振ったらまた出るんですかね?
「いやぁ、予想外予想外」
乾いた拍手の音に振り返るとヘラヘラと笑っているアルの顔が目に入ります。なんでしょう。自分と同じ顔がヘラヘラとしているからかわかりませんがもの凄く見ていてイライラとしますね。
「いや、そんなイラついたような顔をしないでよ?」
「ふっ」
人を小馬鹿にしたような態度に少しばかりイラついたのでアルに対して距離があるにも関わらず私は魔ノ華を振るいます。
すると魔ノ華から悪食を使った時と同じように黒い物が幾つも発生しアルへ向かい飛んでいきます。
「ん、なんですかあれは?」
刃を振り切った姿勢のまま私は疑問を口に出します。
アルへと飛んで行った物は魔力を吸う黒靄ではなく明らかに黒い色をした人の形の物だったからです。
「Aaaaaaaa!」
「こっわ⁉︎」
アルが顔を青くしながら叫んでいると黒い人型が魂を震わせるような奇声を発しながら宙を飛ぶあれ、どう考えても呪いの塊ですよねぇ。
当たったらどうなるのか。
呪われるんだったらすぐには死なない気がしますがなんとなくあの空を飛び回る幾つもの黒い人型を見ていると私の体が警告を発してきているような気がするんですよね。
「呪いの塊、いや、どちらかというと飛んでるわけですからお化けみたいなものなんでしょうかね?」
あんなふうに空を飛べるというのはなかなかに楽しそうなんですがあんな奇声を発したくはありませんねぇ。
「もう一回振ったらまた出るんですかね?」
私が魔ノ華を再び頭上に振り上げたその時、魔ノ華の色が僅かに変わっていることに気づきます。
以前までは全てを吸い込むような漆黒の刃だったはずなんですが真紅の刃へと変わっていました。
「まるで血の色ですね」
まるで今まで私が切り捨ててきた人や魔物の血が滲み出てきたかのような色です。さすが魔剣。普通に呪われそうですね。
まあ、やばかったらに捨てたらいいんですがね。
「ひどいことするなぁ。君の使ってる力は僕のちからなんだよ?」
「呪いを食らっても死なないようなやつが何を言ってるんですか……」
私は見ていましたよ。
こいつが呪いの塊に手を掴まれていたりしていたのを。
ですがアルの体に触れた呪いの塊はまるで吸い込まれるかのようにして消えて言ったんですよね。
「ふふ、まぁ、君が力を手に入れられてよかったよ」
「そうですか。あ、聞きたいことがあるんですが」
「なになに! なんでも聞いて!」
いや、なんでそんな眼をキラキラさせながらこちらにぐいぐいと近寄ってくるんですか?
こいつ話題に飢えてますね。
「いや、そんなこと言ってもさー リリカとかここに来ないわけだし」
こいつ、魔ノ華の中に頻繁に来いと?
来たら大体が力を得るためにアルと会話をしたりしなければいけないから面倒なんですよね。
「で聞きたいことなんですが、魔の欠片というのが魔王の魂ということは理解しました。ですが欠片の一つ一つになんらかの力が備わっているんですか?」
だとしたら私はまた力を得る機会があるということになりますからね。
「違うよ。魔の欠片はあくまでも取り込んだ者の力を増幅する効果しかないよ。発現した力はその者が|手にいれることのできる力なのさ」
え、そうなると私が新たに得たこのお化けを飛ばす力も私の中にあったものということなんですかね。
「君の性根が表されたような能力じゃないか」
こいつ……
ムカついたので一瞬にして距離を詰めると魔ノ華を突き立てるべく首を狙います。
しかし、その途中で空間が捻れるような感覚を受け目の前のアルも歪んでいきます。
「あはははは、また会おうねリリカ! いや、」
完全に空間が切られ、アルが続けた言葉は耳に入りませんでした。ですがアルの口は読み取れました。
「まじんリリカ」と




