわからなくなっています。


「なにがすごいって回復魔法すら攻撃するための手段に変えてるのが恐ろしいですよ」

『え、そうなの?』

「あの時折緑に光るのがおそらく回復魔法です。自分の腕が壊れる寸前で発動してるんでしょうね」


「LAAAAAAAAAAA!」


 今までで一番の咆哮を上げたククが腕を振り抜き、ついにシャチョウの鎧を胸元から貫き、自分の血に染めた拳をシャチョウの背中から出現させると今まで辛うじて動いていたシャチョウも糸が切れた人形のごとく動きを止めるのでした。

 そして動きを止めたシャチョウに興味がなくなったのかククはゴミを放るようにして投げ捨てると今度は私を睨み付きしてきます。


「うわ、私の眷属すっごく使えないですね!」

『自分の眷属に言う言葉じゃないよね⁉︎』


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