蹂躙再開だぁぁぁぁ
「おお! なんか集落ぽい」
開けた場所に出ても雷纏う戦車の疾走は止まりません。それどころか逆に悪路ではなくなったことによりさらにスピードを上げて駆け抜けていきます。
「あれか!」
「偵察班からの情報ではな!」
「武器を取れ!」
ゼィハのような褐色の肌に銀の髪の輩が口々に言いながら武器を構えてきます。おそらくはダークエルフでしょう。といっても私はゼィハ以外のダークエルフを見たことがないんですがね。確認しようとゼィハを見ますが故郷に帰ってきた歓喜のあまりか泡を吹いて倒れていましたので確認しようがありません。
「いいことをしましたね」
『いや、絶対に喜んではいないと思うんだけど……』
手綱を握りながらもさらに鞭を振るい雷纏う戦車をダークエルフ達の集まる方へと駆けさします。するとダークエルフ達は蜘蛛の巣を散らすようにバラバラに逃げていきます。
『リリカ、どうするの⁉︎』
逃げるダークエルフ達には迸る雷は当たりませんが、雷纏う戦車が走り抜けるたびに集落中に雷を落とし、さらには戦車に取り付けられた刃が猛威を振るい、建物や障害物を難なく破壊していく中くーちゃんに尋ねられたのでどうするか考えます。ダークエルフ達は慌てながらも槍や剣、弓などを手にしながら態勢を整えていってるようです。ま、そんな所にたまたま雷纏う戦車を突っ込ましているんでいまいち整ってはいませんが。
「まずは友好的にいきましょう」
『いや、無理じゃないかなぁ?』
こんな会話をしている間も雷纏う戦車は疾走を止めることなく集落を走り続けます。途中、武器を構えたダークエルフ達が飛び出してきますが雷と
禍々しいまでの突起物と切れ味抜群の刃物をつけている雷纏う戦車は意にも介さずにダークエルフ達が囲おうとする中を軽々と蹴散らし周囲に悲鳴を響かせていきます。
「抵抗を止めろ! お前達は包囲されている!」
「おとなしくでて…… こっちに来たぞぉぉぉぉ⁉︎」
なにやら偉そうな声が聞こえたのでそちらへと進路を変えてやると強気で叫んでいたのが嘘のように悲鳴を上げて逃げています。
「そちらこそ抵抗しないでください。こちらには話し合いの準備がありますよー」
手綱を引き、馬達を止め、武器を構えるダークエルフ達を一瞥します。
一応、騒がしいので大きな声を出して言ってみます。
「う、嘘を言え! そんな異様なものを里で乗り回すような輩を信用できるものか!」
『ま、そうだよね』
「バカな……」
この動きの素晴らしさがわからないとは…… ダークエルフの美的感覚には驚愕ですね。この素晴らしいまでの攻撃的なフォルムな芸術品だと思うんですが。
「では、この素晴らしさを体でわかってもらい交渉としましょう?」
「「っ⁉︎」」
私がニヤリと笑い、手綱を振り上げる素振りを見せると明らかにダークエルフ達の警戒度が上がり武器を身構えるようにしてきます。
『え、まだやるの?』
「やります」
正直な話、今の状況では私に負けるような要素が一つもないわけですからね。
ここでさらに私が有利になるように動けば交渉もさらに楽なものになるでしょう。
『交渉とは圧倒的に有利な展開でやるべし、暴力最高じゃ! by長老』
つまりはダークエルフ達を声が出なくなるところまで追い詰めたらいいわけです。
都合よく精神的にも肉体的にも追い詰めるための戦車は手にあることですしね。
『リリカってさ、悪魔だよね』
「くーちゃん、どこを見てるんですか? どこからどう見ても私はエルフですよ?」
この美少女をどこからどう見たら悪魔と見間違えるんでしょうか。
手綱を振るうと、馬達がそれに応えるかのように蹄が音を立て、ぶるりと鳴くと周囲に雷が飛び散ります。
「さあ、蹂躙再開だぁぁぁぁ!」
抵抗するなら踏み潰すまでなんですよね。そして戦車の素晴らしさを骨の髄まで味わってもらうとしましょう。




