なら選択肢をあげますよ
「そりゃそりゃそりゃそりゃ〜」
「ぽーんぽーんぽーん!」
『すっごい間抜けな声だけどやってることはえげつないんだよねぇ』
私とフィー姉さんかドラゴンの上から行なっている行為を見たくーちゃんが顔を青くしながらそんなことを呟いています。
私とフィー姉さんがしているのはたっぷりと呪いの魔力に侵食されきった武具の数々を投下しているのです。きっちりと刃が下になるようにしてね。
投下された武具が地上に激突するたびに呪いの魔力が爆発し、周りの人間やモンスターどもを満遍なく吹き飛ばしていきます。 運良く呪いの武器が突き刺さった輩は呪いに塗りつぶされ、シャチク達と同じように破壊を撒き散らすモノへと変貌を遂げ、戦場をさらに混沌とさしていっていました。
「ですがそのかいあってか戦場は同盟側が優位に戦っているようですよ」
ゼィハの言う通り戦場全体を見ると同盟側が押し返しているようです。アリエル部隊が後退したこともありますがシャチク、シャチョウ、ブチョウ、カカリチョウ、センム達が落下したところも良かったですね。敵の増援の真っ只中に落ちましたから。
「一応はぁ、カズヤも士気を上げるのにかってるみたいねぇ」
あの高さからなら死ぬと思っていましたが存外にしつこい。やはり勇者は普通には死なないようです。まぁ、生きているなら生きているでいいです。まだあれには使いどころがありますからね。
「下がったアリエル部隊は?」
「下がったといってもモンスターの援軍とともに同盟側と戦ってるわねぇ」
つまり完全には下がりきってはいないということですか。
だったら一気に行くべきでしょう。
「ドラゴンさん」
ドラゴンに声をかけながら背中を三度踏みつけます。するとオリハルドラゴンが怯えたような眼をしながら首を後ろに向けてきます。
うん、三ヶ月にわたる調教の成果は出ているようですね。体の一部を吹き飛ばしては回復させるというのはドラゴンのプライドを粉々に砕き従順にさせるのに効果的だったようです。
「あれ」
私が指をさすのは地上に着陸している魔王城。
「突っ込んで」
ふるふるふる
涙を浮かべながら首を振って拒否をしてきます。
ふー、まだ躾が足りなかったようですね。
「なら選択肢をあげますよ」
魔ノ華の刃に魔力を集めているオリハルドラゴンの首へと添えます。
「今から全力であれに突っ込んで生き残れことに賭けるか、もしくは今この場で逃れることのできない絶対の死を迎えるかです」
「リリカちゃん素敵に外道だわぁ」『ドラゴンを脅すエルフなんて見たことないんだけど……』
今の私ならオリハルコンの鱗に守られたオリハルドラゴンの首すら難なく落とせるでしょう。もしくは凶化さしてシャチクたちと同じように使っても問題ありませんしね。
返事がないのでかる〜く本当にかる〜く刃をオリハルコンの鱗を容易く斬り裂いた上で首に突き刺してやります。
危機感を感じたのか決断をしたのかオリハルドラゴンの飛ぶ速度が上がります。
「はじめっからさっさと決めれば良かったのですよ」
みるみる間に魔王城が近づいてきます。普通ならここで減速なりなんなりするんでしょうがそんなものは私が許しません。
少しばかり速度が下がった瞬間に、さらに刃を首に食い込ませます。するとあら不思議、速度が上がるのです。
「ククちゃん、全員にゴッドブレスをかけといてねぇ」
「え、なぜですか?」
背後でフィー姉さんとククが話をしていますが風の音がうるさすぎてよく聞こえません。
「さあ!風を斬り裂いて突撃するのです!」
「は、速すぎるんですケドォ⁉︎」
『飛ばされる! 風の精霊だけど飛ばされるよぉ!』
速度を増したオリハルドラゴンから振り落とされないように必死なようです。私は魔ノ華を首に突き刺してるので問題ありません。後ろを振り返ればフィー姉さんも聖剣を突き刺し、体を固定しているようでした。
「はっはっはっは! 突撃です突撃!」
『なんかリリカがおかしいよ⁉︎』
「戦場の空気にあてられたんでしょう!」
なぜだかテンションが高くなります。よくわかりませんが高揚感がすごいことになってます。
「だってこのままじゃ……」
眼前へと魔王城が迫り、
「私たちミンチになるわよ?」
「っ⁉︎ ゴッドブレス!」
オリハルドラゴンが魔王城に轟音を立てながら全力でぶつかった瞬間、私たちは一瞬の浮遊感を味わった後に魔王城の壁へと向かい全員が突貫する羽目になりました。




