これを食らって無傷?
ゼィハバリア。
それは私が手にしたゼィハをもって飛んでくる攻撃に対してゼィハで防ぐという最終防御です。
このバリアを張れば私は痛くも痒くもありません。そう私は!
『へんなこと言ってないで多少は痛もうよ!こころとか! 善意とか!』
私が放り投げ、白目を向いているゼィハを気づかせようとしているのかくーちゃんがひたすらにゼィハの頬を叩いています。
「今はそんなこと言ってる場合じゃありませんよ?」
『またそんなこと言って!』
「文句は後で聞きますからそれをゼィハに飲ましといてください」
まだ文句を言い足りなさそうなくーちゃんに向け私は片手でぽちの柄を掴みながら反対の手で魔法のカバンを漁り、回復用のポーションを掴むと引き出し、それをくーちゃんへと投げます。そしてその隙を縫うようにしてこちらに迫る魔弾に向けぽちを魔ノ華へと帰ると一閃し魔弾を切り裂きます。
それを見ていたくーちゃんはしばし呆然としていましたがハッと意識を戻したのか声をあげます。
『それ切れるんだったらゼィハを盾にしなくてもよかったじゃん!』
「ゼィハを持ってる手が右手だったんですよ? 左手では左の鞘からは抜きにくいでしょ?」
私右利きですしね。
「それより早くゼィハを起こしてください。またきます」
次は先ほどよりも速いのがいくつも飛んできます。これはもうどう考えても流れ弾ではありません。
「面倒なんで姿見せません?」
いくつも飛来する魔弾の中から自分に当たりそうなものだけを避け、そのうち私に当たりそうな魔弾一発を目にした私はそれを放ったであろうローブを着た奴の方に体を向けると魔ノ華の形をただの棒状へと変化させるとこちらに迫る魔弾に向け打ち付けます。
切られることなく魔ノ華を打ち付けられた魔弾は凄まじい速度で元来た軌道を辿り私の予測していた通り、恐らくは追加の魔法を放とうとしていた輩の体のど真ん中に叩きつけられ魔弾が弾け、胸に拳大の穴を開けゆっくりと倒れました。
「…… 盾に使ってなんですがゼィハの奴よく生きてましたね」
ちらりと後ろを見ると自分より大きなポーションの入れ物をゼィハの口に付け一生懸命に中身を注いでいるくーちゃんの姿が目に入ります。そこから視線をずらしていき気絶しているゼィハのお腹部分を見るとダークエルフの服にぽっかりと空いた穴から褐色の肌が見えました。魔弾を食らった、というか食らわしたはずなんですが傷一つありません。
「うーん、実は大した威力がないとか?」
首を傾げて考えていると再び魔弾が迫って来ました。それを今度はギリギリで躱すように首を捻ります。わずかにかすめるようにして威力を確かめるためです。
そして私の頬に魔弾が僅かにかすめた瞬間、私は自分でも驚くほどの速度でさらに首を捻ります。微妙にゴキンっという音が鳴った気がしましたがそんなもの気にしてはいられません。
「これを食らって無傷?」
僅かに魔弾がかすめた頬に手をやり軽く拭うとべったりと血が付着していました。
魔力も増え、力を増し、防御への魔力も間違いなく行なっていたにもかかわらずに負ったダメージに私はゾッとします。
「高密度の魔法、しかもエルフやダークエルフではないとなると貴方達はなんなんですかね」
魔ノ華を元の刀の形へと戻すと魔力を一気に注ぎ込みローブの連中に向け駆けます。
「ちっ! なんだあれは!」
「あの、鬼エルフだと⁉︎」
「足止めだ! 魔法道具を放て! 」
なるほど。
魔法ではなく魔法道具の効果でしたか。しかし、これだけの数の魔法道具を集めれるとは中々ですね。
色々罵声を上げながらこちらに魔弾を放ってくるローブの連中に魔力を込めた脚を動かし向かいます。どうやら連中が使っているのは私が以前暴力シスターから奪った魔法道具フリングのようなものみたいですね。
魔ノ華を横へと振るいそこにさらに魔力と私のイメージを注ぎ込んでいきます。そしと魔ノ華が私のイメージ通りに変化したかを横目で確認しますがよくわかりません。とりあえずは使ってみるとしましょう。
「うりゃぁぁぁぁ!」
声を上げながら魔ノ華を振り上げ目の前のローブに向かい一気に振り下ろします。
「馬鹿め! そんな攻撃!」
「まて! 迂闊に受けるな!」
馬鹿にしたように笑ったローブの男が魔ノ華を腰から引き抜いた剣を横に構え受け止めようとしましたが、次の瞬間、
湿った音と共に男の頭と体が真っ二つに叩き割られ、宙に紅い線を描き、左右に分かれるようにして倒れました。
「なっ!」
「うーん、今のはどっちでしょうか」
ローブの奴らが驚愕している中、私は魔ノ華を軽く持ち上げ刃を見つめます。先ほど武器ごとローブの男を叩き切ったのが魔力で強化された魔ノ華自体の切れ味なのかそれとも見様見真似でだしたゼィハの魔法、超振動の効果かわからなかったからです。
「ま、あと二、三回試せばわかるでしょ」
「ひっ」
刃に付いた血を払うと私は怯えるローブ達へと魔ノ華を振るうのでした。




