我輩はドラゴンである
我輩はドラゴンである。
名前はある。
オリハルドラゴンのオーちゃんという。
これは母上が名づけてくれた素晴らしき名である。異論は認めない。
我の住処は鉱石で作られたこの山、オリハル山である。縄張りとも言う。
この山全てが我輩のものでありそれを奪うのは全てが敵である。見つけたらすぐ食べてやる。すなわちキャッチ&イートである。
今までもこの山に来た者共は食い殺してやっているんだがごく稀に凄まじく強い奴がいるのだ。そいつらは大体がピカピカと光る白い剣を持っているのでその剣を持っている奴には注意をしている。じいさんも刺されてたしな。
そんなある日のことだった。
日が落ちてからどことなく山が騒がしい。
龍が一日の疲れを取るべく眠ろうとしているのを邪魔してくるとはなんと性格の悪い奴らなんであろう。
よし、夜食にしてやろう。
気分を切り替え、我輩は自分の力の誇示と夜食の確保のために意気揚々と我輩の支配領域である空へと羽ばたいたのだった。
二時間後
なんなんだあの恐ろしい生き物は!
本当に我輩の知っている生き物なのか!
今、我輩の眼前では白い剣を振るう我が天敵と禍々しい黒い魔力を周囲に撒き散らしている黒騎士が我輩の縄張りである山の地形を変形さしながら戦っておる。天敵には仲間がいるようだがそいつらはどうも結界を張っているようでスヤスヤと眠っておる。
「うらぁぁぁぁぁ!」
「ハイヨロコンデハイヨロコンデ!」
雄叫びらしきものをあげ、黒と白が交錯するたびにその余波である魔力が溢れ、さらには吾輩の縄張りである山を破壊していく。
貴様ら…… 我が縄張りを荒らしたことを骨の髄まで後悔さしてくれるわ! 我輩の爪とブレスで消え去るがいい!
いつも手入れを欠かしたことがない我輩自慢の爪を月がキラリと光らす中、我輩は黒と白の侵略者に向け突撃を敢行したのであった。
三時間後
いや、本当になんなんだ! あの生き物は!なんなんだ⁉︎(二回目)
自慢の爪は空を切った。それどころか大振りしてできた隙をチャンスと言わんばかりに白と黒の騎士が我輩の足の指を手にした武器で滅多打ちにしてした。傷はできなかったが痛い。痛すぎて久しぶりに涙が出た。
しかし、やられたままも気に入らん。ならばと思い口がらブレスを吐き出した。しかし奴らは容易く避けると白の騎士はなにやら石みたいなものを我輩の口の中に放り込んで来たし、黒の騎士はしつこく足の指を叩きまくって来よった。
黒騎士の方へと意識を向けると次の瞬間には我輩の口の中を、とんでもない衝撃が疾り、口内から煙があがる。
ぬぁぁぁぁぁ、口の中で何かが爆発しよったぁぁぁぁ!
いかに全身がオリハルで作られていようと体の中まではそうはいかぬ。
おそらく口の中に放り込まれたのは魔石であろう。あの白い騎士、本当に騎士か? 戦い方が卑劣すぎる!
黒い騎士はというと我輩の身体を盾にするようにして白い騎士からの攻撃を防ぎ、すかさず反撃を繰り出すということを繰り返していた。
ええい、まずは白い方から潰してくれるわ!
四時間後
なんなんだよ、なんなんだよこの状況は!
白い騎士も黒い騎士も全く死ぬ様子が見れない。黒い騎士はともかく白い騎士のほうは人間のはずだ。なのにこんなに長時間動けるはずがない、いや、動いているんだが。
困惑する我を放ったらかしにして白と黒の剣舞は続く。
それを狙い我輩もブレスを吐いたするわけだが全く当たらない。いや、白い騎士に至っては一度悲鳴を上げながら当たっておるわけなんだが死なない。それに驚くよりも白い騎士の仲間らしき者共がその光景を見ながら笑っていることに恐怖を感じる。
こいつらには仲間を思いやるとかそういった感情がないらしい。
五時間後
なんか空から降って来た。
数は四人。魔力を見るにどうやら白い騎士と同じくらいの力に見える。
そんなことは無視と言わんばかりに黒い騎士は執拗に白い騎士を狙いその場から身動きがとれないようにしておる。
そんな無視をされている四人組だったが名乗りをあげるたびに力を誇示するもんなので我輩の縄張りが壊されていくわけなんだがもう疲れたから放置しておく。
最後の一人が巨大な武器を手に一瞬にして白い騎士の背後に回り込み武器を振り下ろそうとした瞬間、何かが突き刺さった。
それは我輩でもビビるくらいの魔力を秘めており、瞬時に周りに破壊を撒き散らした。山が震え、突き刺さった大武器を持っていた物を中心に目が眩むほどの爆発が引き起こされる。
やがて、爆発が収まり静寂が訪れたがその場に突き刺さった者の姿はなかった。
降りてきた四人組、いや、今は三人組なわけだがそいつらが白い騎士に罵倒の言葉をぶつけながら各々の武器を手にして襲い掛かり、白い騎士は悲鳴を上げながらそれを受けた。
もうよくわからんし、巣に戻って眠るとしよう。こんな意味のわからない戦いを続ける方が馬鹿らしいというものだ。
そう考えた我輩は翼を広げ飛び立つ。瞬間、幾つもの魔力の塊が我に向かい飛んで来たのだった。




