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エルフさんが通ります  作者: るーるー
勇者の武器編
233/332

捕縛!

「ぐすっ、もうお嫁にいけない」

「百年の間結婚しようともしなかった人が何を言ってるんですか」


 一晩たち傷は治りましたが新たな心の傷を作ったゼィハは宿のベッドで布団を頭から被り涙ぐんだ声をあげています。


「ほらゼィハ! いつまで終わった事をメソメソと泣いてるんですか!」

「やーだー! あたしはこの布団からでません!」


 駄々をこねるゼィハを布団から引きずり出すべく布団を引っ張りますが意外に力の強いゼィハから布団を取り上げることが難しいようです。


「ちっ、とんだチキンですね」

『リリカはもう少し人の気持ちを考えたほうがいいと思うよ?』


 中位精霊になったことで増えた羽を羽ばたかせながらくーちゃんが私の頭の定位置に座りながらため息をついてきました。


「考えてますよ? このままじゃゼィハはアレスみたいに引きこもりになってしまいます!」


 そうなるとまたエルフ式戦闘訓練を施す羽目になりますね。あれはやる側もなかなかにしんどいのですが。

 うん、めんどうなのはやめましょう。手っ取り早くやりましょう。


『なにしてるの⁉︎』

「え? 布団に潜って出てこないのなら潜ってる物を……」

『それはやめて!』


 私が手にしているものを見てくーちゃんが顔色を変えて手に飛びついてきました。危ないですね。手にしてるロウソクが落ちたらどうするんですか!


『いや! 燃やそうとするほうが物騒だからね⁉︎』

「引きこもりを作るよりは格段にマシでしょう?」

『物騒すぎる!』


 くーちゃんがあまりにしつこいので仕方なしにロウソクを使うのは諦めます。


「となるとやはり拷問しか……」

『ねぇ⁉︎ ゼィハってリリカの仲間なんだよねぇ⁉︎』

「え、当たり前じゃないですか」


 ゼィハはかけがえの…… ない仲間ですよ。


『ねぇ、なんでそんな苦悶に満ちたような顔してるの?』

「少し、悩みましてね」


 しかし、あれもダメ、これもダメと言われるとどうしようもなくなりますよね。

 そうなるとどうしましょうかね。


「くーちゃん、なにかいい案はありませんか?」


 あれだけ人にダメ出しばかりしたんですからさぞ素晴らしいアイディアがあることでしょう。


『お腹減るまで待てばいいんじゃないの?』

「ふつぅ!」


 あまりの普通さに思わず叫んでしまいました、しかし、言われてみれば確かにそうですね。エルフはそんなに大量に食べたりはしませんが全く食べないわけではありませんしね。


「くーちゃん、素晴らしいアイディアです」

『え、すごい手のひら返しだね?』


 褒めたのに凄く嫌そうな顔をされましたね。

 なんだか最近は私が褒めても素直に喜ばれないような気がします。昔の素直なくーちゃんはどこにいったのでしょう?


「まぁゼィハ、お腹が減ったら下に降りてきてくださいね。食事頼んでおきますんで」

「…… 食事なんかであたしの傷付いた心を癒せると思ったら大間違いですよ」


 布団からくぐもった声が聞こえてきます。返事をしてきたということは多少は食事に興味はあるんでしょうね。

 苦笑しながら私はくーちゃんと共にゼィハの部屋を後にするのでした。


「くるっくー」


 不意に耳に届いた鳴き声に振り返ると閉まる扉の隙間からゼィハの部屋に黒い鳥が見えたのでした。


 ◇夜中


「くーちゃん、ゼィハ来ないんですけど?」

『そんなこと言われても』


 昼食時はこないと踏んでいましたがまさか夕食の時までこないとは予想外でした。

 そんなわけで私となぜかくーちゃんは意地になり、ゼィハが部屋から出て食堂へ行く瞬間を見るべく闇に紛れてゼィハの部屋を監視することにしたのです。


『ねえ、なんで魔法まで使って姿消すの?』

「やるなら徹底的にやるんですよ」


 中位精霊となったくーちゃんは魔力もあがりできることもかなり増えました。その一つが風の魔力を身にまとうことで気配を消す気配遮断です。

 それを使い廊下に潜んでいます。


『中位精霊になって初めてまともに使う魔法がこれかぁ』


 なぜかくーちゃんが悲しげですが魔法とは役に立ってこそだと思うんですけどね。せっかくの便利なものです。使えるものはこき使うべきです。


『あ、ドア動いてるよ!』


 くーちゃんが指差す方へ視線を移すとゼィハの泊まる部屋のドアが小さく動き周囲を伺うように瞳がキョロキョロと動いているのが見て取れます。


「凄い怪しいですね」

『わたしたちもだよね?』


 そう言われたら確かに気配を消して仲間を見張るというのは確かに怪しい奴なのかもしれません。

 気配を消しながら動いているのがゼィハを見ているとなぜかこっちもウキウキしてきます。


「さ、追いますよ」

『うん』


 階段を降り、食堂へと姿を消したゼィハが明かりの下に現れるとなにやら荷物を背負っているのが見て取れます。


『なんか、どこかに行くみたいだね』

「まさか、逃亡?」


 ゼィハの周囲を伺うような行動からして逃げようしているのは間違いないようです。


 ふふ、逃がしませんよ。


『悪い笑みだねぇ』


 くーちゃんが呟いた時にはすでに私はぽちの柄を握りしめています。

 笑みを浮かべているのを自覚しながらぽちを振り抜き、さらには以前使った魔鋼糸へと変換すると大きく広げゼィハを囲むように展開していきますがくーちゃんの気配遮断の効果のせいかゼィハは全く気付かずに歩みを進めていますが鋼糸がゼィハの体に瞬時に巻きつき、驚愕に目を見開くゼィハの姿が私の瞳に写ります。


「ギャァァァァァァァァァァァァ⁉︎」

「捕獲!」


 悲鳴をあげるゼィハを引っ張り上げた私は楽しげに叫ぶのでした。


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