たしか、グッバイでしたかね
「これは放っておいても勇者は死にますね」
雄叫びをあげたところで絶望的な戦力差というのは覆るわけではありません。
どういう理由でシャチクとオリハルドラゴンが共闘し連携をとっているのかはわかりませんがその力の前では勇者一人の力で対抗できるものではありませんし。
現に先程からカズヤはひたすらに吹き飛ばされていますからね。
しかし、まだ生きているということが何よりも恐ろしいです。ふつうな即死ですよね。
「うらぁぁぁぁぁ!」
「シャァァァァァァァァ!」
「サービス残業! 休日出勤? ハイヨロコンデェェェェ!」
三者三様で気合の入る? 声を上げながら己の武器をぶつけその度に小規模な魔力による爆発が起こり火花が飛び散ります。
確実に追い込まれているのは勇者のはずですがまだまだしつこい。害虫並みです。意外と虫殺しの魔法を使えば即死するかもしれませんね、勇者。
「このまま見ていてもロクな結末になりそうにないです」
魔ノ華の形を漆黒の弓へと変化させ、さらに全てを弓矢にの力でそこらに転がっている鉱石の塊を矢へと変換さします。
おまけと言わんばかりにその矢へ魔力を注ぎ込めばあら不思議。高密度の呪いを内包した呪矢が完成します。
「せめてもの情けです。私の手で殺して上げましょう」
勇者さえ潰してしまえば私が死ぬということはなくなりますからね。魔力をたっぷりと込めたこの弓ならばかすっただけで呪い殺すことも可能でしょう。
「さあ、カズヤ。さっくりと死んで貰いますよ」
魔力を纏う矢を番え、一気に後ろに引き必死に戦うカズヤの背中へと狙いを定めます。正面から戦う気なんて微塵もありません。
動き回るカズヤに矢を向けますがなかなか合わないことにイライラしてしまいましたがシャチクが軽く足払いをかけたことによりカズヤの姿勢が崩れたたらを踏んでいます。
まさに絶好の隙!
「さよならカズヤ。あなたのことは忘れません。多分明日までは」
それ以降は覚えている自信がありませんね。
確か本で読んだ昔の言葉ではなんというんでしたかね。
たしか、グッバイでしたかね。
「ではグッバ……」
弓を射ようとした瞬間、私の感知範囲に大きな魔力の塊が入ってきたことに気づいたため思わず弓を下げます。
なんでしょう……
攻撃ではないようですが……
これはもしかして何かがこちらに近づいてきてるんですかね。
周りに視線を巡らしますがそれっぽいものは見当たりません。しかし、確かに今の私は何かが近づいてくるのを感じ取っています。
「周りにないとすると……」
左右に巡らしていた目線を今度は上へと向けてみます。
「あれですか」
上を見上げた時に目に入ったもの。
それは緋、蒼、翠、白といった四色の光が空を横切りながらカズヤたちの方へ向かい落ちていく光景でした。




