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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
25/332

終わり良ければすべて良しなんてことは現実にはおこらない

「これはまたどういう状況なの? リリカさん」


 ギルドでのもう見慣れたフランの呆れたような表情。

 でもその表情を浮かべる相手を間違ってるんですよね。今回に限っては私、何もしてないんですし。

 まぁ、服を血塗れにしているマリーとボロ雑巾のようになっているアレスを見たら私がなにかしたと思うのが普通かもしれないですけど。


「このバカが余計な事をしたので」

『このバカのせいでね! わたしたち死にかけたの!』


 珍しくくーちゃんも憤っていますね。ゲシゲシと蹴りを入れてます。

 私もバカと言ったところでアレスの頭を蹴ります。すでにうめき声すら上げませんね。ギルドに入る前にボコボコに殴ったから当たり前ですか。


「ふぅ、とりあえず黒いミノタウロスは狩っときましたし大丈夫ですよ。……ムトゥの森は結構やばいことになってますけど」


 最後のほうは聞こえないように呟きます。

 マリーの血剣ブラディアナ、アレスの黒球ブラックボールでムトゥの森は森林破壊とかそんなレベルでは済まないほどの悲惨な状況になっています。見つかるのは時間の問題でしょうが全てアレスのせいにしときましょう。

 なにより最後にアレスが放った黒球ブラックボールのせいですしね。しかし、私も死にかけたとはいえなかなかにいい魔法でした。あの魔法一つで街一つを消し飛ばしそうな威力でしたからね。なかなかに魅力的な物でしたね。


「黒いミノタウロスを狩ったんですか⁉︎」


 フランがカウンターから身を乗り出して聞いてきます。近い近い。


「最後に狩ったのはマリーだけどね」

「CランクとDランクで狩るなんて…… あなた達どれだけ規格外なんですか……」

「そう言われても……」


 どのランクがどれくらいの魔物を狩ってるかなんて私知らないですし。なにより興味がないんですけどね。


「で、幾らになるんです?」


 所詮、魔物もお金ですからね。人間の世界では一番大事ということを学びましたからね。なによりお金はあって困る物ではないですし。マリーにも半分払わないといけませんしね。


「まだわかりませんね。マリーさんの冒険者カードを鑑定してみないことには。あ、ドロップアイテムなどあれば鑑定して換金しますけど?」


 ドロップアイテム、換金。

 その言葉を聞いて私とくーちゃんは横でスヤスヤと眠るアレスに視線を向けます。

 アレスはというとボロボロでありながらもにへらぁと笑い、


「もぅ食べられないよ〜」


 なんて事を幸せそうな顔をしながら寝言を抜かしやがりました。


『「こいつ‼︎」』


 私とくーちゃんが同時に額に青筋を浮かべ、足を振り上げます。


「この! 金の元を返せ!」

「あだぁ⁉︎ なんです⁉︎ リリカさん! なんなんです⁉︎」


 幸せな表情を浮かべたアレスの顔めがけひたすらに蹴りを入れます。こいつのせいでお金の元が全部消えたんだ! 悲鳴を上げても私は蹴るのをやめません!


「あの、リリカさん…… それくらいにしといたほうが……」


 いけない、我を忘れてしまいました。


「そうですね。靴が汚れますね」

「いえ、そういうわけじゃなくてですね」


 私の言葉にフランが若干引いてる気がしますね。だが今回はこのバカが悪いのです。

 冷めた目で私の足元でガタガタと震えるアレスを見下ろします。


「あ、あの…… ボクなにかしたんでしょうか?」

「あぁ⁉︎」


 今だに状況を把握できてないみたいですね。


「ううん、大きな声を出してどうしました?リリカさん」

「起きましたか? マリー。さぁ、共にこの愚か者に断罪を!」

『断罪を!』

「何があったんですの?」


 起きたばかりのマリーもアレス同様に状況を理解してないみたいですね。

 仕方ありません。


「アレス、金の元、ぶっ壊した」


 手短に告げました。


「殺しましょう」


 ニッコリと笑いながらマリーが素晴らしい意見を述べてくれました。さすがは金の亡者。単純明快な答えをすぐさまだしてくれます。是非殺りましょう。


「ひいいぃ!」


 怯えた表情を浮かべながらアレスが後ずさります。

 そんなアレスにマリーは聖母のようなら笑顔を浮かべます。


「我がナザフロクスの家訓にこんな物があります『金こそが正義! 金がないのは他人のせい!』と」

『人として最低だ!』


 マリーの発言に冒険者ギルドでその言葉を聞いた全員が叫びます。


「さて、そんな大事なお金様を葬り去ったアレスには相応の罰を受けて貰いますわ」

「ぐ、具体的には?」


 顔に滝のような汗を流しながらアレスがマリーに尋ねています。

 私はと言うと、


「弄るのに飽きましたね」


 席について食事のメニューを開きます。お腹も減りましたし、くーちゃんとなにか食べましょう。


『賛成!』

「……エルフってみんなこんなに自由なのかしら」


 嬉しそうに私の頭の上にやってきたくーちゃん。エルフへの認識を若干変えつつあるフラン、アレスに無理難題を言いつけるマリーを見ながら私は頼む料理を思案するのでした。

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