これからどうしようかなー
金貨二十枚。
率直に言えばそれが今回の変異ミノタウロス討伐の報酬である。
これは魔物を討伐したことで貰える報酬としてはかなり高額らしい。
らしいというのは私には適正な報酬がわからないというのもあるのですが。
テーブルの上にある金貨二十枚をアレス、マリー、私の三人で囲みます。
「じゃ、五:五ということで私とマリーで半分に……」
「ちょっと待ってください! ボクの! ボクの報酬は⁉︎」
金貨を半分にわけようとしたところでアレスから待ったと声がかかります。
「「え、いるの?」」
「いりますよ! ボクも一応冒険者の端くれですよ! 労働には対価が必要なんです!」
労働ですか。お金になりそうな素材を消し去ったことが労働と。メモしとかないといけませんね。
「あなたがしたことはわたくしのお金を潰したことだけのはずですが?」
私が心に思うだけにしたことをマリーはズバッと言葉にしますね。
「ぼ、ボクだって重力魔法で援護しましたよ!」
「最後にトドメを刺したのはわたくしですわ!」
「このターコヤーキを一つください」
『わたしもー』
「「なにを注文してるんですか(の)⁉︎」」
私が吟味した結果の料理になにか文句が?
ジロリと睨むと二人して怯んだのか一歩後ろに下がります。
「お、お金の分配の話をしているのですよ⁉︎ リリカさんも参加していただかないと」
「そうですよ!」
めんどうですねぇ。私、関わりたくないんですけど。
「私とマリーが八枚ずつ、アレスが四でどうです? アレスには素材を消し飛ばしたペナルティということで」
「まぁ、それくらいなら」
「確かに消し飛ばしたボクも悪いですしね」
あら、すんなりと決まりましたね。
「ならこれでいいですね」
手早く金貨を分配すると私は自分の取り分を魔法のカバンに放り込みます。
早くターコヤーキが食べたいのですよ。
「今後はリリカさん、アレスはどうするご予定ですの?」
マリーが自分の取り分を取りながら尋ねてきます。そう言えば言ってなかったですね。
「そうですねぇ〜とりあえずはこの街は出ようと思ってますよ。他の街も見たいですし」
「ボクはしばらくはこの街で冒険者のランクを上げたいと思います」
ほほう、地道ですねアレスくん。
『じみー』
くーちゃんが心の声を代弁してくれましたね。
しかし、アレスの魔法ならあっさりCランクくらいとれそうですけどね。
「マリーはどうするんです?」
「わたくしは特に決めてませんわ。とりあえずはこの剣を抜く方法を探しますわ」
「だったら私達と来る?」
『くる〜?』
「リリカと?」
「ええ、私もマリーがいてくれるととても助かります。壁や…… いえ、盾…… 前衛がいてくれるとね」
「……」
あぶないあぶない。本音がもれるとこでした。
「まあ、いいですわ。ではどちらに向かいますの?」
「とりあえずはマリーの剣を抜こうか。私のたびに目的は無いわけだし」
私の目的は旅をしながら国を見て回ることだしね。マリーの聖剣がどんなものかもし知りたいし付いていくとしようか。
「でしたら騎士の国パラディアン帝国に向かおうと思いますわ」
マリーは地図を取り出しテーブルに広げるとティスタニアの右の大国を指差します。
「なんで騎士の国パラディアン帝国なんです?」
「彼の国はその名の通り騎士の国。騎士の国ならば聖剣、魔剣といったことについて調べやすいと思うのです」
なるほど。確かに騎士ならば武器などの情報にも精通してるでしょうし、マリー、なかなか考えてますね。見直しましたよ。頭の中は筋肉ではなかったようで安心しました。
「今の失礼なことを考えませんでしたか?」
「そんなバカな」
勘が鋭いですね。表情には出してなかったと思うんですが。
まさか、聖剣の力でしょうか?
だとしたら侮れません。
「だとしたら二人とはここでお別れですね」
アレスが悲しげな表情を浮かべます。
私が言うのもなんですがよくあんな特訓を受けさせられたのによく懐きましたね。私ならあんな特訓受けさせられたらその相手をぶち殺す自信がありますよ。
つくづく魔法の適性がなくてよかったと思いますね。あんな訓練受けたら私、死んじゃいそうですし。
「じゃ、アレスもついてきますか?」
「あ、それは遠慮しときます。まだ死にたくないんで」
おい、どういうことだ。暗に私、と旅をすると死ぬほど危険と言いたいんでしょうか?
『リリカがむちゃばかりするからだよ』
「くーちゃんまで」
自分の契約精霊にまで見捨てられるとはなんてかわいそうな私。
「マリーさんなら殺しても死ななそうですけど、普通の魔法使いなんですから!」
「ねえ、さりげなくわたくしを人外扱いするのやめてくださる!?」
アレスの発言にマリーが噛みつきます。
「背中に剣突き刺さってるから人外なんじゃ……」
「うるさいですわ!」
怒鳴り回し暴れ始めたマリーから離れます。だってこいつ、怒ってるのか血剣掴んでますし。あぶないですよね。
「ターコヤーキお待たせしました〜」
「はい! 私、私!」
頭に血が上ってるマリーを無視して私は店員さんが持って来てくれたターコヤーキを受け取ります。
待望のターコヤーキが来ましたね。
「だからなんであなたは人の話を聞きませんの⁉︎」
「私は里をでた時から自分のペースで生きると決めたんですよ」
店員が持ってきた皿には球体のパンのようなものが乗っており、私の関心を一心に受けていた。
お菓子のような感じがしますね。
においはパンのように香ばしい感じではありませんし。とりあえずひとつ掴んで口に放り込みます。
「……まずい」
なんだかべちゃべちゃしますし中になんだかこりこりしたものが入ってます。何か分りませんが食欲が失せました。ターコヤーキの乗った皿をテーブルに置き私から遠ざけます。
「はぁ、がっかりです」
なまじ期待していた分がっかり感がかなりあります。
くーちゃんも興味津々で口をつけましたが私同様なんともいえない顔になり食べるのをやめていました。
「とりあえず、出発は明日でよろしいですか?」
私を見てため息を付きながらマリーが告げてきます。
「はぁ~、もうどうでもいいです」
「あなたにとって食はどれだけの重要度をしめているんですの!?」
マリーのあきれたような声がギルドに響くのでした。
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