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エルフさんが通ります  作者: るーるー
勇者の武器編
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有意義にその力を使いましょう

「うわ、これ凄い勢いで魔力が流し込まれてきてますね」


 明らかに私の許容量を超えるほどの魔力が私の中に注ぎ込まれてきます。しかもかなりの量を私に入れてきているはずなのにまだかなりの魔力を有しているようです。さすがは魔剣。


「で、これは何をしているんですか?」


 ニヤニヤと意地の悪そうな嗤い顔をしているアルへとふりかえります。


「簡単なことだよ。君は魔の欠片を三つも手にしている割には魔力の総量がとても少ないだろ? それは非常に危険なことで非常に都合が悪い」

「いや、魔力なんて生まれた時から総量が決まってるんですからそう言われてもですね」


 一般的には魔力とは生まれた時から総量が増えず、増やすにしても魔導具やそれに類似するものがなければ増えないらしいのですがね。

 というかこいつの都合の悪い、というのは一体誰に向けて都合が悪いのか。私か、それともアルガンテロアか。


「そこで! 今から行うのは僕が考えた魔力拡張法さ!」

「ほう」


 そんな方法があるとは。


「ただし失敗したら死ぬからね?」

「待ちなさい。なんで死ぬかもしれないことさせるんですか!」


 ボソッと物騒なことを言い放ったアルに声を荒げます。

 失敗したら死ぬとか一体何をやらそうとしてるんですか!


「ん? もうやってるよ? 魔ノ華(マノハナ)から魔力が注がれているでしょ?」

「ええ」

「それ容量を増やしてるから」

「は?」


 あっさりと死ぬ危険のあることを本人の了承なしで開始しやがりました。

 注がれることで増えるというの初めて知りましたね。


「あ、先に言っておくけどね。普通に注ぐだけじゃ魔力は上がらないよ。魔剣の力を使ってるし、なにより適性のない人にそんなことをすると死んじゃうんだよ」

「そんな危ないものをやってるんですか……」

「そうさ、でもその恩恵は君も感じているだろ?」


 まあ、確かに今も注がれる続ける魔力のおかけで確かに私の魔力量も上がり続けているような感覚がしますしね。


「まあ、ここからが問題でね。君が器に足りなかったら弾け飛ぶから」

「えー」


 未だに薄気味悪い笑みを浮かべているアルに非難の声を上げますがそんな私の声など無視をして魔力が注がれ続けているわけなんですが。

 なんか溢れ出てる感じなんですよね。試しに魔ノ華(マノハナ)を掴んでいない方の手に魔力を集めるようにしてみるとあっさりと剣の形を作れる程の魔力を集めるけどができました。以前よりも簡単に集めれているようですし確かに魔力が上がっていますね。


「さて、そろそろ許容量もいっぱいになってきたんじゃないかな?」

「そうですね。なんか容量がいっぱいぃっ」


 魔力量が最大値までなった瞬間、なんとも言えない不気味な感じがしました。


 染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる染まる


 求めたとはいえひたすらに流し込まれ続けるそれ(・・)はすでに魔力という物の形を超え、全てを呪うかのように黒く、暗く、心に流し込まれる毒のように言葉を垂れ流しています。


『あいつがいなければ』

『死ねばいいのに』

『俺より劣るのに』


 溢れ出るのは人の負の水のようですね。


『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』


 恨みや妬み殺意といった黒い感情だけがひたすらに私の中へと流れ込んできます。中へと流れ込んでくるので試しに耳を塞いで見ても『無駄無駄無駄無駄』としつこく言われて意味がないということがよくわかりました。

 おそらくは人ならばこれで精神を壊されてしまうでしょう。


「ああ、めんどくさいですねぇ」


 ですが私はエルフなわけでしてね。

 こんな風に頭に響くような声というのはよくあることなんですよね。微精霊とかはよく頭にこんな感じで話しかけてきたりしてましたしね。


「で、いつまでこれ続きます? 時間が止まってると分かったら私少し寝たいんですけど?」


 中に響く声の方? へ向かい私は欠伸まじりにそう告げます。

 いや、もう眠さが結構限界まできてますね。時間止められて緊張感がなくなったせいかもしれません。


『疑問疑問疑問』

『なぜ貴様は殺意を抱かない?』

『憎悪を抱かない?』

『嫉妬を抱かない?』

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』


 声が色々と尋ねてきます。後ろで死ね死ね言うのやめませんかね? なんだか怖いんで。

 いや、これってあくまでもそれは人間の暗い感情なわけでして私にとってはすごくどうでもいいことなんですよね。

 というかですね、


「人間なんてほっとけば長生きしても百年位経てば勝手に死ぬんですから無駄なことに力を使うだけ無駄なんでは?」


『死……』


 お? 死ね死ねの連音がなくなりましたね。もしかして今気づいたんですかね?


『なるほど、言われてみれば確かにそうだ』

『我らが呪い殺す前に奴らは寿命で死んでいくな』


 あれ、怨念みたいなものですから凝り固まってるかと思いましたが意外と柔らかな思考をしていますね。


「もっと有意義にその力を使いましょう。簡単に言うなら私に力をよこせ」

『我々は呪い、そして殺すものなんだが?』


 しかし、魔力のくせに意識があるというのは凄いですね。普通はここまでのものになると精霊になったり魔物に変貌したりすると本で読んだ気がしますが。いや、そこはここまで変質さした意味を考えて、さすがは魔剣と言うべきなんでしょう。


魔ノ華(マノハナ)の中になんでこんなにどす黒い魔力というか呪いがあるのかは知りませんがね。この呪い()があれば私もそれなりに強くなれそうですし、なにより」


 そこで私は口元を歪め笑みを作ります。


「呪いの力なら楽に敵を倒せるじゃないですか」


 これだけの呪いの力を得たのであれば修行や練習なんてまどろっこしいものが最低限で済みそうですし。


 楽ができるってのは一番いいことですからね。


「というわけで力を引きずり出します」

『な、おい⁉︎』


 なぜか焦ったような声を上げてくる怨念さんは無視して私にながれこんできていた魔力の量を私の意識(・・・・)で引き上げます。

 心なしか注がれる魔力の黒さが減っている気がします。

 質が変わったからかぐんぐんと私の中に注いでいきます。

 すると体の中の何かが広がるような感覚がわかります。

 これはもしかして魔力総量がさらに増えているんですかね?


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